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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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クラスメイト達

初めての投稿でてまどってます・・・

ミコトの家は里山の登り口にあった。山を下りると、まだ耕作されていない水田が広がる。山の裾から二町歩ほどが神社所有の水田であった。用水路に沿った農道はどこまでも続くようにも見える。この辺りには神社に米を奉納する中村さんの家しかない。この見晴らしの良い農道で、パンをくわえた転校生とぶつかるなどという設定は絶対に無理だな、とミコトは走りながら考えた。しかしそれにしても、行き道のどこかで会えるのではないか、とミコトは期待していた。

農道の途中にある祠に来ると、ミコトは走るのをやめ、手を合わせて祈った。何ごとの神が祭られているかは知らないが、それがミコトの毎朝の習慣となっていた。そして祈り終えると再び走り始めた。

一生懸命走ったおかげで、ミコトは遅刻せずに教室に入ることができた。が、結局転校生とは会えずじまいだった。

 

 ミコトは今日から六年生である。教室を間違えないように教室のプレートを確認した。間違いない、六年と書いてある。この学校は一クラス一学年で構成されていた。

教室に入ると、ミコトはあたりを見廻した。

「ミコト、おはよう」

「ミコトちゃん、おはよう」

「あーカズミちゃん、アイちゃんおはよう」

教室に入るとミコトに一番に挨拶をかわすのは石川和美と竹下愛だ。外見は三人とも同じぐらいだが、元気一杯の石川和美に対し、控え目な竹下愛と二人は好対照をなしていた。

「ミコト、今日も汗だくだねえ。息も荒いし」

「六年生になっても変わらないね」

「今年は変わろうと思ってたんだけどね。ちょっと顔洗ってくるね」

ミコトはランドセルからタオルを取り出して教室からでた。

顔を洗い、水を首筋にかけてから、ミコトはタオルで顔を拭いた。すると、背後から息を切らしてやってくる少年がいた。

「おはよう、川村、あんたも変わらないわねえ」

「おお、日野か、おはよーさん、今日も間に合ったなあ」

「あんたん家、学校からすぐそこじゃ」ない」

「前から言ってるだろ、うちは親が放任主義で自分で起きなきゃなんねーの」

「起きればいいじゃない」

「それができりゃ苦労しないっつーの」

「そりゃそーか」

ミコトだってあとニ十分、いや十分でも早く起きれば、朝っぱらから走ることなどないのだ。二人は教室へ入った。

「これって席はどうなってるんだ?」

「さあ?まだ決まってないんじゃない?みんな適当に座っているみたいだし」

「ところで、お前、知ってるか?今日転入生が来るんだぜ」

クラスのみんなが川村の方を見た。

「ユキジ、本当かよ」

「お前、朝から法螺吹いてんじゃねえよ」

「なんでお前が知ってるんだよ?」

「男子、女子?どっち?」

「ユキジのアホ」

クラスの子全員、といってもこのクラスには男子は五人、女子九人しかいないのだが、ユキジと呼ばれる少年に突っ込んでいた。

「なんであんたがそんなこと知ってるのよ?」

ミコトは尋ねた。

「うちの親、役場勤めだろ、先週子供と母親が転入届をだしてたっていうんだ」

「同じ学年かどうかわからんだろ、そんだけじゃ」

「それで男子なの?女子なの?」

「ユキジのバカ!」

「誰だ!今バカって言ったの?」

「まあ、川村がバカなのは今に始まったことじゃないからいいとして」

と、ミコトは皆をなだめるように両手でおさえた。

「良くない!日野、お前ってひどい奴だな!」

「前から知ってるでしょ!そんなこと。そんなことより」

「そんなことより、じゃない!」

「転校生の話に戻るけど、うちのパパが見たんだって、昨日」

「それでそれで?」

「男子?女子?」

「パパは男の子って言ってた」

「男子だ!」

「ねえねえ、ミコト、その人かっこよかった?」

「私が直接見たわけじゃないから。あ、でもすぐわかるんじゃない?」

「そうだねー」

「そうだよねー」

「なんでお前の親父、その子が転入生ってわかったんだ?見ただけじゃわらんだろ?」

「おー、ユキジにしてはいい質問だな」

「そうだな」

「ユキジ、賢い!」

「えへへ」

「えへへ、じゃねえぞ。しっかりしろ」

「そうだぞ、しっかりしろ」

「うちの近所に越してきたの。それで中村のおじいちゃんといっしょにうちにあいさつに来たんだって」

「おい、ダイスケ、おまえの親せきか?」

「いや、神社の近所の中村さんはうちの親せきじゃねーし」

「へー、そうなの?」

「まあ、先生が来たらわかるんじゃない?」

「かっこいい人だといいねー」

「いい奴だといいな」

「そうだな」

話している間にチャイムが鳴った。


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