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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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土偶はかく語りき


 ミコトは、土偶の話を頭の中で反芻していた。名前をほめられるのはうれしいけれど、美古都って古臭いんだよなあ。古いっていう字がそんな感じにさせているんだな。ママみたいに美琴、って付けてくれたらよかったのに。ママの名前、きれいだよなあ。美鈴、美しい鈴、ミスズかあ。


 土偶は、ミコトが黙っているのに構わず話を続ける。


「それで、ヒノミコトヨ。そなたは何を望むカ?」

何を望むか!急にそう尋ねられたら、ヒトは何と答えるだろうか?それは尋ねられた人によって異なるだろう。ある人はお金が欲しいと願うだろうし、別の人は健康を願うだろう。願いはその人をあらわすのだ。さて、ミコトの場合はどうか。


「何を望むかって、あなたの名前は何?ナニモノなの?あなたは、何の」

たくさんの問いを投げかけようとしてミコトは止められた。


「アカネサス・ヒノミコトヨ」

なに、アカネサスって?


「一つの問いに答えは一つジャ。そなた、ワラワにナを問うたナ?ワラワにナはナイ。好きなように呼ぶがヨイ。昔、ワラワに会ったモノ達は、好きなように呼んでいたゾ」

ふーん。なんと呼ばれていたんだろう?


「次にそなたはワラワがナニモノかを問うたナ?ワレがナニモノか、明らかに答えられるモノは、実は少なイ。そなたはナニモノカ?この問いに答えることができるカ?……答えに困ろウ?まあよい、ワラワの声が聞こえるそなたには教えヨウ」

むむ、なんか恩着せがましい言い方だな。


「ワラワは“スベルモノを見守るモノ”ナリ」

ナニ?滑るモノを見守るモノ?スキーやスケートの監視員かしら?でも昔そんなことをやっていたとは思えないし。


「ワラワのチカラは人をマツロワスコト」

また、変な言葉が出て来たよ、マツロワスって何よ?


「イニシエのキミはワラワのチカラを用いて世をスベテいたのジャ」

「うーん、意味が良く分からないんだけど」

「何、わからぬト?」

土偶は目を見開いた、ようにミコトには見えた。実際には、そんなことはなかったのだが。今ここを夢だと認識しているミコトにとっては、そんなことある、のであった。


「わからヌのは、ソナタがワラシだからカノ?それともコトノハが変わったからカノ?」

何?最後のカノって?

「うーん、両方じゃないかな?わかんないけど」

「ナラバ、ワラワからソナタに問ウ。今、世をスベテおるのはタレジャ?今はタレのミヨカ?今もオオキミのヨカ?」

オオキミって何だ?


「さっきから、スベル・スベルって言っているけど、何?スベルって?」

「どうもコトノハを知らぬワラシカノ?スベルとは、スグレタヒトが多くのヒトの上に立つということジャ」

「つまり、支配するって意味?」

「シハイ、というのカ?今のヨでハ?そうか、ならばそなたがコトノハを知らぬのではなく、コトノハが変わった、と見なさなければならぬノ」

「そのコトノハっていうのは、言葉と思っていいのかな?」

「コトノハがコトバに変わったのか?それならばオオキミのナも変わっておろうナ……」

「オオキミって言うのは支配者で指導者ってこと?今はソーリダイジンって言うんだけど、最近毎年代わって困るって、うちのパパ、あ、いや、父親が言っていた」

パパって言っても絶対わからないよな、コイツ。ミコトからコイツ呼ばわりされた“コイツ”はしばらく黙っていた。コイツ呼ばわりした奴も同じく黙っていた。それぞれがそれぞれの考えを巡らせていた。やがて、異なる口から同じ音が飛び出した。


「「それで」」

音が被ったことにミコトは気付いて、続けて、と先んじた。


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