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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
122/155

土偶、初めての外出



 朝八時半、出発の時刻になった。ミコトは土偶と埴輪の入ったランドセルを抱えて車に乗り込む。父親からは、そんなに荷物があるの?といぶかしがられたが、ホームワークがたくさんあるのと澄ましていった。嘘は言ってない、確かにホームワークがたくさんランドセルの中にあるのだから。


「それじゃ出るよ。ランドセルは足元に置いて、シートベルトして、出発します」


いつもだともっと出発しまーす、と元気に声を発するのだが、まだまだ体調不良のようだ、そのようにミコトは見てとった。




 揺れる車の中で、”あの声”がミコトの脳内に響く。


”アカネサス・ヒノミコトよ”


”どうしたの?ソナタ”


”この乗り物は車というのか?どうやって動いているのだ?”


”えーと、車の構造は良く知らないけど、車の中にエンジンっていうのがあってそれが動いてタイヤを回しているんだったんじゃないかな”


”ほう?えんじんとな?”


”エンジンとは何か?って聞かれてもわからないからね、言っておきますけど”


”まあそうだろうな”


”あ、私を馬鹿にした発言かな、それは?”


”馬鹿になどしておらぬ、正しくわかっておるだけだ。現に、えんじんのこと、分かっておらぬだろう?それにしても、人も常に新しきものをつくりだしておるのう。この乗り物はいつくらいにできたのか?”


「車っていつくらいにできたかなあ?」


娘の独り言に父親が答えてくれた。


「車は二十世紀初頭に大量生産するようになったんだよ。それから車のために道を舗装するようになったんだよ」


「へー、パパ物知りだね」


「そりゃあ、ミコトより何十年も長く生きてるからね」


「じゃあ、エンジンって何?」


「おっと、今度はエンジンか。ミコトの好奇心は幅が広いなあ。エンジンっていうのは、油を自分の内側で燃やして爆発させその爆発力を前へ進む力に変えるモノやカラクリの名前のことだ」


”なるほど、パパの説明はわかりやすい”


「だって。褒められてるよ」


「えっ?誰から?」


「私の内側の声から」


そう言ってミコトは誤魔化した。いつもだったらこういうことを言うと父親は食いついてくるのだが、今日はまだまだ体調不良のようだ。へえそうと言って黙ってしまった。そして黙ったままの状態で診療所へと着いた。父親は娘といっしょに車を降りると、療養所に入る前に口を開いた。


「お昼になる前にウチに電話して。そしたら迎えに行くから。ちゃんとその宮崎さんところの場所をよく覚えておいてね」 


「わかった。これから山口さんちに行くんだけど、挨拶していく?」


「行く、と言いたいところだけど、風邪うつしちゃまずいからやめとくよ。ミコトも気を付けるんだぞ。パパと一緒にいたっていうことは風邪がうつっているかもしれないんだから、何事も無理せずにな」


「わかった、それじゃあパパも、我慢してお注射打ってもらってきて。じゃあね」




ミコトは父親に手を振ると、踵を返して療養所を出て行った。


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