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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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担任先生(女性)は男前

 「みんないるかー?」

担任・宮本が入ってきた。

「女子はみんないるけど、男子が全然いません」

とミコトがいうと、担任の後ろから男子四人が台車を押しながら入ってきた。上には新しい教科書が載せられていた。

「あの二人はまだ帰ってきてないのね。まあいいわ、これから今年の教科書配るからみんな席について」

という一言でみんな席に着いた。

「俺ら四人もいらなかったよな」

連れて行かれた男子達がつぶやいた。

「はいそこ、四の五のいってないで、とっとと席に着く。はい、配るわよ、まず、国語、次算数、次が理科」

どんどん教科書が配られた。ミコトは新しい教科書を手に取った。新しく印刷されたインクの匂いがした。ああ、これから一年間これで勉強するんだな、そうミコトは思った。

「はーい、みんな行き渡った?それじゃあ、本の落丁や乱丁がないか確認してね」

「先生、ラクチョーやランチョーって何ですか?」

ミコトが尋ねた。

「ああ、落丁は本の一部が抜けること。乱丁は順番が乱れておかしくなってることよ」

と担任・宮本が説明したところで教室の扉が開いた。

「あれー、もう授業か何かしてるの?」

上田と川村が体育館の倉庫から帰ってきた。

「ああ、ちょうどいいところで帰ってきた。二人とも席について」

二人はそれぞれ自分の席に着いた。

「それじゃ、全員揃ったところでもう一度確認するわよ。まずは教科書。国語、算数理科、社会、図工、家庭科。全部ある?そしたら次は中味の確認をして。ページをばらばらっとめくってみて。そう、ばらばらーっと。抜けてるページがない?順番が変わってるところは?とにかくおかしかったら先生に言いなさい」

「先生!」

「何、上田君?何かおかしいところがあった?」

「先生、言ってることが早すぎてページが確認できません!」

「このトンチンカン!そういう時はもっとゆっくりめくるのよ!」

「先生!」

「何、川村君?」

「トンチンカンって何ですか?」

「君や上田君みたいな頓馬で珍しい漢を意味するのよ。さあ、他に何かない?」

ミコトもバラバラとページをめくっていた。国語、算数、理科、特に変わったところはなさそうだった。社会の教科書をめくった。

「今年は歴史か……」

そうつぶやいた。ぱらり、ぱらりとページをめくると、奇妙な人形の写真が目に入った。変な形……昔の人はこんなのを可愛がっていたのかしら?ミコトはそんなことを考えた。全然可愛くないし、何このデザイン?ひかれる要素ゼロだわ。せめてもっとましな形にすればよかったのに。猫型にするとかなかったのかしら?昔の人ってかわいそう。たぶん、いやきっとかわいいものがまったくなかったに違いないわ。ああ、今という時代に生まれて幸せだな、私。

「日野さん?手が止まってますよ」

担任・宮本がこっちの世界へミコトを連れ戻した。

「お願いしますよ、日野さん。頼りにしてるんだから」

「あ、はい、すみません」

隣の席の山本凛が体を寄せてきて小声で話してきた。

「ミコトちゃん、今度は何を妄想してたの?」

「妄想だなんて、ただ昔の人のことを考えていただけだよ」

「昔の人?」

「ほら、今年の社会って歴史でしょ?昔の人の生活を考えていたの」

ふうんと言って山本凛は引き下がった。ここで長話をしてもすぐ先生に止められて嫌味を言われるに決まってる。いや、嫌味だけならいいが、お説教になったら最悪だ。この担任・宮本の説教は一旦始まったらいつ終わるとも知れないのでなるべく児童たちは担任を怒らせないようにしていた。あのお説教さえなければ、親しみやすくていい先生なのになと、ミコトは思った。いや、ミコトだけでなく、このクラスの児童は皆そう思っていた。そんなことはつゆ知らず、担任・宮本は話を続けた。

「いいですか、今なら落丁や乱丁があったらちゃんとしたのと交換できるよ。大丈夫ですか?今週中までなら交換してもらえるので、よく読んでおくように。わかりましたね?」

児童たちは皆ではーいと返事した。


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