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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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起きてる間、お風呂タイム限定で会話ができるようになりました



「さてと」

明日の学校の準備をし終えたミコトは、土偶を目の前に置いて語りかける。


「ソナタ、あなた朝私に話しかけてきたでしょ?さあ、私時間ができたわよ、喋ってもいいわよ」

ミコトは土偶を持って見つめる。


「夢の中でないと話ができない、なんていわせないわよ」

「……」

「もしかして眠っているの?」

「……」


 ミコトは土偶の頭をぽんぽん叩いてみた。なにも起こらない。朝話しかけて来たのは私の妄想だったのか?にゃーん。おスミちゃんがいつの間にか部屋の中に入っていた。仕方がない。喋らない土偶を相手にするより、動く飼い猫を相手にした方がましよね、ミコトは猫じゃらしを取っておスミちゃんの相手をした。




「ミコト、お風呂沸いたわよ。入りなさい」

母親が娘を呼びに来たのはミコトが猫と遊び始めて三十分後であった。ミコトははーいと返事して立ち上がった。黒猫も遊び飽きたらしくミコトについて部屋を出ていくといずこへか去っていった。

ミコトは洗面所で服を脱ぐ。着替えの下着とパジャマは洗濯機の横に母親がいつも準備してくれている。最後にメガネをはずして、それを洗面台に置いた。


 お風呂場に入ると、まず足先にかけ湯をする。徐々にお湯につかっていき、最後に肩までつかる。

「はーっ、気持ちいい……」


この、気持ちが切り替わる一瞬に、“声”が響いて来た。


“ヒノミコトヨ……”

「あれ?」


“ヒノミコト……キコエルカ、ヒノミコトヨ……”

「何、ソナタじゃない。さっきはあんなに話しかけても答えなかったじゃない。なんでこんなところで話しかけてくるの?大体どこから話しかけているの?どうしてさっき話しかけてこなかったの?」


“アイカワラズ、問イガ、多イノ。ヒノミコトヨ。目覚メテイル時ハ、ソナタノココロニ、入リニクイ。ソナタノココロガユルンダ今、ワラワハソナタノココロニ、入レタノジャ”

「すると、私がお風呂に入ったから話ができるようになったの?」


“オフロ、トハ何カ?”

「お風呂っていうのは、お湯をイレモノに蓄えたもの。人が入るとくつろげるモノよ。それでソナタ、あなたは今どこにいるの?」


“ワラワハ、今ソナタノ部屋ニオル。ココハソナタノ声ガ届ク”

「そういえば、今朝私に話しかけて来たでしょう?どこまで私の声が届くの?」


“坂ノ下マデハ届イテイタ”


ミコトはのぼせる前に湯船を出た。体を洗い、髪を洗った。再び湯船につかると、ミコトは問いかける。



「そんなところまで声が聞こえるんだ。でもソナタの声は聞こえるっていうより頭の中で響いている感じなんだけど」

“ワラワノ想イガ、ソナタニツタワル”


「だとしたら、私の想いもソナタに伝わるはずだよね」

“ヒトノ想イハ同ジ時ニイクツモワカレテ、紛ラワシイ。ハッキリ声ニシタ方ガワラワニハヨク分カル。トハイエ、強ク思エバ、声ニ出サナクテモワカル”


「お風呂でぶつぶつ一人で言ってたら変に思われるからね。じゃあもう少ししたらお風呂から出るから」

ゆっくり温まった後で、ミコトはお風呂場から出た。体じゅうをバスタオルで拭き、下着・パジャマを着て、髪の毛をドライアーで乾かす。


「あ、まだ歯を磨いてなかった」

今言った独り言はソナタにも届いているのだろうか?歯磨きしながらミコトはお風呂場での{会話}を思い返していた。


「パパ、ママ、私お風呂済んだよー。次どうぞー」


居間にいる両親に声をかけてミコトは部屋に戻る。



「さてと」


 ミコトは椅子に座り、土偶を目の前に置いた。刑事になった気分だ。ミコトは早速取り調べを開始した。

「さあ、さっきの話の続きをするわよ。返事しなさい、ソナタ」

「……」

「モクヒケンか。いつまでもダンマリが続けられると思ったら大きな間違いだぞ。さあ、返事をしなさい!」

「……」

「強情だな。しかしいつまで持つかな?そのダンマリが」

「……」

「あれー、どうしたの?ソナタ。さっきまでちゃんと話してたじゃない?」

土偶からの返事はない。どうやらお風呂に入る前の状態に戻ったようだ。どうやったらソナタと話ができるようになったんだっけ?ミコトはお風呂での会話を思い出していた。


「ええと、確か目覚めている時は入りにくいって言ってたな。その後……ココロがゆるんだ今入ることができた、って言ったっけ?ココロがゆるんだ状態って何だ?どうやってらココロを緩ませることができるんだろう?もう一回お風呂に入るわけにはいかないし」


ミコトは土偶と話が出来ていた時の状態を思い出していた。何回話をしたっけ?寝てる時、さっきのお風呂、そして朝学校に向かって駆けだした時……。


「よくわからないなあ。寝ている時やお風呂入った瞬間ならわかるんだけど、駆けだす瞬間は何だろう?」

瞬間という言葉に、ミコトは引っかかった。瞬間……誰かがこの言葉を最近どこかで使っていたけどどこだっけ?誰だっけ?ミコトは今日の出来事を遡った。晩御飯の時にした話はテスト、焼き魚、よくそんなに食べれるな、しょっぱーい……父親の顔が目に浮かぶ。そうだ、パパだ!パパがどこかで……そうか、晩御飯ですよってパパを呼びに行った時、話していたぞ。どんな内容だったっけ?確か眠りと瞑想の話、そうか、瞑想の時に悩みが消える瞬間があるっていってた。瞑想か……よし、瞑想してみよう。瞑想って何だ?ミコトは国語の辞書を引いてみた。


「[瞑想]目を閉じて、雑念・妄念を退けて、深く考えること。黙想」

ミコトは声に出してみる。雑念・妄念を退けるっていうのが大切なコトなのかしら?せっかくお風呂で温まった体もこのままじゃ冷めてしまうな。瞑想は明日にしてもう寝るか。



午後八時半。ミコトは両親にオヤスミの挨拶をして、ベッドに入りこんだ。眠りの神様はミコトを寵愛しているらしく、少女はすぐに神様のそばに向かった……



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