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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
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よそのおうちの昼ごはん




ミコトが立ち上がろうとした時、部屋に女性が入ってきた。手には宮崎藍が運んできたのと葉比べ物にならないぐらいの大きさのお盆が、大量のお結びを乗せてている。


「みんな、いらっしゃい。御苦労さま。お昼ごはんでも食べてゆっくりしていってね。アイ、まだおかずがあるから運んできて頂戴な。ああ、お客さんは働かなくっていいから、ゆっくりしてて」



話から察するに宮崎藍の母親であろう。宮崎藍は、ハーイと返事してまた部屋から出て行った。

残った三人は揃ってお邪魔してまーす、とあいさつした。


「エリコちゃんとマオちゃんはよく見かけるけど、えと、ヒノ、ミコトちゃんは父兄参観以来かしらねえ。初めて家にきてくれたね。どうぞごゆっくり」


ミコトは授業参観以来となる宮崎藍の母親をまじと見た。顔は確かに宮崎藍に似ているが、体つきは荒木恵理子の母親と言われてもいいくらい恰幅が良かった。アイちゃんも将来こうなるのかしら?そんなことをミコトは考えていた。



「おばさん、今日はみんなで宿題をしに来たんです。なのでちょっとゆっくりはできないよ」


「ああ、そうだったわね、エリコちゃん。娘もそんなこといってわね。それじゃ、ご飯食べて元気になって宿題おわらせてね。たくさんおにぎり作ったけど、これで足りるかしら」


「ひぃ、ふぅ、み、よ…うわ、二十個もある。お家にだれかまだいるんですか?」


「ううん、あなたたちと私の五人よ。あと何人か来るって聞いたのでたくさんご飯炊いたんだけど、一人四つは多かったわね」


「大丈夫よ、おばさん。ミコトちゃんはおにぎり十個ぐらいぺろりと食べちゃうから」


「あらそうなの?だったらうれしいな。遠慮せずたくさん食べてね」


「おばさん、ミコトちゃんの食欲を甘く見たらだめだよ。この前の遠足でもすっごく大きなおにぎり、八つも食べてたんだから」


「二つ人にあげたから六つですー」


すかさずミコトが訂正する。


「でもお弁当の中に八つ入れてたってことは、それだけ食べるつもりだったってことでしょ?あのときのおにぎり、これよりも大きかったから十個くらい食べられるよ」


「まあ、否定はしませんけど?」


ミコトが澄まして返事をするものだから、荒木恵理子と山口真央は噴き出した。それにつられてミコトも笑った。娘の友達が楽しそうに笑っているのを見て、その場にいた唯一の大人も楽しくなって一緒に笑った。



 笑い声の響く部屋の中に宮崎藍が戻ってきた。今度は大きなお盆の上にごはんのオカズがてんこ盛りにのっている。


「何みんなで笑ってるの?」


「あ、戻ってきた。いや、ミコトちゃんがおにぎり十個ぐらい平気で食べられるっていうからね」


「あの遠足のお弁当みたらそれくらいできるよね、ミコトちゃん?」


宮崎藍も澄まし顔でさらっと言うから子供三人はまた噴き出した。子供たちが笑っている姿を見てこの家の母親は安堵する、うちの娘は家では無表情だけど学校ではちゃんと笑ってるのね、良かった、と。


「さてさて、料理がそろったことだしお昼にしましょうか?おばさんももいっしょに食べていいわよね?」


子供たち三人は、ハイ、モチロンです、と返事をする。


「それじゃ、みんなでいただきます!」


ミコトの音頭で手を合わせて食事の挨拶をする。


「うわお、空揚げに出汁巻き玉子に野菜炒めにフライドポテトに…」


「ちょっとミコトちゃん、、興奮しすぎ!」


「だって、空揚げはてんこ盛りだし、出汁巻き玉子はふっくらしてるし、野菜炒めはつやつやだよ!どれもおいしそー!」


「たくさん食べてね、みんな。遠慮なんかしたらもっとたくさん食べさせるんだから」


こうして五人でがやがやと昼食をとったのであった。



「ミコトちゃんちってお肉食べれないって嘘だよね?今モリモリ食べてるもん」


「そうなの?宗教上の理由で?それとも家族にお肉のアレルギーがあるとか?」


「いや、正確に言うと、お肉は家では料理しないし食べません。給食や、今日みたいにご馳走していただける分には全然問題ありません。というか、お肉大好き!」


「あらー、そうなの。それじゃ空揚げたくさん食べてって。それにしてもあそこの神社に神主さんがいらしてきて本当に助かるわ」


「何か困ったことでもあったんですか?」


「いやね、あそこに人がいないとあの辺り人気がなくなるでしょ?なんか薄気味悪かったのよね、前の神主さんが亡くなられてから日野さんが来るまで間があったんだけど、その間良くないことが続いてね」


「良くないことって何ですか?」


「事故とか、流行り病とか」




”ちょっと、ペィ。聞いてる?これもあんたたちの仕業なの?”


”聞いてるでござるよ。我らがこの地に来たのはつい最近のこと。これは人の言葉でいう、濡れ衣、というやつでござる”


「ちょっと、お母さん。ミコトちゃんに変なこと吹きこまないでよ」


「いや、アイちゃん。私この村に来てまだ一年経ってないし、全然知らないから、教えて欲しいな。アイちゃんちって昔から住んでるんでしょ?」


「うん。うちとシオリさんちは昔からこの辺に住んでるの。昔っから住んでる人は農家が多かったんだけど、ほとんどやめちゃったの」


「やめた人はどうしちゃったんですか?」


お結びを食べていたミコトは口の中のモノを飲みこんでしまってから質問をした。


「農家っていうのはね、土地をたくさん持っているの。それでお家を作って人に貸してるのよ」


ミコトは、なるほど、と言う代わりにコクコクと頭を振った。口の中がお結びでいっぱいだったからだ。


「中には土地を手放しちゃって町へ出て行った人もいるわね。うちにもそういう親戚がいるの。お盆や正月にはそういう人がたくさん来るのよ。うちはそういう人たちの受け皿になっているの」


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