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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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担任先生に注意されたので帰ります



少女達の会話は果てしなく続くと思われたが、運動場からの声によって中断された。


「こらー、教室に残っている三人、早く帰りなさーい」

三人は窓の外を見た。声の方向には、ジャージ姿をした担任の姿があった。


「うわ、宮本先生、これから走る気だ」

「いっしょに走らされたらまずいな」

「一時間ぐらい走るらしいよ」

「もう帰ろうよ。いっしょに走らされたらいやだよ」

「そうだね、帰ろうか」

三人は立ち上がり、窓から返事をする。


「もう帰りまーす」

「窓のカギ、ちゃんとかけていってねー」

「「「はーい」」」

三人は同時に返事して、戸締りをし、教室を出る。


「よかったな、一緒に走るゾって言われなくって」

歩きながらも話は続く。


「まさか、そんなこと言わないんじゃないの?」

「私この前の夕方に誘われたよ、一緒に走らない?って」

「それでどうした?」

「丁重にお断りした」

上履きから靴に履き替え、三人は校舎を出る。


「アイちゃんはたくさんドラマ見てるんだね」

「ウチのお母さんが連城ファンなの。それでいっしょに見てたら詳しくなっちゃった」

「ミコト、連城結城って知らないだろう」

「名前だけなら、いつもマオちゃんやアイちゃんが話しているから。レンジョー、レンジョーっていつもいってたじゃない」

「顔もわからずに話聞いていたのか?呆れた奴だな」

「顔はいつもの通り空想で補ってました」

「ミコトちゃん、日曜日に見ようよ。いろいろ教えてあげる」

「お、アイ先生のドラマ講座か」

 三人は揃って校門を出た。


「アイの今期のお勧めはどうだ?ハッピーエンドで終わりそうか?」

「カズミちゃん、結末が分かったらドラマは面白くないでしょう?それじゃ明後日、連絡してね。ばいばーい」

二人と一人はそれぞれ別の方向に分かれた。



「カズミちゃんはハッピーエンドのお話が好きなんだ」

「だって見てて自分も幸せになるだろう?最後がバッドエンドやデッドエンドなんか見ちゃいられないよ、そう思わないか?」

「物語ってそれだけじゃないでしょ?悲劇だって劇の一部だし」

「なんだって悲劇なんてあるのかな?」

ミコトは友人の質問に少し考え込んだ。


「カズミちゃんはどう思うの?」

「うーん、私は必要ないと思うんだけど、世の中に存在してるってことは、私以外の誰かに必要とされているんじゃないかな?」

「そうだね。だれか泣く必要のある人が悲劇を見るんじゃないかな」

「ミコトはドラマ見ないってことはドラマいらない派なのか?」

「そんなことはないよ。物語は好きだよ。家で結構本読んでいるし」

「ドラマと物語と一緒にしてないか?」

「ドラマも物語の一部だよ」

「どこがどう違うんだ?」

ミコトはまたまた友人の質問に考え込む。


「ドラマは人間についての物語、物語は人間以外も含むの」

「じゃあ、物語のモノの中に人も入ってるってことか」

「そうだね。神楽や能の中には人間じゃないモノが主役の話もあるし」

「ヒトはモノの一部なのかあ。また変なコト言いだしたなあ」

「そうでもないんじゃない?誰か尋ねる時、ナニモノかっていうじゃない?」

「字が違うだろ、字が!」

「字は違っても言の葉は同じでしょ?」

「何だ?コトノハって?」

「ああごめん、言葉って意味」

ソナタの口癖がうつっちゃったな、ミコトは聞こえないような声でつぶやいた。


「なんか言ったか?」

「ううん、なんにも」

「ミコトはハッピーエンドの話以外も好きなのか?」

「そうだね。いろいろな話があっていいんじゃないかな。いろいろあるってことが面白いと思うの。ハッピーエンドじゃなくっても」

「中途半端な幕切れでも?」

「話が途中で終わったら、続きの楽しみがあるじゃない」

「ミコトはココロが広いな。私だったら散々悪態吐くとこだよ」

「そうかな?自分じゃ分からないなあ。カズミちゃんの言ってた自分では分からないで他人が分かる部分ってところなのかな?」

「そんなところだ。それじゃあ、日曜になったら連絡するから。じゃあな」

「うん。それじゃあ」


二人の少女は、それぞれの進むべき方向へ別かれた。


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