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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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友達との無駄話が無駄に長い



 ミコトの号令に始まった授業は、ミコトの号令によって終わる。本日も特に何ごともなくいつも通りであった。教室の掃除も、夕方のホームルームもつつがなく。ミコトは号令をかけた後は一息ついて椅子にかけるのであった。


「おーい、ミコト、帰ろうぜ。今日もアイの家寄ってくかー?」

石川和美の脇には竹下愛もいる。


「ん。今日は遠慮しておくよ。最近おスミちゃんやおユキさんの相手をしてやれてないので、可愛がってあげないと」

竹下愛は、ちょっと残念そうな顔をした。


「そうかー。じゃあ、明日明後日はどうするんだ?またお菓子作りしたいんだけど?」

「ああ、えーと、土曜日は家の予定がはいってる。日曜は空いてるよ」

「よっしゃ。じゃあ日曜日にやろう。日曜になったら連絡するから」

「今回は何作るの?」

「そうだなー、もう一回クッキーにする?アイはどう思う?」

「マオちゃんにも聞いた方がいいんじゃない?ミコトちゃんは何がいい?」

「何がいいかなあ?お任せするよ」

「んじゃ、マオにも聞いておくよ」

「そう言えば、この前のデキはどうだったの?」

「あれはどうなんだろうね?」

「レシピ通りに作ったんだから成功だよ」

「だとすると、あのレシピが良くなかったんじゃないか?私はあんまりうまいと思わなかったんだが……」

「あれはあんなものだよ。砂糖あんまり使ってないし」

「あのときほどミコトがいればなあと思ったときはなかったな」

「私はゴミ箱か」



「そう言えばミコトちゃん、明日家の予定って何するの?」

「それが私もよくわからないの。パパは巫女の修行だって言ってるけど」

「修行って滝にでも打たれるのか?」

「やっぱりそう思うよね」

「違うのか?」

「それが違うんだって。何をするか、私にもわからないんだ」

「全然わからないの?」

「いや、この秋に、神楽を舞うコトになるから、その練習とは思うけど」

「神楽って何だ?」

「カズミちゃん、神楽って言うのはね、神様の前で舞を演じることだよ」

「なんでアイがそんなこと知ってるんだ?」

「昨日の昼の教育放送でやってたよ、神楽」

「お前、昨日の休み、ずる休みじゃないのか?なんで昼からテレビ見てるんだ?」

「薬飲んだら、お昼には熱が下がって退屈してたの。それで携帯テレビ見てたの」



「お前まさか夜中遅くまで起きてテレビ見てるんじゃないだろうな?」

「うわ!カズミちゃん、口やかましい」

「だってよー、ミコト、こいつ、自分のケンコーについて、すげー無頓着なんだぜ。そんなんで病気になっても誰も同情しないってーの。ミコトみたいな奴が病気になったら、皆心配するだろうさ」


「カズミちゃん、前に馬鹿は風邪引かないって言って元気な人を馬鹿扱いしてたよね?」

「良くそんなことをおぼえてるな」

「言った方は忘れてても、言われた方は忘れませんからねー」

「まあまあ、カズミちゃんもミコトちゃんも落着いて、ね」

「口喧嘩の原因の奴が何言ってやがる」

「アイちゃん、私達、喧嘩してるわけじゃないから。それにしてもアイちゃん、体調管理はしっかりしてるの?出されたご飯全部食べてる?夜何時に寝てるの?」

「おうおう、ミコトちゃんよー。人には口やかましーとか言っておきながら」

「あれ、そんなこと言ったっけ?」

「さっき、悪口は言われた方は忘れないって言ってたぞ」

「だ・か・ら、言った方は忘れました」

「こんにゃろ!」

「カズミちゃん落着いて、はいどーどー」

「わたしゃ馬か?」

「アイちゃん、昼間寝てたら夜眠れなくならない?私八時過ぎたらもう眠たくなっちゃって、九時にはもう寝てるんだけど?」

「うわ!ミコトちゃん寝るの早いよ。それじゃあドラマも見られないよ」

「ミコトはドラマなんか見ないもんな?」

「うん。今どんなのやってるの?」

「四月から新ドラ始まったんだけど、私の今季一押しは、月曜九時のサクラテレビ{恋物語はゆっくりと}だよ。月九の帝王・連城結城に挑むヒロインは、本来予定されていた一条幸が事故のため急遽抜擢されたシンデレラガール・新野美姫。ニューヒロインは帝王に対しどんな演技を見せるのか」

「そういうのはマオちゃんが詳しそうなんだけど、アイちゃんも詳しいんだ」

「ミコトは新野美姫も知らないだろ?四月からテレビでカルカルの広告やってるぞ。今、一番旬なアイドルだ」

「カルカルって、昨日アイちゃん家で飲んだアレ?」

「ミコトは家ではジュースは飲まないし、スナック菓子も食べないんだぞ。ご飯をおいしく食べるために。アイも見習ったらどうだ?」

「カズミちゃんだってスナック菓子食べてるじゃない。ミコトちゃん本当なの?」

「うん、ウチはお小遣いでお菓子買っちゃだめって言われてるの」

「自分達でつくる分は認めてくれるんだよな」

「ミコトちゃん、かわいそう……」

「そうかな?自分じゃ分からないけど」

「とにかく、ミコトは世間からかけ離れたボーズのような生活をしてるのさ。まああれだ、知らぬがホトケというやつだ。住めば都、ともいうけどな。もっとも、ミコトにお菓子をあげたら、あげた分だけなくなってしまうけどな」

「お菓子の部分は否定しないよ。でも世間とかけ離れているっていうのは違うと思うな」

「どう違うんだよ?」

「家のルールってそれぞれ違うじゃない?それとおんなじ。朝はご飯かパンか、卵は卵焼きか目玉焼きかっていうぐらいの違いだよ」

「そうかな?」

「そうだよ。それはそうと、アイちゃんドラマって週に何本見てるの?」

「今期は三本。月九と水九と木九。水九は見逃しちゃったけどちゃんと録画してあるから明後日一緒に見ない?」

「じゃあ、明後日はアイの家でやるか?マオにも言っとくぞ」

「そうしようよ、ミコトちゃん」

「そうだね」

「どうせなら今期のお勧めドラマ全部見たらどうだ?」

「そんなこと言ってカズミちゃん、私をだしにして自分が見たいだけなんじゃないの?」

「へへ、わかっちゃった?」

「いや、なんとなくそう思っただけなんだけど、当たっちゃったの?」

「いやいや、ウチも九時以降はテレビ見せてくれなくって。アイんとことマオんとこぐらいじゃないか?そんなに遅くまでテレビ見れるのは?」

「男の子達の家はどうかな?」

「知らね」

「でたー、カズミちゃんの無関心発言」

「野郎どもの家庭環境なんて知りたいとも思わないよ、そう思わないか、ミコト?」

「男も女も関係ないと思うんだけど。どうだろう、アイちゃん?」

「ミコトちゃんもカズミちゃんも面白いね。どうでもいいことを一生懸命話しあってる」

「話さないと分からないよね、相手のコト」

「うん、それはミコトの言う通りだ。どうでもいいとは思わない」

「ほら、アレみたい」

「アレって何だ?」

「少年漫画で、殴り合いのケンカをして友情が深まるってやつ。そんな感じに見えたよ、今の二人の会話」

「何だそれ。ところで、ドラマの話、三つとも録画してある?」

「それはもう、ばっちり」

「じゃあ、決まりだな」

「ちょっと待って。マオちゃんも呼ぶんでしょ?見てるんじゃない、そのドラマ?」

「そうだな、そこまで考えてなかったな」

「大丈夫だよ、カズミちゃん。あたし一度見たけどもう一回見たいもん。それに見てないかもしれないじゃない?」

「うーん、マオとアイは違うからなあ」

「もしマオちゃんが見てたら、歌番組を見せればいいんじゃない?これならニ回目見ても大丈夫でしょ?」

「アイちゃん、歌番組も録画しているの?」

「ドラマ、歌番組、バラエティ。このみっつは大体録画しているよ」

「テレビばっかり見てるんじゃない!」

「全部見てるわけじゃないよ。病気で休んだ時にまとめて見るの」

「だからテレビばっかり見てるからだろ。宮本先生に頼んで鍛えてもらうか?」

「あの先生、手加減なしだからヤダ。ミコトちゃんならいいかも。無茶しないでいっしょにやってくれそう」

「鍛えるんじゃなくって、ちょっとづつ変えていったらどうかな?ちょっと早く寝る、ちょっと運動する、苦手なものもちょっとだけ食べる。それだけでいいんじゃない?無理に鍛えなくっても。また病気になっても大変だし」

「そうだよね」

「そうそう」



「もー、ミコトはアイには甘いなあ」

「そうかな?自分じゃわからないけど」

「自分のことは案外わからないものさ。誰かに言われないと気付かない自分ってあると思わないか?」

「どういうこと?」

「つまりだな、自分っていうのは四種類あって、自分の良く知っていて他人もそうだと認めている自分があるだろ?それと自分では良く分からない、他人も分からない自分がある。それ以外に、自分だけが知っていて他人には知られていない自分と、今言ったように自分は分からないけど他人からはよく分かる自分があると思うんだ」

「カズミちゃん、変なコト考えてるんだね」

「ミコトだって変なコト良く考えてるだろ、同じことじゃないか」

「へー、カズミちゃんが言うミコトちゃんの変なコトって、何?」

「そーだなー、最近言った変なコトは、えーとあれだ、トランプの表と裏はどっちが表でどっちが裏か?ってヤツ」

「ああ、あれ。アイちゃんはどう思う?カズミちゃんは、その時は、どっちでもよくね?って無関心発言してたけど」

「うーん、やっぱりマークのついた方が表、じゃないかな?」

「どうしてそう思うの?」

「いや、なんとなく」

「私も最初はマークがある方が表だと思ってたの。だって、表って顔ってことでしょう?顔は表情を変えるじゃない?いろいろな札がある方が表だと思っていたの」

「今は違うの?」

「うん、トランプって、ほら、ババ抜きみたいにカードを持って対決することがあるじゃない?カードの同じ模様の方を見るでしょう?それが無表情の顔に見えるの」

「ポーカーフェイスというやつか?」

「へえ、そういうんだ。それでね、マークのある方を相手に見えなくするでしょう?なんかマークのある方がココロの中みたいだなって思って」

「でも待てよ。マークのある方がココロの中って言うんなら、自分の手札は明らかじゃないか。自分には見えてるんだから」

「そこなんだよね。考えるほどに分かんなくなっちゃうの」



「うふふ」

「アイちゃんどうしたの?突然笑ったりして」

「ミコトちゃんもカズミちゃんも似たようなこと考えてるのに、相手のことをお互いに変だっていうのはおかしいなあと思って。二人とも似た者同士なんだなあ」

「「そうかな?」」

「ほら、二人して同じタイミングで同じ返事。カズミちゃんの言ってた自分のことはよく見えないって本当だね」


「カルカル」長らく愛飲されている乳性飲料品。

原液飲んだら、あまーーーーーーーーい!あますぎるよぅ><

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