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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
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荒木祖母がいい仕事してた

ミコトは埴輪二体を回収し梯子を降りた。近所で友人の呼ぶ声が聞こえたからだ。

「ちょっと、ミコトちゃーん?埴輪はあったのー?こっち来てー」

ミコトが声のする場に来ると、カラスが荒木恵理子にかあかあ鳴いて向かっていた。鞄からミコトはチョコを取りだし、カラスに与える。

「もうこれで最後だよ」



”ペィちゃん、そう伝えてよ。ああ、それとパの行方聞いてみて。私、一昨日たしかにこのカラスがパを運んでるのを見たのよ”


カラスはカアアアアと鳴いてチョコを銜えた。


「鳴いてないときは結構かわいいんだけどね、こいつ」


と言ったのはミコトの後ろに隠れていた荒木恵理子である。



「それで、お探しのモノは見つかった?」


ミコトはリュックの中からたった今回収した新しい方の埴輪を取りだして荒木恵理子に見せた。


「やったね、ミコトちゃん。作戦大成功じゃない!」


ひとまるふたまる。ミコト司令官、作戦大成功。目的のモノを手に入れる。


「うん、それがね。一昨日見たのと違うの。ほら、この埴輪、手の形がコーヒーカップの取っ手見たいでしょ。一昨日のはそうじゃなかったもの」



荒木恵理子は埴輪をじーっと見つめ、そのあとミコトの方を見た。


「ミコトちゃん、やっぱり、目悪くないでしょ?わからないよ、そんな違いよく見ないと。ましてや、カラスが銜えてるときに見たんでしょ?私ならわからないよ」


メガネのフレームを両手でつまみミコトを凝視する荒木恵理子。ミコトはメガネを外し、荒木恵理子に見せる。


「ほら、ちゃんと度が入ってるでしょ?メガネかけないと黒板の字が見えないのは本当だよ」


「うーん、本当だ。それにしては目敏いよね、いろんなことに。見てないようで見てるっていうかさ。それで、どうする?作戦は続行するの?当初の目的は一応達したと思うんだけど?」


「そうだねえ…」



”ちょっと、ペィちゃん?パの行方、ちゃんと聞いてくれた?”


”それがどうも話がわからんでござるよ。確かにパァを連れていったようでござるが、雨の日にいなくなったようで、今朝プゥを見つけて巣に運んだようなのだけど、どうもパァとプゥの区別がついてないようでござる”


”なるほど、雨の日って昨日のことね。あんたたちが自分で動くことはないから、かあくろうが巣でごそごそ動いた時に落ちたと考えるべきね。そうすると、木の回りに落ちている、ということかしら?”



ミコトは何も言わず、再び木の所に戻った。荒木恵理子も戸惑いながらミコトについていく。木の下に着いたミコトはその回りを見回したがそれらしい物体はどこにもない。カラスはかあかあ鳴いている。


「どうしたのミコトちゃん?カラスがもう一つのやつ、この辺に落としたと思った?」


「うん、そうじゃないかって考えたけど…やっぱりないね」



カラスもその場へやって来て、かあかあ鳴いている。鳴き声につられて荒木恵理子の祖母が玄関から出てきた。


「おやまあ、今日は朝からカラスがよく鳴く日だねえ」




ミコトと荒木恵理子はお互い顔を見合わせた。たぶん自分達の鳴き真似も勘定に入れられているぞ、と。


「うん?ばあちゃん、手に持ってるのは何?」


「ああ、これかい?カラスに餌をあげようと思ってね。お腹空いているからあんなに鳴くんじゃないかと思って。あなた達もおあがりなさい、お湯を用意しといたから」


「あの、おばあさん?毎日餌をあげてますか?」


「うんん、毎日ってわけじゃないけど」


「さっきチョコあげたからお腹空いてるんじゃないと思うよ」


「おや?そうかい?まあ試しにあげてみるよ」




荒木祖母は手に持ったクッキーをカラスの前に投げ出した。カラスはクッキーを啄ばむと嬉しそうに鳴いた。


「あれま、かあくろうのやつ、まだ食べるみたいだね」


「チョコだけじゃ量が足りなかったのかな?」


「かあくろうって言うのはこのカラスの名前かい?」


「そうだよ。ミコトちゃんが名付けたの。かあくろうがミコトちゃんの持ってる埴輪を持って行ったので取り戻しに来たの」


「埴輪……どんな形の?」


「ミコトちゃん、見せたほうがいいよ、手っ取り早い」




ミコトは埴輪のペィを取りだして荒木祖母に見せた。


「大きさ・見た目はこんな感じで両手を万歳した形です。見たことないですか?こういうの?」



荒木祖母はミコトの見せた埴輪に目を丸くする。


「見たことあるもないも、今朝庭先で拾ったさ、かあくろうちゃんの落し物だと思って拾っといたの。そうか、ミコトちゃんの持ち物だったんかい。ちょっと待っててな、取りに行くから。ああ、エリちゃんはミコトちゃんを台所に案内してて。もうお湯が沸いてる頃だから。お茶にしよう」


「あああの、まだ私のだと言った覚えは……」

という言葉を聞かずに老婦人は家の中に入っていった。


「いいじゃない?ばあちゃんがそう思ってくれたんなら?それよりちょっと休憩しようよ。予定では一個のはずだったでしょう?望外の極みってもんじゃないの?」


「ボウガイのキワミ?」


「そう、望んだ以上の結果ってこと。ミコト説によれば、もう一体どこかにあるというわけなんだけど、どうする?」


「そうだね。手掛かりがない以上、今日はここまで、って感じだね」


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