午後は体力測定の時間です
二人が運動場に着いたのは、担任・宮本指定の時刻の直前であった。外は穏やかに晴れていた。ソナタはたっぷり日の光を浴びているかしら、ミコトはそんなことを考えながら走ってきた。
「よーし、そろったな。それじゃあ、準備運動をするわよ。背の高さが近い者同士で柔軟体操をするから。木村さんは前に来て。私と組んで、見本をやるから」
木村詩織は仕方なしに前に出た。
「マオちゃん、やろうか」
ミコトの身長に釣り合うのは、石川和美と竹下愛、それに山口真央の四人だった。竹下愛は体育を休みがちなので、よく三人で柔軟体操をやっていた。ちびっ子三銃士と呼ばれる所以であった。
柔軟体操が終わると、担任・宮本は全員を背の高さ順に整列させた。
「はい、これから陸上競技の記録測定をします。種目は遠投、走り幅跳び、百メートル、四百メートル、千六百メートル走のタイムを計ります。そのあと体育館に行って反復横とび、垂直飛び、立位体前屈、踏み台昇降です。最後に身長、体重、胸囲を測って終わりです。気分が悪くなった人はその場ですぐ申し出ること。いいですか?それと日野さん記録係お願い。それじゃあ始めますよ」
みんなやる前から終わった後のことを考えてげっそりした。
全ての測定が終わった。体操服から制服に着替え終わった六年生たちは、測定前の予想どおり、みんなぐったりしていた。教室までたどり着くと、各々が各々の席で各々の方法でだれていた。
「ミコトちゃん、相変わらず足速いねー」
隣の席の山本凛が顔の右半分を机につけて話しかけて来た。ミコトは顔の左半分を机につけて返答する。
「足の速さって鍛えないと速くならないからねー」
「朝から毎日走ってるもんねー。それにしても男子より速いんだもん、すごいよねー」
「すごくないよー」
「ケイジ君も速かったけど、ミコトちゃんには負けてたしねー」
「アイツ、走ること以外は結構すごかったよ。運動音痴じゃなかったんだねー」
「どうしてそう思ったのー?」
「昨日、ウチの神社の境内でサッカーボール蹴ってるの見たんだよー」
「へー、それでー?」
「ボール蹴るの下手だったからそう思っただけだよー」
「へー、そんなことがあったのー?」