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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
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埴輪の底力 パとプの合わせ技



 帰り道の途中、ミコトは最後に見つけた埴輪のパに声をかける。



”ちょっと、パピプペポ五兄弟の長男、パ、返事して”


”なんだ、何か用か、童子よ?”


”あなた、一昨日なんで私から逃げたのよ?”


”逃げたのではない。他の四兄弟、とくにピとプゥを探しておったのだ”


”なぜ、ピとプゥなの?ペィやポゥもいるじゃない?せっかく会せてやろうしてたのに”


”童子、名は何と言ったか?”


”パの兄者、ヒノミコト殿でござるよ”


”こいつはひどい奴だよ、パの兄者、俺のことを一人では何もできない役立たずっていうんだぜ”


”ポゥ!”


”おう、ピの奴以外はみんな揃っているのか”


”あとは埴輪のピ、を回収すればいいんだけど、心当たりない?”


”ない”


”ホントに?隠し事をするとためにならないわよ?”


”なぜ我らが、童子ごときに隠し事をせねばならぬ?”


”それじゃあ、もうひとつ教えて?パはプゥの力を使って流行り病を鎮める事ができるんでしょ?今村で流行っている病気も治すことができる?”


”それは容易い”


”どうするの?”


”我ら二人を取りだしてみよ”


ミコトは言われた通り、二体の埴輪を鞄から取り出す。


”我らの足元には穴が空いておるのはわかるな?我の頭をプゥの穴に突っ込むのだ。そして、大きな声でこう唱えよ、パプパプパプア・パプパプア”


ミコトは言われるがまま、埴輪のパの頭を埴輪のプゥの穴にさし、意味もわからず埴輪の唱えるとおりに唱えてみた。


”唱えるだけではだめだ、回りながら、身体をくねらせるのだ!それ、パプパプパプアーパプパプア!”



「パプパプパプアーパプパプアー」


”もっと激しく!”


「パプパプパプアーパプパプアー」


”いいぞ、その調子だ!”


「パプパプパプアーパプパプアー」





「ちょっと、日野さん!こんなところで何やってるの?」


変な踊りを踊っているところに声をかけられたのは外出しているところを見られたくない人物・担任宮本幸子であった。


「あっ!先生、おはようございます。今日もランニングですか?」


「うん、ランニングがてら児童達の様子を見に。あなたはちょっと顔が赤いけど、元気そうね。で、なにをやってたの??こんな道の真ん中で?」


ミコトは、変な踊りを見られて、恥ずかしくなって顔が赤くなった。そう自分では思った。


「わ、私も風邪引いちゃった人の見舞いをしようと」


「それは先生の役目です。あなたはそんなことしなくていいのよ?」


「これからみんなの所に行くんですか?」


「そうだけど?」


”ちょっと、パァちゃん?この人に病気に対抗するものをたくさん吹きつけることできる?”


”造作ないこと。さあ、先ほどの踊りをこ奴の前で踊るのだ!”


”それで先生にあった人の病気も治るかな?”


”無論じゃ、さあ!早く!”


「先生、ちょっと失礼します。パプパプパプア・パプパプアー」


「ちょっと止めなさい!何やっているの?」


「おまじないです。これやると先生に会った病気の人がみんな治るそうです」


「わかったから!もういいでしょ?私行くから、日野さんはお家に帰りなさーい」



 よほど恥ずかしかったのか、担任宮本はその場を逃げるように去っていった。後には埴輪を持った少女が呆然と佇んでいた。


”これでよかったの?”


”ああ、十分だ、これでここに住む者もあの者に接触する者も治癒するであろう”


”あの踊りには何の意味があるの?”


”別に意味はない。強いてあげるなら踊っている奴が本当に我らを信じてやっているか試すという意味がある。お前は我らを信じた、だから我らも前を信じよう”


”もう、意味ないの?めちゃくちゃ恥ずかしかったじゃない!”


”それで、童子よ。我らを集めてどうするつもりか?”


”そうだね、とりあえず一番厄介なピィを手に入れたら……”


”手に入れたら?”


”飾っておくかな?んん、でもそんなことしたらあなたたち、動物たちに運んでもらえるから、いなくなっちゃうわね?病気が村にはびこるのもいやだしなあ?”


”我らを壊してしまうか?さすれば疫の元はなくなり一時の安らぎが得られるぞ”


”でもあんた達も壊されたくないんでしょう?ソナタも言ってたけど、モノはそのモノでいつづけたいって。あんた達もそうなんでしょう?できるだけ願いは叶えてあげたいの。それに、あんた達、特にピィが壊れていなくなったって病気っていうのはなくならないんだよね?だったら壊す意味なんて全くないよね?”


”パの兄者、この方は姉様を所有されている方でござる。我らモノの言葉が通じる方でござるよ。信頼していいでござる”


”信頼はしておる。先ほどの変な踊りをやってくれたのだからな。それでは我らの望みを言おう。我らを飾るのはよい。だが時々水をかけて野へ出してくれ”


”そんなことしたらピィが新しい病気を作っちゃうんじゃないの?”


”ピィが新しい病気を作ったとしても、そばに我がおる。何の問題もなかろう?我らは我らに与えられた役目を果たさねばならない。それはわかってもらえると思うが?”


”そうか、あんたたちは部屋でただじっとしてるだけでは自分の役目を果たせないからそうしてくれって言ってるのね。それがあんた達の言う、崇めよってこと?”


”まあそういうことだ。それで、どうするのだ?ヒノミコトよ?あてはあるのか?”


”ないわねえ。とりあえず、一旦家へ帰りましょう、お腹も空いてきたところだし”




ミコトは朝に自転車を止めておいたところに戻り、友人宅へは寄らずまっすぐ家へと向かった。



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