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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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授業の前の和気あいあい


 午前八時二十五分。今日のミコトは走っていないので、朝のホームルームの時間ギリギリに着くのは予想できた。後十分ウチを早く出ればみんなとゆっくり話ができるんだけどな、ミコトは当たり前のことを考えていた。今日もミコトは柳井と通学路で会うことはなかった。アイツ、いったい何時に家を出るのかしら?私と一緒に学校来るのが嫌なのかな?そんなことを思いながら、ミコトは教室に入った。


「おはよう」

「あー、ミコトちゃん、おはよう。今日早いね。どうしたの?」

「おー、ミコト、おはよー、今日息切れてないね」

「ふふふ、今日はウチを早く出たの」

「だから走ってないんだな」

「いつも今日ぐらいに家を出ればいいのに」

「うん、今日は楽だったなあ」

次々とみんなが挨拶してくる。その中に、柳井の姿もあった。


「日野さん、おはよう」

「ああ、ケイジ、おはよう」

ミコトはさりげなく柳井のことを呼び捨てにした。一瞬場が静まり、すぐにざわついた。


「ミコトちゃん、柳井君のこと、ケイジって呼んでるの?」

山口真央が聞いてきた。


「そうだけど。それがどうかしたの?」

「いつの間にそんな仲になったんだ?」

山本凛が問いただす。


「そんな仲ってどんな仲?」

「どんな仲ってそんな仲だよ!」

うーん、なんだか堂々巡りだなあ、そんなことをミコトは考えていた。


「みんなもケイジ、って呼んで欲しいなあ。前の学校でそう呼ばれていたから、そっちの方が落着くんだ。さっきみたいに柳井君、なんて呼ばれるとかえって恥ずかしいよ」

「さっき、って何の話をしてたの?」

ミコトは今一番冷静に見える荒木恵理子に尋ねる。


「そりゃあもう、柳井君の話。彼、すごいの。昨日一日でクラス全員の名前と昨日の挨拶、覚えているの」

冷静に見えるが、かなり舞いあがっている、そうミコトは見てとった。


「へえ」

「へえ、じゃないわよ。すごくない?」

やっぱり舞いあがっているよな、ミコトは自分の見立てを確信した。



 皆が騒いでいるとき、教室のドアが開いた。川村幸治が息せき切ってやってきた。


「あー、今日もギリギリで間にあったあ」

「あーおはよう、今日も変わらないねえ」

「おお、日野、おはよーさん。お前だって、ん?今日は汗、かいてないな?どうしたんだ?日野らしくないぞ」

「今日は、普通に歩いてきたからね」

「そうかあ、今日は遅刻しそうだったの、俺だけかあ、遅刻仲間が減ったなあ」

「言っとくけど、私は遅刻したこと、一回もないからね」

「ええ?そうだっけ?まあどうでもいいや、ちょっと顔を洗って来る」

そう言って、川村は教室を出ていった。


「さて、ケイジ君、問題です。じゃじゃん!」

山口真央が、さっきまで柳井君と呼んでいたのを早速呼び変えて来た。


「今、すぐ教室に入ってきて出ていった人は誰でしょうか?」

「えと、男子は僕を除いて五人で、彼以外は全員居るからここにいない人が彼だ。彼の名前は川村幸治君」

「すごーい、正解です」

「もっと別の問題にしろよ、マオ」

そう言ってきたのは石川和美だった。

「さて問題です。じゃじゃん!この山口真央の趣味はなーんだ?」

「趣味の話をしてたのは山口さんだけだから覚えてる。お菓子作りだったよね」

「すごいすごーい。正解です」

山口真央が肘を体につけ小さく手を叩いて喜んだ。

「じゃあ、ケイジ君。僕の誕生日、覚えてる?」

佐藤春人が横から入ってきた。

「君は春の人、と書いて佐藤春人君。誕生日のことを言ったのは君だけで、立春生まれ二月四日、でしょ?」

「すごいねえ、一回聞いただけで覚えてるんだ」

「大事なことなら」


午前八時半。朝のチャイムがなったが、周りは相変わらずざわついている。

「もう先生来るからみんな席に着いた方がいいよ」


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