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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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担任先生は普通だよね?

「それで、日野さんは何してたの?」

と問われ、ミコトは我に返った。


「眼鏡を新しく作りなおしたので、それを取りに行った帰りです」

「あら、また目が悪くなったの?どうしてかしら?」


担任・宮本は不思議がった。この子はそんなに本を読むタイプじゃないしねえ。それとも家で読んでいるのかしら?教科書の内容はよく覚えてるけど、よく授業中にぼーっとしてるしなあ。たまに集中してる時があるけど、その時目を酷使しているのだろうか?などと考えてみるのであった。


「黒板の字が読めないことはない?」

「それは大丈夫です。先生が字を大きく書いてくれるので」

「うちのクラス、人数少ない割に、メガネ率高いからね。それにしても、日野さんは私といっしょで運動するのが好きなのに、メガネかけてるのね?」

と担任・宮本は思い切って聞いてみた。


「実はおうちでガリ勉してるとか?」

「ガリ勉ってなんですか?」

「ガリ勉っていうのは、机にかじりつくように、がりがりと長い時間勉強することよ。あんまり効率的な方法とは思えないけどね。大体、長時間椅子に座っても、物覚えが良くなるとも思えないしね」

ミコトは前から疑問だったことをこの際聞いてみることにした。

「先生?」

「なあに?日野さん」

「どうして先生は、体育の先生にならなかったんですか?先生みたいに運動神経のいい人なら体育の先生だけじゃなくって、いろんなスポーツ選手になれたんじゃないですか?」

担任・宮本は腕を組んでちょっと考えてからこう言った。

「そおねえ、私、運動も好きだけど、人にものを教える職業に就きたかったの。運動は趣味だけにしたかったの。大体、女のスポーツ選手ってもう少し体が大きくなくっちゃ、たいして有名にはなれないわ。まあマラソン選手は別だけどね。走ることに根つめるのもいやだしね。日野さんは女性アスリートになりたいのかな?」


要するに飽きっぽいのよ、と担任は言ってのけた。飽きっぽいのに、教えることには飽きないのかなと思ったが、ミコトはそれを言わなかった。ミコトが黙っているのをみて、担任・宮本は言った。


「私、もう少し走るけど、良かったら日野さんも一緒にどう?」

ミコトは、柔軟性では負けないが、担任の足の速さについていく自信が全くなかったし、暗くなる前に家に帰り着きたかったので、担任の申し出を丁寧に断った。

「そう、わかったわ、それじゃ気を付けて帰ってね。また明日、学校で会いましょう。じゃあねえー」

と最後に軽いノリを残して彼女は走り去って行った。立ち話が適切な休憩時間になったのか、軽やかな足取りであった。また明日、という言葉を聞いて、ミコトは家に帰る気になった。カズミちゃん達のお菓子の出来栄えは、明日聞くことにしよう。何より暗くなってから家に帰る直前の坂道を登るのは絶対避けたかった。


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