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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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起きてるときにお話しできてた

 坂道を下りきってから、ミコトは初めて起きている時に土偶と話をしていることに気づいた。これはマボロシ、何かが見えたわけじゃないからシって言うのは変かな?今から戻るのも大変だし帰ってから調べよう。それより今は学校へ行くのよ。今日はどこかで会うだろう。そう思ったが、見晴らしの良い農道では、道の先にそれらしい人の影は見当たらなかった。ミコトはいつもの社のところでお参りして、それから、少し早足にしてみた。農道で合わなくても、国道まで行けば後姿だけは発見できるのではないか?



 国道は、村をニ分するように村の中央を貫いている。見通しはよいのだが、少しづつ学校へ通う児童も増えていくので、その中から特定の個人を見いだすのは困難であった。学校の近くまで来た時、ミコトは他のクラスメイトを発見した。


「カズミちゃーん、おはよう」

「おお、ミコトじゃない?おはよう。今朝はまたえらく早いな。どうした?」

「カズミちゃん、いつもこのくらいに学校に着くの?」

「いや、いつもはもう少し早いんだけど、昨日のアレがな」

「アレ?」

「アレだよ、体力テストだよ。お前、体は何ともないのか?」

「全然なんともない」

「そうか、すごいなお前……」

石川和美は重い荷物を背負ったように歩いていた。二人して校門をくぐったとき、背後から声を掛けられた。


「カズミちゃん、ミコトちゃん、おはよう」

「あーアイちゃん、おはよう」

アイはアイでも竹下愛とは違うもう一人のアイ、宮崎藍であった。二人を区別する必要があるとき、ミコトは竹下愛の方をラブリーアイ、宮崎の方をアイイロアイと呼んで区別していた。


「アイちゃんもいつもこの時間に学校に着く?」

「いや、今日は少し遅れたかな。ミコトちゃんこそどうしたの?普通に学校に着いたじゃない?」

三人は靴置き場で上履きを履き、靴を靴箱にしまいこんだ。


「昨日はいつもより早く寝たの」

「体は何ともない?」

「ミコトは体力のバケモンなんだ。昨日の運動ぐらいじゃ何ともないんだと」

「アイちゃんはどう?」

「うん、なんかいつもより体が重いよ」



 三人は教室に入った。午前八時十五分。早歩きしたおかげで昨日より十分早い。

「みんなおはよう」

ミコトがみんなに挨拶する。

「ミコトちゃんおはよう、今日早いねー」

「おお、日野がチャイムより早く来た」

「ああ、日野さんおはよう」

「おいーっす」


 みんなミコト達を見て挨拶を交わす。無口な中村大輔も挨拶だけはする。ミコトは挨拶しながら人数を数える。ひい、ふう、みい……二人足りない。一人はいつもぎりぎりに来るヤツ、そしてもう一人は……ミコトは顔を曇らせた。やっぱりアイちゃん来ていない……同じことを石川和美も思ったようで、ミコトに話しかけて来た。


「やっぱりアイの奴来てないな」

「うん、遅れてくるのかもね」

ミコトは小声で話す。そこへ山口真央が間に入った。


「ミコトちゃん、今日早いねー、どうしたの?」

ミコトは大きな声で靴置き場で喋った内容を繰り返す。


「マオちゃんは家が近くていいなあ。今日も一番に来たんでしょ?」

「ううん、私が教室に入ったらケイジ君が先にいたの」

「それ何時頃?」

「八時ちょっとすぎだったと思うよ。これで二日連続」

「そんなに早く着いて、マオは何してたんだ?」

「いつもは髪を整えたり、洋服のチェックしたり」

「洋服のチェックといったって制服のドコをチェックするんだよ?」

「カズミちゃんわかってないなあ、いろいろあるのよ。スカートの折り目はきちんとついているか、しわは寄ってないか、糸くずはついてないか」

「そんなこと毎日してたの?」

「ううん、昨日と今日はケイジ君とお話」

「どんな話?」

「いろいろ」

「いろいろってどんな?」 

「そんなこと本人に聞けばいいじゃないか?おーい、ケイジ。お前聞こえてるんだろ、マオと朝から何話してたんだ?隠さずに教えろよ」

「いや、隠してるつもりはないんだけど」

「じゃあなんで黙ってたんだ?」

「いや、女の子同士の会話には入りづらくって」

「それで、何の話をしてたの?」

「何の話をしてたっけ?家族の話、前の学校の話、趣味の話。そんなところかな?」

「いつも何時に家を出るの?」

この際だからミコトは疑問をぶつけてみた。


「七時二十分ぐらいかな」

私より十分早く出ている!それじゃ、通学途中で会わないはずだわ。ミコトは納得した。


「そんなに早く家をでて、学校に着いて何をしてるんだ?」

石川和美も疑問に思った点を問いただす。


「前の学校ではサッカーしてたけど。こっちは朝早く来る人がいないんだね。山口さんは、と。サッカーしなさそうだしなあ」

柳井圭治は軽くため息をついた。


「いいじゃない、ケイジ君。私と話ができたんだし」

柳井圭治は、そうだねといって愛想笑いをした。



 バタバタバタバタという音がしたかと思うと、川村幸治が教室に入ってきた。

「ひゃあ、今日もギリギリだったあ」

「川村おはよう、あんたはいつもとおんなじね」

「おお、日野、おはよーさん」

「ユキジ、アンタ体はなんともない?」

「おお、石川か、いつも通りぜーぜーしていいるぜー」

「今の話をしてるんじゃなくって、もういいわ、はやく顔でも洗ってこい。すぐ先生来ちゃうぞ」

川村は、そうだなといって教室からでていった。柳井は川村を見てもため息をついた。


「どうした?ユキジ見てため息ついて?」

「いや、カレいっしょにサッカーやってくれないかなと思ってさ」

「朝は無理だよ、いつもあんな調子だし」

「だよねえ」


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