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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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お風呂タイムじゃなくっても土偶と会話ができるようになりました



 ミコトはお風呂場を出て、洗面所でパジャマに着替えた。髪の水気をタオルで拭きながら、洗面台の鏡に映った自分を見てつぶやく、そんなに髪の毛、短いかな?ミコトの髪の毛は人より伸びが早いので、本人が伸ばそうと思えばすぐに伸ばせる。しかしそういう気になれないミコトだった。


 洗面所を出ると、ミコトは居間に入った。両親はまだいた。何やら話しあっている。

「お風呂、上がったよ。次、どうぞ」


 一声かけて、ミコトは自分の部屋に入った。部屋には暴れ回りそうな猫達もおらず、土偶と話しても部屋を荒されないであろう。部屋の主は、机の前の椅子に座り、机の上に置いてある土偶を手に取る。お風呂に入った瞬間のように、息を大きく吐いて、吸って、……


「さあ、ソナタ、返事して。できるでしょ?集中してるんだから、私」

“うむ、今は話が通じるぞ”

「おお、話ができたー」


“そんなに嬉しいか?”

「できないことができるようになるのは、やっぱり嬉しいよ」

“それで、ヒノミコトよ。聞きたいことはなんじゃ?”

「うーん。色々あるんだけど、一つずつ、でしょ?」

“そうじゃ”


「それじゃあ、どうしてソナタと話している時、猫が暴れるの?」

“それは猫に聞いてくれ。わらわの関することではない”

「あーそうですか。それじゃ次は、この家の中でソナタと話ができるのは私だけなの?」

“他のものと話はできない。しかし、そなたがいれば、誰かの話を聞くことはできる”

「ソナタはどうしてウチの倉庫にいたの?」

“わからぬ。気付いた時は、そなたがわらわを手に持っていた”

「自分で動くことはできるの?」

“わらわは動かぬ。人の形をしているとはいえ、モノはモノ”

「でも、今はロボットみたいに自分で動ける人形はあるよ?」

“ほう、そのようなモノがあるのか。わらわが眠っている間、ヒトは知恵がより回るようになったのか?”

「いつ頃のヒトと比べているの?卑弥呼の話は聞いたけど」

“今生きるモノの暦はどうなっておる?”

「暦……カレンダーのことね」



 ミコトは自分の部屋に飾ってある月めくりのカレンダーを持ってきた。


「これが今の暦。一年三百六十五日として、それを十二に区切って、一月から十二月って呼ぶの」

“三百六十五は十二で割り切れぬぞ”

「ヒトツキの長さは月によって変わるの。それと四年に一回三百六十六日の年があるの。どうしてカレンダーのことを気にするの?」

“そなたの問いに答えるため。そなたのカレンダーで算ずるに、ざっと八百年”

「なにが八百年なの?」

“わらわが眠っていた時の長さ”

「長い時間眠っていたわねー」

“ジカンとは何か?”

「時間、時の間と書いて時間よ。ソナタ、字が読める……わけないね。モノだし」

“その通り。ヒノミコトよ。誰かが近づいてくるぞ。話すのは止めた方が良くないか?”

“そうだね”


 ミコトは土偶を机の上に戻し、今週あてがわれた本を手に取った。特選・万葉集。適当に開いたページはコラム・コーナーだ。枕詞というタイトルだった。

「枕詞、ソナタがマクラっていってたのはこれのこと?」

そこには主な枕詞が書かれていた。確かに土偶の使っていたアカネサスがあった。日や紫にかかる、と書いてある。

「なあんだ。これのことかー」


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