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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
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友達のうちを家庭訪問③



 学校からの帰り道とは違う道をミコトは歩いた。こっちのアイちゃんはどうなったかな?一昨日の遠足のせいで体調悪くなったみたいだけど、それだけならもう元に戻ってると思うけど、どうだろう?ミコトは道すがら友人の様子を想像した。想像しているうちに、ミコトは友人宅へと着いた。チャイムを鳴らすミコト。やや間があって中から足音が近づいてきた。いつも軽快な音が聞こえるが今日はそうではない。ガチャッ。ドアが開く。


「あら、ミコトちゃん。いらっしゃい。今日も来てくれたのね。でも悪いんだけど、ウチの娘も私もインフルエンザに罹っちゃって。今寝てるところなの。うつると悪いから、今日のところはね」


良く見ればいつもの竹下母の顔色でない。


「あ、そうですか。それじゃあ、お大事に。失礼します」


「ごめんね、ミコトちゃん、せっかく来てくれたのに。何のお構いもできなくって」


「そんな、気にしないでください。おばさんもゆっくり休んでください」


ミコトは丁寧にお辞儀をすると竹下家を出た。竹下母の済まなさそうな顔が眼に残った。これはマズイな、早くパの奴を見つけないと、死なない病気とはいえ苦しむ人が増えることになるぞ。それに、雨が降ったら、ピの作る病気の種が変わってしまう。今度は死に至る病かもしれない!ミコトは内心焦った。友達の母親が病気になっただけなのに。ミコトは急ぎ足になって次の友人宅へ向かった。ピンポーン。ピンポーン。間をとってチャイムを鳴らすと、昨日とは違った、元気そうな声で家の住人が返事をする。



「ハーイ、どちらさーん?」


「日野です。カズミちゃん、元気ー?」


ドアが開くとパジャマ姿の友人がいた。顔色は悪くない。一日で直ったのか?


「おう、ミコトか。まあ入れよ」


勝手知ったる他人のウチにミコトは挨拶をして入っていく。


「それにしてもお前、なんで制服なんだ?今日学校休みなんだろ?」


台所でお茶をもらって二人で一服すると、石川和美はそう切り出した。


「うん、学校は休みだけど、みんなで集まって宿題やってたの。みんなで宿題やるなら制服の時が気分も盛り上がると思って」


「へー、誰の家でやってたんだ?」


「藍色アイちゃんち。あそこ初めていったけど大きいねえ」


「あそこ、家だけじゃなくっておばさんも大きかっただろ?それで、宿題は終わったのか?」


「うん、終わったよ。四人で分担して朝からやってたの」


「終わったのか!すげーな、たった四人で?」


「みんな気合い入れてやったからね、へへ」


「それにしても早すぎだろう、昼からやってんだけどなんだあの量のプリントは?連休全部使っても終わらないぞ!」


「まあ体調悪いとそうなるかな?はいこれ、終わったの持ってきたから。写していいよ。間違えてるところがあったら鉛筆で丸印付けといて。ああ、それと料理の本ありがとう。うまくできたよ」


「こっちこそありがとう。持つべきものは良き友かなってところか。これ持ってきてくれたの?」


「うん、まあ本命はカズミちゃんの様子見だけど。ずいぶん元気そうじゃない?」


「ああ、朝一で診療所に行ったからな。注射打ってもらってきたよ。おかげで昼にはちゃんと動けるようになった。そうそうミコトんちのおじさんもいたな。こっちには気づかなかったみたいだけど」


「あいさつしなかった?」


「うん、目がうつろですごくしんどそうだったから。なんか心ここにあらずって感じだった」


「平治君はどうしてる?」


「あいつはまだ駄目だな。注射を嫌がって診療所行ってないから、まだ熱出して唸ってやがる」「平治君、注射嫌いなんだ。ウチのママみたい。でも注射打ったからって病気が治ったわけじゃないからね。やっぱり、先生のいうとおり連休中は家でじっとしておいた方がいいのかも」


「そういうお前はどうなんだ?何ともないか?両親ともインフルエンザに罹ったんだろ?お前だけ何ともならないって、変じゃね?」


「一緒に暮らしているのにね。私、平熱が高いから風邪引かないのかも」


「平熱……何度なんだ?」


「朝起きた直後に計ったら三十七度だった」


「七度!お前の平熱か!えらく高いな。普通は寝込むくらいの体温だぞ」


「普通は何度くらいなの?」


「まあ、六度五分から七分てところか。平熱が高いからたくさん食べる必要があるのかな?」


石川和美は首を傾げた。


「まあ、注射のせいとはいえカズミちゃんが元気になってよかった。さっきアイちゃんちに行ったら、アイちゃんだけじゃなくってアイちゃんのお母さんもインフルエンザに罹ったんだって」


「すると、インフルエンザに罹ってないのは今日宿題をやるために集まった四人というわけだ」


「診療所の近くに住んでいるんだよ、私以外は」


「ちょっと待って、メンバーって誰?」


「藍色アイちゃんとエリコちゃんとマオちゃん。リンちゃんとアスナは風邪で来れなかった。シオリさんは家を抜けれないって言ってたかな?」


「ほおお、なかなか興味深いメンバーだな。どうしてそうなった?」


「マオちゃんが一緒に宿題しないかって私を誘ってきて、リンちゃんとエリコちゃんがそれに乗って来て、みんなでやろうって話しになって。ああ、風邪引いてない人全員ってことだよ。それでどこでやるって話になった時に藍色アイちゃんが自分ちは広いからみんな入れるよって。結局四人しか来なかったけど」


「それにしても珍しい組み合わせだよな。無口な奴にお喋りな奴、妙に落ち着いた奴。変な奴」


「ちょっと待って!カズミちゃんのなかで私は”変な奴”に分類されてるの?」


「あれ?わかっちゃった?」


「そりゃ、わかりますよ。無口な奴はアイちゃんでしょ、お喋りはマオちゃん、妙に落ち着いたって言うのはエリコちゃんでしょ?残ったのが私になるじゃない、どう考えても」


「ハハッ、そうなるな、必然的に。でもまあ、気にするな。人は誰でも自分が普通で、それ以外の奴は変だって思っているんだから」


「でたよ、カズミちゃんのヘンテコ理論」


「ほら、ミコトだって今、私のこと変だって思っただろ?」


「あ、本当だ」


二人はアハハハと声を出した。


「でも、今日は藍色アイちゃん、無口じゃなかったよ。色々喋ってた。マオちゃんの方がおとなしかったかな?」


「ほお、状況は時に人を変化させるということか。何を喋ってた?宮崎藍の奴」


「んんん、私、茹で立てのジャガイモみたいだって言われた。朝学校に来たらいつも湯気出してるからだって」


「言われた時、いやな感じした?」


「うんん、全然。カズミちゃんだったら私をどんな野菜に例える?」


「そうだなー、私だったら…玉ねぎだな、お前を野菜に例えると」


「玉ねぎ?」


「そう、玉ねぎ。煮て良し、焼いて良し、炒めて良し。モチロン生で良し。台所に必ず備えておきたい一品だな、そうだ、今日はオニオンスープにしよう。ミコトも食ってくか?」


「ああ、私今日は帰るね。もうすぐ雨が降りそうだから。それじゃ。そうそう、プリント写し終わったらアイちゃんに渡しといて」


「わかった。せっかくの連休なのに遊べないのはもったいないけど、しょうがないか」


「ああそうだ、風邪が流行るの収まったら、藍色アイちゃんちでお菓子作りしようよ。私まだ藍色アイちゃんとは一緒になったことないし。そんなこと言ってたよ、アイちゃんも」


「おお、そうか。それじゃ休み明けだな。計画たてといてやるよ」


「その前にちゃんと風邪治しといてね」


「おう、お前も気をつけろよ」


ミコトは二件目の友人宅を出るとやっと家路についた。



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