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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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睡眠会話



 眠っている間、人は時間を感じているのだろうか?目覚めている間、人は楽しい時を短く感じ、つらい時を長く感じる。では、眠っている時は?夢を見ていない時間は自覚をしていない、すなわち自分そのものを認識していない。では、夢を見ている時はどうだろうか?ミコトはどのくらい眠り、夢の中で土偶に会ったのか、分からなかった。


「待たせちゃってごめんね」

「モノは時の長さを感じぬ。詫びることはない」

「でも、時間自体はわかるでしょ?外の世界は今何時?ソナタの隣に時計があるでしょ?」

「わらわはそなたを通じてモノを見る」

「あーそうかあ、私が起きてないとだめかあ」

少しの間を開けてミコトはまた問う。


「んー、ちょっと待って。初めて会った時、ヒトツキノヒカリニサラセヨ、っていってなかったっけ?光は感じてるの?」

「そのようだ」

「じゃあ、今、昼か夜かは分かるのね」

「そうだ」

「じゃあ、今、朝か夜かはわかる?」

「夜が明けたかどうかはここからは感じぬ。外におらぬと分からぬ」

「ということは、まだ夜かなあ」

「朝になると何かあるのか?」

「うーん、何と答えよう。明日はお休みだけどウチの手伝いがあるんだって言うかな?」


「そなた、思っていることをそのまま喋っていないか?」

「いけない、口に出ちゃった?」

「それで、オヤスミとは何か?」

「オヤスミっていうのは意味が二つあって、ひとつは寝る前のあいさつ。もうひとつは働かないで体を休める日。さっきのは二番目の意味」


「イミとは何か?」

「そう言うよね君は。意味。うん、君の言うコトノハの中味。名前を付けられたモノの体。うーん、なんと言ったらいいんだろう?難しいな。イミの意味を説明するのって」

「モノゴトのコトノハの根にあるコトノハ、ということだな。そういうモノとしておこう」

「ソナタ、そう言えば天気予報もできるんだよね。それって光以外の何かを感じるってことでいいのかな?」

「気の濃淡、温冷、乾湿、そのようなことを感じて、その変わりを覚えておくのじゃ」

「じゃあ、明日の天気はどう?」

「明日は……明日というのは明るくなったらという意味か?」

「そうか、そうだね。明日って言うのは、時計が午前零時を回ったかどうかが分からないと、いつから見た明日か分からないよね」

「そのような意味では、明日までは晴れじゃ」

「明日まで?」

「その次の日から、雲が現れ、雨降ることになるだろう。幸いなるかな、ヒノミコトよ」

「何が幸いなの?」

「ソナタに言ったはずじゃ。明日の昼前に機が訪れる、と。そなた、あの童と明日会うのであろう?その頃に会うがよい」

「何が起こるの?」

「人のココロを惑わすことが」

「もっと詳しく説明してよ、何が起こるの?」

「テンペン」

「このまえも言ってたけどテンペンって何なの?」

「天変とは、天の変事」

「天が返事をするの?」

「ヘンジはヘンジ。ヒトが天に問えば、天はヒトに答えてくれよう。ところで、外が明るくなってきたぞ。起きなくて良いのか?」

「まだ大丈夫じゃないかな?起きなくっても。起きたらすっごく集中しないと話せないんでしょ?朝からお風呂に入るわけにもいかないし」


「そなたとわらわの間には、絆が生じた」

「キズナ?」

「そう、絆。絆は気の綱でできている。もはや、集中せずとも、ソナタはわらわと話が出来るであろう。そなたが望めば。わらわからは話をせぬ方が、そなたの都合に合うであろう。心安らかに起きるがよい」

「そんなに私を起こしたいの?」

「このままこの世界で話してても良いのだが……」

「良いのだが?」

「そなたが困るのではないか?」

「どうして?」

「そなたはわからぬだろうが、朝そなたが目覚める前に、そなたは顔を猫に叩かれておるのだぞ。猫に起こされる前に目覚めた方が良いのではないか?」

「え、それ本当?」

「そなた、顔と耳に意識を集めて見よ。聞えぬか、忍び寄ってくる足音が。感じぬか、奴の気配を」

「うーん、何も感じぬよ」

「そなた、感覚は鈍いの。昨日、その前とそなたが目覚める前にヤツがそなたの顔を叩いておったぞ」

「どうしておスミちゃん、そんなことをしてるんだろう?」

「そなたが眠ったままになっている、と思ったのではないかな?」

「すると、私は眠り姫ってことかな?王子様は飼い猫で、目覚めのキスは猫パンチ?」

「そら、意味が分からないことを言っていないで。奴が忍び寄ってきているぞ」

ぽん。何かがミコトの顔を叩く。



「何か顔に当たったよ」

「それが奴の仕業。もう起きられよ」

「どうやって起きればいいの?」

「いつもどうやって起きておる?いつも通りに起きればよい」

「いつも通り……いつもどうやって起きてたっけ?」

普通ならとても考えないような疑問をミコトは持った。いつもだったら目覚まし時計の音で起きている。休みの日は、目覚ましを鳴らさない代わりにママが起こしに来る。ここニ、三日は自然に起きたはずなのだが、それは猫が起こしていた、とソナタは言う。ぽんぽん。

「小さくて柔かいものが顔に当たってるよ。これおスミちゃんの手なのかな?」


ぽかぽかぽかぽか。どんどん叩かれる回数と強度が増していく。だんだんミコトは耐えられなくなり、大きな声を出した。


「イタタタタ、何してるのよ、おスミちゃん!」



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