パパさんからの依頼
食事が終わり、後片付けが終わると、ミコトは父親に尋ねた。
「明日のコトなんだけど、いったい何するの?全然見えてこないんだけど」
「ああ、明日のことかい?それじゃあ、居間で話そうか?」
そう言うと、父親は立ち上がり娘を連れだした。
「君も来ない?」
「先に二人で話してて」
「わかった」
居間に入り、二人はソファに座る。目の前のテーブルには積み上げられた書類があった。その中の一つを父親は広げた。
「見てごらん、これ境内の地図。ここにある建物、なんだかわかる?」
「ここは、まだ中を見たことがない建物だね」
「ここ、神楽殿だよ。どうも、昔はここで神楽をやっていたらしい。先代は使わなかったらしいが」
「どうして使わなかったのかしら?」
「さて、どうしてだろうね?いろいろ調べたけど、理由は分からなかった。ともかくだ、せっかく神楽殿があるんだから、使わない手はないだろう?」
「そうだね」
「そこでだ、秋のお祭りまでにここで神楽を練習してもらう。そのために明日はあそこを点検してお掃除するんだ」
「掃除はわかるけど、点検って何するの?」
「神楽に使える広さを調べたり、何か変わった仕掛けがないか確認するのさ」
「変わった仕掛け?」
「床が開いたりしないか壁が回転しないか、まあ多分そういったものはないとは思うけど、念のため」
「じゃあ、明日は大掃除だ」
「まあそういうこと。あと五ヶ月ちょっとあるけど、どうかな?やれそう?」
「わからない。だって神楽見たことないもの」
「まあだいたい三十分程度のものと考えといて。内容は、まあ舞台を見てからだね」
「本当に神楽なんかで人が集まるかな?」
「人に来てもらえるようにテレビ局に交渉するよ。むしろ、人が集まり過ぎるのが問題だね。駐車場を広げるかな……」
「うちにそんなお金のゆとりがあるの?」
「お金の心配は、ミコトがしなくっていいものだよ」
「そう?それじゃあ、テレビ録画機買ってよ」
「どうしたの、急に?」
「アイちゃんが言ってたの。お昼に神楽の放送やってるって。お昼は学校行ってて見れないでしょう?」
「本当に神楽が目的かな?」
「いや、それだけじゃないけど。本当は夜のドラマが目的。夜は起きてられないのでお休みの日に見ようと思って」
「うん、わかったよ。それでミコトのやる気がでるんだったら、それくらい安いもんだ」
「やったー、ありがとう、パパ」
「それじゃあ、よろしくお願いします」
「任せて、完璧に舞って見せるから」
「それはそれは、頼もしいね」
「話は終わったかしら?お風呂が沸いたんですけど、ミコト入りなさい」
「うん、話は分かったからもういいよ」
「それじゃ、ミコト明日は頼むよ」
承諾の返事してミコトは居間から出ていった。