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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
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埴輪の底力 パの場合




 ミコトは宮崎藍に見送られて宮崎邸をでた。散歩と称してはいるが、実のところ、朝方聞こえていた声の主の回収が目的だ。朝来た道を逆行し、ミコトは診療所にたどり着く。


「確かこの辺で聞こえたと思ったんだけど……」


何も聞こえない。ミコトの体が満腹になったからなのか?


”いや、そうではあるまい。パが歌うのを止めただけではないか?それともそこから離れたか、どちらかだろう。なぜならば”


いつもの心に響く声が聞こえてきた。


”腹いっぱいのそなたにもわらわの声が聞こえるからじゃ”


”それもそうだね。朝、マオちゃんと一緒じゃなければ探せたのになあ”


”だからあの時言うたものを”




結局、目当てのモノは見当たらず、朝よりも車でいっぱいになった診療所の駐車場まで来てしまった。ミコトは父親とともに乗ってきた車を探した。


「さすがにないか……」


朝から診察を待っていたのだからさすがにもう終わっているだろう。先ほど家に電話した時はまだ帰ってないと母親から返事があった。ということは、ウチに電話してから今までの間に父親はここを離れたことになる。それにしても患者が多い、とミコトはみていた。前に真央ちゃんちにいったとき通りかかったがガラガラだった、ような気がする、この駐車場。


 父親の車は見つからないのと同様、ミコトが探していたモノも見つからなかった。




「五分かそこらじゃ見つからないか…やっぱり”あの声”が聞こえてこないとなあ…ねえ、そソナタ?あいつら歌ってないときは何してるの?」


”別に何もしておらぬ。ここにいるペもポもじっとしておるぞ”


”だから、じっとしている間は何してるのか聞いてるの”


”われらをイキモノと同じように考えてもらっては困るぞ、ヒノミコトよ。モノには人のいう時の流れを感じない。動かないでいる時、つまり休んでいる時や寝ている時もイキモノは体の内でさまざまなことを行っておるが、モノはそうではない。止まっているモノは止まったままじゃ”


”どうやったら動き始めるの?”


”わらわはそなたの声に応えて動き出した。わらわと同じように呼びかけてみてはどうか?”


”動いたって言っても、本当に動くわけじゃないけどね。まあ、試してみるのもいいかも”





 ミコトは土偶の声に従ってどこにあるかもわからない埴輪に声をかけることにした、無論声を出さずに、である。一人でブツブツ言っているところを他の人に見つかったら変に思われる、そんな計算ぐらいミコトにでもできる。辺りを見回して誰もいないことを確認すると、ミコトは立ち止り精神を集中させた。


”おおい、この声が聞こえるなら返事してー、パピプペポ五兄弟の一人ー”


何も返事はない。何度か繰り返すがやはり返事は返ってこない。場所が悪いのかと思い、朝方にちょっとだけ”あの声”が聞こえていた場所から離れて再び繰り返してみたが、むなしい結果に終わった。診療所の一番高い屋根の上で、一羽のカラスがミコトの行いをあざ笑うかのように二度鳴いた。


んー、待てよ?確かペは、移動する時は鳥に運んでもらう、そう言ってたな。もしかして、あのカラス…でも待てよ、さっきかあかあ鳴いてたから埴輪を銜えているってことはないよね?カラスはミコトの考えをあざ笑うかのようにもう一度かあかあと鳴いた。



”アカネサス・ヒノミコトよ、もうそこにはいないのではないか?答えがないであろう?”


”そうだね。どこか別のところへいったのかな?呼びかけても返事が全然ないし”







 ミコトが宮崎邸に戻ろうとした時、ミコト達がお望みの”声”が聞こえた。


”我を、呼んだのは、うぬか?”


ちょっと、ずいぶんな発言じゃない?我を呼んだのはうぬかですって?ミコトは声の主の第一声に半ばあきれたが、ペィとは違う言葉使いに面白さも感じていた。


”そう、私の名前はヒノミコト。あなたパピプペポ五兄弟のパなんでしょ?”


”いかにも、我は五兄弟の長男、パァなり。うぬはなぜ我を探す?我の力が欲しいのか、ヒノミコトよ?”


”あなたの力って、病気を治す力のことでしょう?確かにそれも必要だけど、、あなたたち五兄弟を探してたの。ちょっと今どこにいるの?”


”我を探すわけは、やはり病い人を癒すことであろう?それならここにいた方がよい。なぜなら、ここは病い人が集まる場ゆえ”


”どうしてここが病院、病人が集まるところだってわかるの?”


”貴様の目は節穴か?具合の悪い人が集まってくるところと言えば病を治す奴がおるところに決まっておろう?”


”ねえ、ちょっといい?どうやって見ているの?あなたたちは自分では世界を見れないんでしょ?それなのに元気な人と病気の人をどうやって見分けてるの?”


”ほう、われらのことを多少は知っているようだな?われらは近くにいる生き物の目を借りて世界を見ているのじゃ。それ、そこに黒き鳥がおるだろう”



確かにカラスがじっとミコトを見ている。


”それで、あなたは今どこにいるの?近くにペとポがいるんだけど会いたくない?”


”あと二人、特にピィの方はどうした?あの不肖の弟はどこにおる?”


”いや知らない。私も探してるんだけど”


”そうか、ならばうぬには用はない、さらばだ、ハハハハハ!”



高らかな笑い声を残して、埴輪は去っていった。そこにいたカラスが飛んでいったのだからカラスに銜えてもらって移動したのであろう、ちらりとくちばしにそれらしきものが見えた。それにしても、パはここで何をしていたのだろう?パの力は病気を治す力なのだから、病院に来る人を治していたのだろうか?だとすれば、パは口は悪いがいい奴なのではないか?そうミコトは考えた。それにしても、どこへいったのだろう?


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