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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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二重会話は疲れます



 それは口に出したつもりだった。その声に反応したのか、頭の中にアノ声が響く。


“アカネサスヒノミコトよ、その子か、そなたが気にしておるのは?”

ミコトは突然の“声”に驚いた。声は出さなかったが体が反応した。


「日野さん、どうしたの?大丈夫?」

心配そうに少年は近付く。


「ああ、全然平気。時々こうなるから気にしないで」

ミコトは目の前の相手と、頭の中の声の相手の両方と会話することになった。


“もう、なんでこんな時に話しかけてくるのよ、変に思われるじゃない!”

「日野さん、元気そうに見えるけど、ときどき突然動かなくなることがあるよね」

“ヒノミコトよ、そこはわらわの声が届くところぞ。おまけにそなたはわらわの声が聞こえる時にある”

「ああそれ、何か考えてる、というより空想している時なの。あんまり気にしないで」


“なにこの大事な時に話しかけてくるのよ”

“よいではないか。そなたの目の前におる童は男の子に見えるのだが、どうか?”



にゃおおん。

「ん、どうしたの、おスミちゃん?」


“何バカなコト、言ってるの?男に決まっているでしょ?”


「そのコ、降りたがってるんじゃない?」


にゃおおん。にゃおおん。


“なんと、そなた、男が好きだったのか?”


「ほら、地面に降ろしてみたら?」

ミコトは地面に猫を下す。猫は地に足がついた途端、グルグル辺りを回りだす。


「この子、時々こうなるの。あんまり気にしないで」

「すごい元気だなあ。日野さんみたいだ」


“どういう意味よ?”

「どういう意味よ?」


“そなたのナはヒノミコトではないのか?そのようなナは男に多いナだと思っておった。そうか、そなたは女の童であったのか”


「私を男と思っていたの!」



ミコトは、さっきから、思っていたことを口にしていることに気付いていない。

「そんなこと思ってないよ」

“そうだと思っておった”


「見たらわかるじゃない。日野さんが女の子だっていうのは」

“見てもわからぬ。そなたは男の童だと思っておった”


ミコトは両手で髪をかきむしった。深呼吸して両方に対応する。



「ごめんね、ちょっと黙っててくれる?」

“ごめんね、ちょっと黙っててくれる?”


飼い猫は、動き回るのを止めミコトの足元に寄ってきた。


“おスミちゃんにはわかるのかな?ソナタと話している時に暴れ回っている……ソナタの話も聞こえなくなった……”


再びミコトは猫を抱え上げ、少年に別れを告げる。


「ごめんね、邪魔して」

「もう帰るの?」


少年はまだまだ話し足りなさそうだった。


「邪魔しちゃ悪いからね。じゃあね」


ミコトは猫を抱いたまま少年に背を向け歩き出した。なんか怒らせること言ったかなあ、という少年のつぶやきがミコトの耳に入ってきた。ミコトは振り向きざまこう言った。


「また明日、来る?」

「たぶん」

「そう、じゃあね」


そう言い残して、ミコトは今度は本当にその場を去った。



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