目が覚めたから土偶にあいさつ・・・何と呼ぼうか?
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ぽかぽかぽかぽか。ミコトの顔に何者かがちょっかいを出していた。
「ちょっと、待ってようー」
ミコトは自分の声で目覚めた。と、同時に声で何者かを追っ払った。追い払われたのは飼い猫おスミちゃんであった。おスミちゃんは、ミコトが目覚めるまで猫パンチを繰り出していた。黒猫おスミちゃんはミコトの叫ぶ声でベッドから降りた。
「あー、やっぱり夢だあ」
ミコトは起き上がって大きく伸びをした。ベッドから降りようとすると、足元にはおスミちゃんが何事もなかったかのように鎮座していた。
「あ、おはよう、おスミちゃん」
さっきまで猫パンチを食らい続けていたことも知らないで、ミコトは黒猫に挨拶をした。さっきまで猫パンチを繰り出し続けていたことを素知らぬふりして、黒猫はミコトににゃおと返事をした。ベッドから出ると、東側に向いた机に向かった。机の向こうのカーテンが完全には閉じられておらず、ミコトがいる方向から、土偶に後光が差しているように見える。ミコトはカーテンを開け、朝の光を浴びた。起き抜けの体を覚ますように、ミコトは両手を結んで上にあげ、背筋を伸ばした。
「はーっ、変な夢だったなあ」
目覚める直前にしてはところどころ記憶が飛んでいる。ミコトは、さっきまで夢の中で話していたモノを取り上げ、話しかけてみる。
「ソナタ、起きている時は話できないの?」
少女はそのモノをソナタ、と呼ぶことにした。好きに呼ぶがよい、そう言うセリフが頭に残る。それじゃあ、相手のことをしきりにソナタって呼んでたから、私もソナタって呼んであげよう、そうミコトは考えた。
「やっぱり、夢は夢のままなのかしら?」
それにしては、土偶はミコトのココロを読み解いていた。目覚め直前のあのセリフ。
「要するに、一日中外に出しとけばいいのね?解ったわよ、そうしてあげる」
そうしないと、また話ができないじゃない。卑弥呼の話、もっと聞きたかったなあ。ふう。ミコトはため息をついた。机の上の目覚まし時計を見ると、午前六時半。この時刻なら、朝から学校へ走っていかずに済む。