ボーイ ミーツ マム ♪
境内に近づくと、ボールを蹴る音が聞こえて来た。ああ、そう言えば今日も来るって言ってたっけ。さっき来たばかりなのかしら?
「あら、誰かいるわね」
「あれ、ヤナイ君だよ。学校終わったり、休みの日にはここでサッカーの練習してるよ」
「ん?横にいるのはおスミちゃんじゃないの?」
「あ、本当だ」
参道を歩くにつれて、少年の姿が大きく見えてくる。少年も、二人ともう一匹が来たのに気づいたらしく、ボールを蹴るのを止め、こちらを向いてペコリと頭を下げた。
「こんにちは」
「あら、こんにちは。君が、ヤナイ君かな?」
「あ、はい」
柳井圭治はミコトの方を見てちょっとびっくりしたようだった。初めてクラスメイトの袴姿を見て驚いてるのだろう、そうミコトは推察した。少年は呼吸を整えてミコトに聞いてきた。
「あの、日野さん、こちらの方は、ここの職員の人?」
「ウチのママ」
「初めまして。ミコトの母です。君の話は娘からよく聞いてます」
「日野さんのお母さんですか?本当に?確かに顔は似てるなとは思ったけど。すごく若く見えるから、ここのアルバイトの大学生の方かと思った」
「あらあら、ヤナイ君はお世辞が上手ね」
母親はまんざらでもないらしく、嬉しそうに笑っている。
「いやいや、お世辞なんかじゃないですよ。日野さんのお姉さんって言われても聞いた人は全員納得しますよ」
「おやおや、ミコトと姉妹みたいだって」
「マ・マ!調子に乗らないの!」
「やっぱりお母さんのことも、ママって呼ぶんだ。でも全然ママって感じじゃないね」
「さあさあ、お喋りはそのくらいにして。さきに用事を済ませちゃいましょ。行くよ、」
「あ、すみません、お邪魔しちゃって」
「また、後でね。ケイジ君って呼んでいいかしら?」
「あ、はい」
「私のことは、日野さんのお母さん、じゃなくって美鈴さんって呼んでね」
「あ、はい」
「それじゃ、サッカーの練習がんばってね、ケイジ君」