埴輪、登場④
やや間があって、気恥ずかしそうな{カラスの鳴き声}が近くで聞こえた。それを聞いたカラスは巣から飛び出し声の主に迫った。カラスが巣を出ていくのを確認したミコトは素早く梯子をかけ登り、カラスの塒へたどり着いた。そこにはミコトが糸を括りつけておいた埴輪とそうでないもう一体があった。
”ん?あんた誰?パ、じゃないよね?”
”フハハハハ、よく気づいた。俺はパピプペポ五兄弟の一人、プゥである。童子よ、我を恐れよ。我を崇めよ。フハハハハ”
”何言ってるのこいつ?パ、はどうしたのよ?パは?”
”パ、パ、パ。どいつもこいつもパ。なぜパばかりをもてはやし、俺をないがしろにする?”
”ハイハイ、話は後で聞くから、とりあえずここを出ましょうね?それとペィちゃん?”
”なんでござるか?急にちゃん付けで呼ぶなんて、気味が悪いでござるな?”
”パはどこに行ったの?パは?とんだ見込み違いだわ。ウソツキ”
”拙者、何も嘘はついてござらん。ヒノミコト殿、そなたは拙者にあなたの兄弟はいる?と尋ねたでござろう?だから答えたのだ、いる、と。プゥはわが兄弟、どこにも嘘はござらんよ”
ミコトはカラスの巣を見回したが他にはそれらしきものは見つからない。
”ちょっとプゥ、あんた知ってるんじゃないの?”
”フハハハハ。教えて欲しければ、我を崇めよ”
”ちょっと、ペィちゃん?何こいつ?あんたの兄弟ってこんなのばっかりなの?”
”ちょっと、プゥ兄者、ヒノミコト殿の問いに応えて欲しいでござる”
”おう、ペィもそこにいるのか?なんだ?この童子に使われているのか?”
”使われているのではござらん。拙者がお願いして我ら五兄弟を集めて貰っているでござる”
”愚かな弟よ、なぜそんなことをする?我らの力は野にいてこそ十全に使うことができようものに”
”兄者こそわからんか!我らが力を発揮すればするほど、我らは人に恐れられ破壊されるやも知らんということが、なぜわからぬ?”
”フハハハハ、兄より優れた弟など存在せぬ!お主は野にいてもたいしたことは出来ぬからな!”
”なに漫画みたいなこといってるの?大体あんた、パかピがいなければ何にもできないんじゃないの?”
”あ!”
”そ、そんなこと言うか?初めて会ったモノに対してそんな無礼な!”
”そ、そんなことないでござる!兄者の力はそれはそれは恐ろしいものでござるよ”
”あ、兄より優れた弟なんていないんだから…”
”何?どうしたの?泣いてるの?モノのくせに?”
”な、泣いてなんかいないんだからね?”
”ちょっと、ペィちゃん?この子、こんな面倒くさい子なの?”
”ヒノミコト殿が兄者のことを馬鹿にするから拗ねたでござる”
”でも本当のことじゃない?”
”いやいや、ヒノミコト殿はプゥの兄者の本当の力を知らないのでござる。我らの力はプゥによって世界に広まるのでござるよ。ゆめ侮ってはいけないでござる”