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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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毎日食事のメニューを考えるのは大変です



ミコトは家に着くと、すぐには玄関を開けず、庭に置いていた土偶をランドセルに回収した。


「ランドセルが膨らみすぎるなあ。隠して持っていけるかなあ?」



 玄関を開け、ただいまーと小さな声で廊下を走りぬけると、ミコトはそのまま部屋に直行した。お帰りーという声を聞くこともなく部屋に入ると、ランドセルから土偶を取り出し、机の上に置いた。誰にも会わなかったぞ、よしよし、そう思ったが、一部始終を見ているモノがいた。この家の飼い猫おスミちゃんである。彼女はにゃーおといって自分の存在をアピールした。


「うわ、おスミちゃん。そんなところにいたの?今日暴れたら許さないからね」

飼い猫はにゃーおとまた鳴いて足元にすり寄ってきた。一昨日のコトがまるでなかったかのように振舞っている。ミコトはおスミちゃんを両手で抱え上げた。


「暴れちゃ駄目だからね」

そう念を押した。持ち上げられた黒猫はにゃおにゃおと返事した。


「ん?、元気がないな。お腹空いてるの?お腹空いてるんだったら台所に行こうか?」

ぐーーーう。猫の代わりに腹の虫が返事をした。



 台所では母親が料理の最中だった。


「ただいま。今日の晩御飯は何?」

「あらミコト、お帰り。もうちょっと待ってね。メニューはヒ・ミ・ツ」

といった横から何かを焼いている煙がモワモワと出ていた。匂いからして焼き魚だと、ミコトでなくともすぐわかる。抱いてる猫が鳴きまくっていた。床にはもう一匹の飼い猫おユキさんがそわそわと落ち着かない様子だ。換気扇が回っているとはいえ、ちょっと煙のですぎではないかと思ったミコトは母親に注意した。


「ねえママ、少し焼き過ぎじゃない?」

「さっきコンロに入れたばかりだから大丈夫よ。それよりおスミちゃんを置いて手を洗って来て。それから五分たったらパパを呼んできて。ご飯ですよって」


はーい、と返事してミコトはおスミちゃんを置いて洗面所に向かった。手を洗いながら、ミコトは晩御飯のメインディッシュの心配をした。本当に大丈夫かなあ?考えても仕方がない。パパのところに行くか。今の時間は居間だよね。あわわ、ダジャレになっちゃてる。パパのがうつってるわ。そんなことを考えながらミコトは居間に来た。やはり父親はそこにいた。テレビがついているが、見ているのだろうか?ミコトはそっと横から近づいてみた。父親は目を瞑っていた。ミコトは父親の体を優しくゆすって声をかける。


「パパ、起きて。もうすぐご飯ですよ。起きて」

「おお、ミコト。帰っていたのか」

「もうパパ、テレビつけたまま寝ちゃだめだよ」

「寝ていないよ、瞑想してただけだよ」

「メーソーって何よ?」

「瞑想って言うのは、目を閉じていろいろな思いを捨て去り心を無に近づけることだ」

「眠るのとどう違うの?」


父親はぼんやりとしていたが、体を左右にひねって関節を鳴らした。そして両手を上にあげ大きな欠伸をした。寝起きの状態であることは明らかだった。


「眠りと瞑想の違いかい?眠りは抵抗できない。瞑想はがんばってそうする。ミコトはがんばって眠りにつこうと思ったことはある?」

「昼寝した時は夜眠れなくなって困ったことがある。そんな時は羊を数えるんでしょ?」

「何匹まで数えた?」

「さあ、覚えてないなあ」


「そうだろう?努力してるうちは眠れないのさ。昔の人は眠りのことも神様としていたのさ。人は眠りの神様に愛された時、神様の世界に行けるんだよ」

「すると、夢の世界はその眠りの神様の世界ってこと?」

「まあ、そういうことだね」

「じゃあ、瞑想って何?やっぱりメーソーの神様がいたりするの?」

「うーんどうだろう?日本は八百万の神様がいるから、いるかもしれないなあ」

「知らないんだ?」

「知らないな。瞑想は人がいろいろな悩みを解決するための手段として考えられてきたのさ。瞑想を続けるとある瞬間に悩みを失くせる状態に入ることができるのさ。ところで」

ここで父親は言葉を切った。テレビからは明日の天気予報が流れていた。しばらく晴れが続くでしょう、そう聞えて来た。


「今この時間にミコトが来たということは、晩御飯の時間が来たっていうことかな?」

「ああ、そうそう。さっきママが五分たったらパパを呼んできて、って言ってた。もう五分ぐらいたっちゃったから、早く台所に行こうよ」

「ミコトの腹の虫もせかしているしな。じゃ、行こうか」

父親はテレビを消して、ゆっくり立ち上がった。父親の体格は中肉中背であったが、この動作のせいで、自分の妻から牛に例えられるのであろう。父親はもっさりもっさり歩いてミコトの背中を押してきた。お腹が空いていたので、ミコトは押されるまま居間を出た。


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