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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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ネコパンチでお目覚め



ポカスカポカスカ。


眠っているミコトを目覚めさせたのはまたしても飼い猫・おスミちゃんであった。しかもミコトが完全に目覚める直前に猫パンチを繰り出すのを止めるのである。おかげでミコトは飼い猫に起こされていることをまだ知らない。時刻は午前六時半。起きるのに良い時刻だ。ミコトは起き上がり、体を一ひねり、首を二ひねりした。昨日の疲れはすっかり取れたようだ。ミコトはベッドから跳ね起きた。動いたのお同時に腹の虫が鳴った。昨日の晩御飯からそんなに時間は経過していないように感じたが、それは気のせいだろう、そうミコトは思うことにした。足元には飼い猫がしっぽを振っている。


「あ、おはよう、おスミちゃん。私が起きるまで待っててくれたの?えらいえらい」

そう言ってミコトは飼い猫の頭をなでなでした。実際にはもう遊ばれてしまっていたのだが。しかし、昨日といい今日といい、目覚ましが鳴る前に起きられるなんていい感じだわ、目覚ましのアラームをリセットしながらミコトは独り言をいった。腹の虫のアラームは先ほどから鳴りっぱなしだ。足元の猫アラームもうるさい。ミコトは時計以外のアラームを止めるために台所に向かった。


「ママ、おはよう」

「あら、おはよう。今日もいい時間に起きれたわね。顔は洗ったの?」

「まだだよ」

「先に顔を洗って、歯を磨いて、着替えて来て。朝ご飯もう少しで出来上がるから」

はーい、と返事をしてミコトは台所から出ていった。猫アラームはキャットフードを渡されて止まった。ミコトが洗面所に入ると同時に父親がトイレから出てきた。


「やあ、おはよう」

「あ、パパおはよう」

父親の顔を見ないで顔を洗ったミコト。顔を洗う音に負けないぐらいお腹が鳴っている。


「昨日は相当くたびれていたみたいだけど、寝たらなおったみたいだね」

父親は娘のぐうの音を聞き逃さなかったようだ。ミコトは歯を磨きながら頷いた。


「毎日八時ごろに寝るようにするといいみたいだね」

こくこく。ミコトは頭を振った。


「なんかお邪魔みたいだから先に台所へ行くね」

こくこく。父親が出ていくと、ミコトは歯磨きを終え、トイレを済ませ、制服に着替えた。よし、準備オーケー。さあ、朝ご飯食べるぞ。



 食事はいつも通りにおいしかった。朝食では夕食のように創作料理が出ることもなく、ミコトは安心して食べることができる。時間がないので、いつも作る料理が最も早く作られるのだろう。変な創作意欲を刺激されるよりよっぽどましだ。ミコトはいつもより一杯多く朝ご飯をおかわりした。


「あらあら、今日は余裕があるわね」

母親は笑っておかわりを差しだした。


「ちょっとトイレに行って来るわね」

母親が去った後、父親が小声で尋ねて来た。


「ところでミコト、庭に置いているアレ、どうしてあそこに置いてるんだ?部屋に飾るんじゃなかったのか?」

「うん、ちょっと光に当ててみようと思って」

ウソはついていない。


「光にあてると何かいいことがあるのか?」

「やだなあ、パパ。パパがやっている虫干しと一緒だよ」

ふーんといって父親は引き下がった。自分の妻が戻ってきたからだ。父親は話題を変えた。


「それにしても、昨日はすごかったねえ。帰ってきたと思ったらすぐ食事。がっつり食べたと思ったら、お風呂で一時間こもりっぱなし。お風呂から出た途端にオヤスミ、だもん。あまり無茶するなよ」

「昨日みたいなこと、滅多にないよ。大体、頭と体のテスト、一日でやっちゃうなんてむちゃくちゃだよ。パパ、お茶飲む?」

「じゃあ貰おうか」

「私の分もお願いします」


ミコトは急須に茶葉をいれ、ポットからお湯を急須に注いだ。床には食事を終えた飼い猫二匹がごろごろ鳴いていた。昨日放っておいた分、可愛がってやろうと考えたが、お茶をいれてからにしよう、そうミコトは思い直した。急須のなかでお湯からお茶に代わった液体をミコトは湯呑みに注いだ。


「はいどうぞ、パパ」

「有難う」


そう言って湯呑みを受け取った父親は、一口お茶を啜ると感想を述べた。


「ちょっと薄いね」

「ごめんね」


「ミコト、お茶を注ぐ時、三つカップがある時は、味が均等になるように注ぐの、こんなふうに」

そう言って、母親は、先にミコトのカップに半分お茶を注ぎ、次に自分のカップになみなみと、最後にミコトのカップをお茶でで満たした。


「こうすれば二つとも同じ濃さのお茶ができるのよ」

「三つの場合は?」

「一つ増えるだけ。肝心なのは最初のお湯の量がキチンと合っているかどうかよ」

「ふーん、それでおいしくなるんだ?」

「おいしくなるかどうかは、あとお湯の温度、茶葉の量・種類、お湯を注いで待つ時間、カップを温めておくこと。難しいのよ、おいしくお茶をいれるのって」

「そんなに難しいことをしてたんだ」

母親が入れたお茶を飲む。今日は薄からず、濃からず、熱すぎず、温すぎず。おいしい。


「なに、可愛い娘の入れてくれたお茶だ。多少薄くてもおいしいさ、ただ……」

「ただ、どうしたの?」

「うん、ミコトが何かに気を取られていたんじゃないかって思ってね」

「えへ、ばれてた?おスミちゃんを触ろうと思ってたの」

「おスミちゃんを相手にしないでもう学校に出発したら?帰ってから遊びなさい」

「はーい、ごちそうさまー。今日もおいしかったー」



お茶を飲み干すと、ミコトはランドセルを背負って玄関を出た。

「いってきまーす」



午前七時三十分。昨日と同じ時刻にミコトは家を出た。今日はアイツに道で会えるかな?そんなことを考えながら坂を下り始めた途端、頭の中で“あの声”が響く。


“ヒノミコトヨ、そんなに急いでどこへ行ク?ワラワト話ヲ……“

「今はそれどころじゃないの!学校へ行ってくるから、話は帰ってから、聞くから、じゃああねえええーーー」


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