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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
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作戦大成功!



二人は玄関を開け、家の中に入った。台所では祖母のいった通り薬缶がしゅーしゅー湯気を立てていた。荒木恵理子は火を止め、薬缶のお湯をポットに注いだ。


「何飲む?コーヒー、お茶?」


「おばあちゃんがいるのでお茶にしない?」


「遠慮しなくっていいよ・ウチのばあちゃんなんでも好き嫌いなく飲むから」


「それじゃあお茶で。家でもお茶か牛乳だし」


「ねえ、紅茶にしてみない?私あんまり家で飲めないの。今日両親いないし」


「ご両親どうしたの?」


「父さんとじいちゃんは釣りに行ってる。母さんは友達の所。ばあちゃんだけ家にいたの」


「おばあちゃんいてくれて助かったよ。おかげで一体余計に見つかりそうだし」


「それにしても、ホントに五個ありそうだね。ミコトちゃんの言うとおりになりそうだね」



 荒木恵理子は急須に紅茶の葉をいれ、ポットの熱湯を注いだ。茶葉が広がるのを待つ間、荒木恵理子はソーサー付きカップを三つ用意した。ミコトは何かしようかと思ったが特にすることもなさそうなので黙っていた。荒木恵理子がお茶をカップに注ぎ終わったころ、荒木祖母が台所に戻ってきた。手には確かに埴輪を持っている。


「これのことかい?」


「あーっ、これですこれです、今日ずっと探してたんです。これ頂いてもいいですか?」


「いただくもなにもミコトちゃんのでしょ?」


「あの、さっき言い損ねたんですけど、正確に言うと、私のっていうより私が集めてるんです、こういうの」


そう言ってミコトは持っている埴輪三体を見せてみた。


「あらあら、こんなにお仲間がいたら一緒にしないといけないねえ。それにしてもかあくろうちゃんが集めてたんじゃないの?」


「ばあちゃん、かあくろうとミコトちゃんは趣味がおんなじなんだよ。それでミコトちゃんがチョコレートと埴輪を交換してもらったんだ」



荒木恵理子がうまく説明してくれたおかげで、ミコトは荒木祖母から埴輪を受け取ることができた。


「それにしても、ばあちゃんいつからかあくろうに餌あげてたの?全然気づかなかったよ」


「先月から、先月っていってもつい二週間ほど前だけどね。なんかカアカア聞こえるかと思ったらあの木に巣を作ってたのよ。なんか弱ってるように見えたから食べ物あげてみたの。そしたら喜んで食べてるように見えてねえ」


荒木祖母は一口紅茶をおいしそうに啜ると、立ち上がり食器棚へ行き棚から箱をだした。


「かあくろうちゃんにあげたクッキー、あなたたちもお食べなさい」



老婆が勧めてくれたクッキーを、少女二人はいただきまあす、そう言って手を出した。クッキーを食べながら、お茶を啜りながら少女二人は話をする。


「ああ、一息ついたね。もう喉がガラガラになったよ」


「ホントだね。ミコトちゃん、声ガラガラ。ちょっと頑張りすぎたんじゃない?」


「うん、なんかちょっと喉痛いよ」


「私は、これであとは作文書くだけだ。ミコトちゃんの大活躍を文章にするんだ。私の表現力が追いつくか心配だな」


「ホントに作文にする?一応、学校では外出禁止ってことになってるんだけど?」


「作文のためなら許してくれるって。だいたい宮本先生だって外出してると思うよ」


「そりゃ、お仕事のためなんじゃないの?」


「いやあ、体鍛えるためと称して絶対外出してるって、あの先生。今日もそこらへん走り回ってると思うよ。それよりミコトちゃん。今日はこれからどうするの?」


「うん、他の人の家に様子を見てこようかと思って」


「あ、そうそう藍色アイちゃんもあの後熱出して寝込んだんだって。どうもアスナちゃんの風邪がうつったみたい。元気なのはシオリさんとマオちゃんと私たちだよ。シオリさんは家からでない人だからあんまり心配ないけどミコトちゃんは気を付けてね」


「あれ?マオちゃんの心配はしないの?」


「あれは病気になっても自業自得。自ら好き好んで人ごみの中に紛れていこうなんてどうかしている」


「でもまあ、病気の流行っているここにいるよりは安全なのかも。わかんないけど。おばあちゃんはどこかへ出かけたりしないんですか?」


「私は、この辺りを散歩するくらいで十分よ」


「この村の人って庭に花をたくさん植えてるし、散歩するのにちょうどいいですよね。あーあ、私の家もこの辺にあればよかったなあ。そうしたら平日にもみんなともっと遊べるのに」


「この辺に住んでてもそんなに平日に遊んだりしてないよ?」


「えっ?そうなの?じゃあなにしてるの?」


「何って言われてもなあ?特に何も。カズミちゃんが音頭とってお菓子作りやってるぐらいかな?それもやる人限定されてるけどね。私もたまにしか行かないし。だいたい学校で毎日顔を合わせてるんだもの、放課後まで一緒にいる必要がある?」


「そうかなあ、楽しいと思うけどなあ。今日も楽しかったし」


「まあ今日はね。ミコトちゃんの隠れた才能が明らかにされたし」


「荒木家でカラスを飼っていることがわかったし。ん?友達の知らない一面を知るっていうのは楽しいっていうこと?だとしたら長い間一緒にいるから新しい一面を知ることが少なくなって楽しくなくなるっていうことかな?」


「でたよ、得意のミコト理論」


「なに?ミコト理論って?」


「ミコトちゃん、いつも変わったコト言ってるから、私が名付けたの」


「要するに、私の意見は変わってるってこと?」


「まあ、そういうことになるかな?怒らないでね」


「怒ってないよ。と言うより興味深いなあ。昨日カズミちゃんも私のこと変わってるっていってた。そして、人は自分は普通で他人は変だって思ってる、も言ってた。いまエリコちゃんとした話はそれにぴったり当てはまってるな、って思ったの」


「いつもそんな話をしているんだ。道理で二人はウマが合うと思ったよ。で、今日も様子見行くの?」


「うん、帰り道だからね」




ミコトは紅茶を飲み終えると、立ち上がった。


「さてと、今日はありがとう。後片づけ、任せちゃっていい?梯子、そのままにしてるんだけど?」


「ああ、いいよいいよ、そのくらい。今日はいいネタ仕込めたから、私の作文、期待してて」


「しょうがないなあ、それじゃかっこよくお願いね?それじゃおばあさんも今日はありがとうございます。かあくろうお願いします」


「はいはい、かあくろうちゃんと遊びたくなったらいつでもおいで 」



家の住民に別れの挨拶をした後、荒木邸を出たミコトはかあくろうを探したが、辺りにはどこにもいなかった。他の場所に餌を探しに行ったのだろうか?いや、そうではあるまい。満腹になったかあくろうは友達の所に遊びに行ったのだろうと思うミコトであった。


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