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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
130/155

いつも通りの食いっぷりです




話を聞きながらもミコトの手と口は動くのを止めない。ミコトの胃袋がそれを要求しているからだ。


「見掛け上、村の人間の数は変わらないけど元からいた人が四割抜けて新しく入ってきた人がその分を補っている感じ」


「私は新しく入ってきた方かな」


「エリコちゃんはずっとここにいた方なんじゃないの?幼稚園からっずっとみんなといるんでしょ?」


ようやく口の中を空にしたミコトが口をきくが、そう言ったあとでまたお結びをほおばりだした。


「うん、そうなんだけど。私が生まれたころに両親が越してきたから」


「へえ、そうなんだ。エリコちゃんはずっとこっちかと思ってた」


ミコトが考えていたことを山口真央が口にしてくれた。




”なるほど、村に歴史あり、という感じでござるな”


”何よ、盗み聞きしてたの?”


”盗み聞きとは何たる言い草。そっちが勝手に話しているコト、聞こえてくるでござる”


”アカネサス・ヒノミコトよ、我らはそういう風にできている、あきらめよ、我らにはそなたの話は筒抜けぞ”


”悪かったわね、盗み聞きって言って。でも、聞いてるなら聞いてるで黙って聞いてて頂戴”


”承知した”



「…というわけで私んちは私が小三の時に引っ越してきたの」


「うん、それはみんな知ってる」


「私はミコトちゃんに話してるの。ミコトちゃん知らなかったでしょう?」


「ああ、うん。知らなかったよ」


「もう、ミコトちゃん、また話聞いてなかったでしょう?」


「いや、聞いてたよ。お母さんが病気がちだから田舎で暮らそうって」


「ああよかった、ちゃんと聞いてくれてた。無表情だったからまたぼーっとしてるのかと思ったよ」


「私、考え事してるとき無表情になってる?」


「なってるよ、ねえ?」


「いや、知らないけど?そうなの?ミコトちゃん?」


「いや、自分ではわからないから聞いてるんだけど?」


首をかしげながら、空揚げをほおばるミコト。


「そうだよ、ラブリーアイちゃんが言ってたから間違いないよ」


「そっちのアイちゃん情報かあ、なら間違いないね。いつも一緒にいるもの」


「ウチの娘の方のアイちゃんは一緒にいないの?」


「お母さん!」


「ああ、こっちのアイちゃんも一緒にいるけど、いっつも物静かだから気付かないんだよねえ」


山口真央が率直すぎるな意見を口にする。


「いいんじゃないかな。マオちゃんやリンちゃんみたいに喧しい人だらけだと教室が大変だよ、うるさくってさ」


荒木恵理子が混ぜ返した。


「そんなことないよー。私うるさくないよねー、ミコトちゃん?」


突然そんな問いを投げかけられてモグッ?っと首を傾けるミコト。


「もお。ミコトちゃん、そんなにほおばって食べてないで」


ミコトはもぐもぐを繰り返し続けて飲み込むと、口を開いた。




「んー、いいんじゃないかな?うるさくなかったらマオちゃんじゃないし、静かでなかったらアイちゃんじゃないよ」


「しっかりしてるのに時々ぼーっとしてないならミコトちゃんじゃないってことで」


「お昼時になってもお腹が鳴らないならミコトちゃんじゃないってことで」


「たくさん食べなかったら私じゃないし。まあそういうことで」


そう言って再びミコトはお結びを食べだした。


「ミコトちゃん、それいくつめ?」


「いくつめかなあ、数えてなかったよ。みんなあんまり食べてないけど、お腹すいてなかったの?」


「ミコトちゃん、それ七つ目だよ。たくさん食べるなって思って数えてたの」


「そんなに食べてた?ごめんね、みんなの分まで」


「いや、おにぎり二つ三つとオカズ食べたらお腹いっぱいになるけど」


「あら。これじゃ足りないかしら?もっと作ってこようか」


「ああ、大丈夫です。あんまり食べすぎるとお腹いっぱいになって眠くなっちゃうので」


「えーと、ミコトちゃん?まだお腹いっぱいになってないの?」


「うん、まだ大丈夫」


「ミコトちゃんはケンタンカだねえ。お父さんもそうなのかしら?」


「ケンタンカ?」


「ああ、健啖家ってなんでも好き嫌いなくたくさん食べる人って意味」


「苦いもの以外なら何でもたくさん食べます。それとうちの父は少食の方だと思います。ケンタンカなのは母の方だと思うんですが、家ではそんなに食べていません。父の話だと、母は昔はすごく食べてたって言ってましたけど。大人になったら変わるんですかね?」


「さあ、どうかしら?食べる量はわからないけど、体型ならほら、ご覧の通りよ」


宮崎藍の母親は自分の胸をバンバンと叩くと大声で笑った。


「いやだなあ、私、大人になったらこんなになるのかなあ?」


「なに、食べるもの減らして運動すれば大丈夫よ。お母さん、ちょっと運動不足だから」


「ちょっとどころじゃないでしょ?全くもう、そんなに太ってたら病気になっちゃうよ」


平日は何をされてるんですか?というミコトの問いに宮崎母はこう返した。


「おばさん専業主婦だからねえ。ウチの中でうろうろしてるわよ。もちろん家事のことでね」


「お散歩とかはしないんですか?神社までいけばけっこういい運動になりますよ」


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