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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
20/155

パパさんも不思議なことが好きなようだ


 歯を磨き終わったミコトは、自分の部屋に戻る前に父親のいる居間にいってみた。父親はテレビの電源を入れたまま、帳面とにらめっこしていた。母親からあんなことを言われるまではそうでもなかったが、目の前にいる生き物が、今では牛が座って瞑想しているように見えた。ミコトは声をかけてみた。


「パパー、何してるの?」

牛に見えた生き物は、モー、とは鳴かなかった。


「御覧の通り、どうすればウチが繁盛するか、その作戦を練っているのさ」

良かった、やっぱりパパはパパだ。ミコトは安心して聞き返した。


「ハンジョウ?」

「そう、繁盛、ウチの神社に参拝客がたくさん来て、願いを叶えてもらって、ウチがちょっとだけお布施をいただいて、こうやってみんなが幸せになることさ」

ミコトは、母親には黙っておいたことを父親に聞いてみた。


「ママはどうして不思議なことを好きじゃないの?神社の子で自分も巫女だったのに?」

「ミコトは不思議なモノゴトが好きかい?」

ミコトは辺りを見回して、肯いた。


「はは、ママが聞き耳立ててると思ったの?そんなことはしないよ、ママは」

「あのね、あいつが、ああ、あいつってケイジのことだけど」

「おお、すでに呼び捨てか」

「いいの、本人にも言ってあるから、それでね、あいつがいろいろ聞いてくるの、うちの神社のコト」

「うん、それで?」

「それでね、私、ウチの神社のこと、全然知らないって気付いたの……」

「ああ、それはミコトのせいじゃないよ、パパとママのせい、うん、もっと言うとママのせいだな」

「どうして?」

「ママはあの通り、不思議なモノゴトが嫌いだろ?」

「どうしてママは不思議なモノゴトが嫌いなの?」

「ママは若いころ、不思議なことに悩まされたそうだ」

「不思議なことって?」

「詳しくはパパも知らないんだ、話してくれないし」

「どうして話してくれないのかな?」

「よくわからないけど、ママの主義じゃないのかな?」


「シュギって何?」

「シュギっていうのは、その人が言いたいことやしたいことさ、さっきママが不思議なことは思議するなって言ってたろ?」

「不思議がどうのこうのって言ってたね、よく意味がわからなかったけど……」

「ハハ、わからなかったかい?わからないということは、ミコトの中で、まだ芽が出てないということだな。もう少し大きくなるとわかるようになるさ」

「それもよくわからないよ」

「今はまだ、わからなくてもいいんだよ。それより、ミコトはどうしたいんだい?」

「私、誰かに教えられるくらいには、知っておきたいの、ウチの神社のこと」

「説明できる程度か……、ミコトはウチの神社をどこまで知ってる?」

「名前だけかな?」

「そう、詳しく離さなかったからね、でも話すことがあんまりないのも事実だよ。ちょっとだけ話しておこうか?」

「ちょっとだけ?」



「そう、ちょっとだけ。僕らがここ泉坂神社に越してくる前までは、お年寄りの神主さんが一人で勤めていたんだって」

「小さいからね、ウチの神社」

「その人が亡くなって、誰もここを祭る人がいなくなって、地元の人たちがこれはいかん、ということになって神主をやってくれる人を探したってことさ」

「それがパパだったのね」

「そう、パパはママのおばあちゃん、つまりミコトのひいおばあちゃんから頼まれてここに来たんだ」

「ふーん、それで?」

「それで来てみたはいいけど、パパもこの神社について何にも知らないっていうことに気付いた。ずうっと古文書を調べたり、この地域の言い伝えを調査したりしてたのさ」

「それで、何がわかったの?」

「それがわからないことだらけなのさ。それでパパは考えたんだが、わからないなら創作しちゃおうって」

「大丈夫?そんなことして?バチとかあたらないの?」

「みんなが幸せになることを願うことで自分も幸せになるんだ、そういうことにはバチは当たらないよ。むしろ、バチ、あてて欲しいよ、不思議体験をパパもしたいよ」

「パパも不思議なことが好きなの?」

「そう、だから神主になったんだ、なのに……今まで不思議なことにはほとんど会えてない。今まで出会った数少ない不思議体験のひとつは……」

「何?何?」


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