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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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休日の頼まれごと



 午前八時十五分。ミコトは父親とともに家を出た。白い方の猫もいっしょについてくる。出かける際、父親は玄関に置いていた鞄と雑巾の入ったバケツを手に持っていた。


「それ、なんに使うの?」

「バケツは掃除用、鞄の中にはノートと巻尺、中と外の測量用」

「測量って何するの?」

「測量って言うのは土地や建物の面積を測って地図にすることなんだが、今回は長さだけメモしておこうと思ってね。どっちから先にする?掃除と測量」

「じゃ、測量を先にしよう」

「珍しいからかい?」

「うん」

「今回のは長さを測るだけだよ。どんな神楽が出来て、どれくらいの人数が見物できるのか、あらかじめ分かっておかないとね。ところでミコトは、身長はどのくらいになった?去年と余り変わらない感じだけど?」

「この前身体測定した時は、百四十センチを超えてたよ。去年よりもちゃんと大きくなってます」

「そうか、じゃあ去年買った袴よりちょっぴり大きくすればいいんだね」

「ちょっと、本当に衣装を増やす気なの?」

「ああ、もちろんだよ。それと神職正装用もね」

「シンショクセーソーヨーって何?」

「ほら、巫女さんの上着は白い色だろ。あれがもっと綺麗な色になるのさ」

「ふーん」

にゃおお。猫も返事をした。


ほどなく二人と一匹は目的地に到着した。目的地である神楽殿は古ぼけてはいるが、いまだ頑強さを誇っており、その姿は元気なご老体といったところだ。


「さあ着いたよ。まずは、外から測っていこうか」

二人は巻尺を伸ばし、建物とその周辺の長さを次々測っていく。一匹は面白そうに二人の動きを眺めている。


外側の測量が終わると、二人は建物の中に入り扉を開放した。外で待っていた白猫が、ひょいと殿内へ上がり込んだ。もの珍しいのか、辺りをきょろきょろ見回している。


「おユキさんも入ったことないの?ここ」

「そうみたいだね。あんなにあちこちうとうろしているおユキさんは久しぶりに見るな」

「おユキさんは、昼間何をしているの?」

「そうだね、パパが知っている範囲では、朝ご飯を食べた後、少し休んでから境内をパトロールしているよ。いや、あれは唯の散歩かな?」

「パトロールって何?」

「パトロールっていうのは、警察官や保安官なんかが警備のため辺りを見回ることさ。もっとも何かもめごとの起きていたのを見たこともないがね」

「じゃあ、おスミちゃんは?」

「うーん、おスミちゃんは何してるか全く分からないなあ。あの子は本当に自由気ままだからね。さあ、なかの掃除をしようか、水を汲んで来てくれないか?」

ミコトは手水舎にいって水を汲んで来た。



「はい、汲んで来たよ」

「それじゃ、雑巾がけをしようか。上から順にね」

二人で雑巾がけをした結果、一時間でお堂はきれいになった。


「それじゃあ、中の長さを測ろう。巻尺の先を持って」

二人は神楽殿の内部を測りだす。猫はミコトの後についてくる。父親は測り終わった数値をノートに記録していく。


「意外と広いな……」

父親の独り言はミコトには聞こえない。


「なんか言ったー?」

「何でもないよ。じゃあ、終わりにしようか?扉を閉めていってー」

「わかったー」



ミコトはガラガラと扉を閉めていった。全ての扉を閉めると堂内は真っ暗になった。入口の扉から漏れる明かりを頼りにミコト達は外へ出た。

「さあ、パパのお仕事はこれでおしまいだよ、お疲れ様。一旦家に戻ろうか」


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