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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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今日も寄り道をする


 ホームルームが終わり放校時刻となった。


「おーい、ミコト、今日もアイの家に行くんだろ?私も行くから」

石川和美が話しかけて来た。


「うん。行くけど、具合悪そうだったら、すぐ帰るよ」

「わかってるって、それくらい。それにもう治っているかも知れないじゃないか」

「カズミちゃん、治ってたらテストの答え合わせするんだよ。大丈夫?」

「何だよ、そんなこともわからないと思っているのか、みくびられたもんだなあ、私も」

「わかったよ、一緒に行こう」

「そうこなくっちゃ!さあ、行こうぜー、リンも一緒に行くか?」

「ん、あんまり大勢で行くと迷惑じゃないか?私は遠慮しとくよ」

「そうか?それじゃあ行こうぜミコト」



 竹下愛の家に行くと、母親が二人を出迎えた。


「こんにちは、アイちゃんの具合どうですか?」

「おばさん、こんちは。アイの奴どんな様子?」

「あらまあ二人とも、心配掛けたわねえ。娘は昨日あの後発熱しちゃって。今朝病院に連れて行ってお薬もらって安静にしているところ。熱は引いたようだから退屈してるかも知れないね」

「話をしても大丈夫ですか?」

「是非そうしてちょうだいな、あの子も喜ぶから」

「よしミコト、上がろう」

「あ、ちょっと待って。あの、おばさん、私達昨日のテストの結果を返しに来たんです。あんまり長居しませんので」

「お気使いありがとう、ミコトちゃん。でも長くいてくれた方があの子も喜ぶから」

「そうだぞミコト、遊んだ方が早く治りたいと思うもんだ」

「カズミちゃんの言う通りよ、ミコトちゃん。さあ上がって上がって」

半ば強引に母親はミコトを家に上げた。後ろからは石川和美がぐいぐい押して来る。ミコトは前からと後ろからの力に流されて家の奥に入っていった。昨日同様、台所に通されて炭酸乳酸飲料の入ったグラスが出された。


「ちょっと待っててね二人とも。様子見てくるから」

そう言い残して、母親は娘の部屋に向かった。


「アイの奴、ジュースばっかり飲んでるのかな?贅沢な奴め。昨日はグレープで、今日はカルカル。毎日ジュース飲んでるんじゃないのか?うちなんかお茶ばっかりなのに」

「カルカルってなあに?」

「今飲んだやつさ。知らないのか、お前。最近よくテレビで宣伝してるだろ?」

「あんまりテレビ見ないから」

「そうだったな。でも流行りの番組ぐらいみた方がいいぞ、話についていけなくなるぞ」

「今何が流行ってるの?」

「そうだなあ。今季だと……」

石川和美が考えてる間に、母親が戻って来た。


「アイはちょうど起きてて退屈してたところ。さあ、部屋に入って。グラスは私が持っていくから。こっちがカズミちゃんでこっちがミコトちゃんね。さあさあ、部屋に入って」



 部屋に入ると竹下愛がパジャマ姿にどてら姿の恰好でベッドの上で待っていた。部屋はエアコンが入れられたばかりか、少し肌寒い。


「カズミちゃん、ミコトちゃん、いらっしゃい」

「アイちゃん、具合はどう?熱があるって聞いてたんだけど。寝てなくて大丈夫?」

「ごめんね、心配させちゃって。熱はお薬飲んだから今は引いたみたい」

「お前、すごいパジャマ着てるんだなあ。マオの奴が見たら卒倒するぞ。おじさんが着るようなモノ来てるな」

「マオちゃんのパジャマ姿を見たことあるの?」

「アレ?ミコト去年の勉強合宿、行かなかったっけ?」

「ミコトちゃんは成績いいから、いかなくてもいいもんね」

「成績で思い出した。昨日のテスト、持っていってって先生が」

「明日になったら学校に行けたのに、せっかちだね、先生も」

「アイが明日学校へ行けるかどうかはさすがに先生でもわからんだろう?」

「へー、カズミちゃん、珍しく先生の肩を持つんだね」

「いや、私は先生の肩を持ったんじゃないぞ。正しいと思ったことを言っただけだぞ。そんなことより、アイの答案早く見せろよ」

「まず本人が見るのが先でしょ?はい、アイちゃんの分」

「どれどれ、国語九十点、算数七十五点、理科七十点、社会七十六点。国語以外は七十点台か。良く休む割には成績がいいな」

「そういうカズミちゃんはどうだったの?」


石川和美は自分のランドセルから自分の答案を取りだした。


「じゃーん!算数百点!どうだミコト!お前百点取れたか?」

「わー、すごいね、カズミちゃん、他のはどうだった?」

「えー、他は国語六十八、社会六十五、理科七十……ミコト、お前のも見せろ」

ミコトはランドセルから自分のを出す。


「どれどれ、算数百点。がーん、お前も百点か。簡単だったのか?」

「簡単じゃなかったよ。カズミちゃん、算数はいつもあたしと同じくらいだったじゃない。他のはあたしとおんなじくらいだし」

「ミコトのを見せろよ。どれ、国語八十、社会九十、理科九十。相変わらず好成績だな」


母親が入ってきて、三人分のドリンクを置いてすぐでていった。楽しそうに話すのを邪魔したくなかったのだろう、そうミコト達は察した。


ミコトは竹下愛のために答え合わせを行った。一通り終えると答え合わせの時には黙っていた石川和美が

再び口を開いた。



「それにしてケイジの奴はすごいな」

「ケイジ君がどうかしたの?」

「ミコト、言ってやれよ」

「彼、全部満点だったんだ。すごいよね」

「すごいよね、じゃないぞミコト。学年一優秀という称号なくなるんだぞ」

「そんな称号いらない。彼にあげたら?」

「ミコトちゃんは平和主義者だもんね」

「アイちゃん、平和主義者ってどういう意味?」

「平和主義者って喧嘩をしたがらない人だって。お父さんが言ってた。ミコトちゃん、アスナちゃんやカズミちゃんからいろいろ文句言われるのにちゃんと相手してるんだもん」

「さっきも言ったろ?私は文句を言っているんじゃない。正しいと思ったことを言ってるんだ。アスナといっしょにされてもらっちゃ困るなあ。それにしても男には容赦しないよな、ミコトは」


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