軍師 山口真央
ミコトは、山口真央がそんな風に考えていたとは思っておらず口ごもって返事した。
「ところがミコトクラブでは、その対象がヒトだけでなく、イキモノやただのモノにまで及ぶのさ。それで、マオちゃんの作戦っていうのはどういうの?聞こうじゃないか?」
「うん、作戦ていうのはね、うまくいくかどうかはわからないよ?ミコトちゃんの情報を基にして考えたんだから」
「うん、それでいいから、聞かせてよ」
「あのね、本当にカラスがミコトちゃんの言うとおり、埴輪を口に銜えて持っていったんだとしたら、そのカラスはミコトちゃんと同じように埴輪に興味があるってことでしょう?だからね、今ミコトちゃんが持っている埴輪を餌にして、そのカラスを釣るの。モチロン釣るっていうのはお魚みたいに餌に針を付けて針をカラスに引っ掛けるっていう意味じゃないよ。この場合、目的は埴輪を持っていったカラスの巣を見つけることだから、そのために埴輪に糸を付けておくの」
「糸?」
「そう、どれくらいの長さになるかわからないけど。カラスの巣は近くにあると思うから、そんなに長くする必要はないと思うな。それでカラスがその埴輪を持っていったら…」
「なるほど、その巣の在り処がわかるっていうわけね、マオちゃんにしては上出来じゃない?ミコトちゃんはどう思う?」
”ペィはどう思う?この作戦成功するかな?”
”悪くないと思うでござるよ?ただ、カラスをだますことになるので拙者としては気が引けるでござるが”
”だます?どうしてだますことになるの?”
”我らは鳥たちに頼んで居場所をかえるでござる。それをわざわざ巣まで運んでもらってそのあとで巣を荒らすとは拙者は感心しないでござる”
”別に荒らすわけじゃないし、あんたの兄弟探すだけだから。って、あんた鳥と話せるならパの奴を連れてきてもらってよ”
”それはできないでござる。パァにはパァの考えがあるのでござろう。鳥たちはただ移ることを頼まれるだけであるから。迷惑はかけたくないでござる”
”カラスに迷惑はかけないようにするから。それとお礼もするからって言ってよ”
”わかったでござるよ”
「いいんじゃないかな?やってみる価値はあると思うよ」
「やたらとため、つくってたねえ?どうしたの?」
「埴輪と相談してたの、やるかやらないか。やってくれるって」
「それでこそ、ミコトクラブのリーダー。私も手伝うよ」
「ありがとう、エリコちゃん。でもなんでまた?埴輪には興味なさそうに見えたけど」
「なに、何もしないで連休過ごすのも退屈だし、作文のネタになるかなって思ってさ」
「あちゃー、作文のネタにされるのか」
「それじゃ、策は授けたから。がんばってね、二人とも。それじゃバイバイ」
「お疲れ様でした、軍師殿」
そう言ってミコトは山口真央に敬礼してみた。荒木恵理子も面白がって真似した。山口真央はあきれ顔だったが、しょうがないなあと言う感じで敬礼し返してウチの中に入っていった。