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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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変なモノは、ほったらかされてる・・・


 ミコトの家は山の中腹にあるので、自転車を使うと「行き」はスイスイ、「帰り」はゼーゼーということになる。よって、「行き」だけでも楽しまなきゃ損だわ、というのがミコトの考えであった。よって、自転車で家の前の下り坂を降りていくとき、大声で

「いやっほおおおおーーーいー」

と叫ぶのが常であった。


 朝は曇っていたが、昼過ぎから晴れてきて、春の日差しが降り注いでいた。空気の壁を突き抜けて、ミコトは漕がずに山を降り、一面がまだ耕されていない水田の中にある農道を進んでいった。農道の中途にある祠までペダルを漕がずに進むことができた。ミコトはいつもこの祠まではペダルを漕がないで来る。そして自転車を降りて祠に向かって一礼したあと、再び自転車に乗って目的地へと進むのであった。

農道が終わると、車の多い通りに入った。ミコトの目的地である{眼鏡・時計・貴金属販売のフクロウ堂}といって、小学校のすぐ近くにあった。なので、ミコトは通学路を、徒歩でなく自転車で向かっているのであった。らくちん、らくちーん、ミコトはご機嫌な感じでペダルを漕いだ。なにせ、走るより速く、しかも楽に進むのだ。楽々と、早々と、ミコトは{フクロウ堂}にたどり着くと、先日受け取り損ねた商品を受け取って、足早に店を出た。


 店が遠くなったところでミコトは一息ついた。ハアー、これからどうしよう?カズミちゃん達がお菓子つくるっていってたっけ?もうできあがったかな?でも今頃いったら食べに来ただけって思われそうだし、やだなあ。などと思っていたら、背後から声を掛けられた。


「日野さん、何してるの?」

真っ赤な全身・腕と足の外側に白いストライプの模様のジャージ姿でランニングをしていた担任・宮本であった。相当走っていたらしく額の汗が流れ落ちていた。にもかかわらず呼吸が乱れていなかったのは、この人の趣味が体を鍛えることだからだ、そうミコトは見てとった。担任・宮本は大きく息を吸って、それから大きく吐いて、その動作を三度繰り返して、ミコトに近づいた。

「あら、日野さんもバレット愛用者なのね。いいよねえ、このジャージ、着心地よくって、汗いっぱい吸ってくれて、しかも重くならないの。最高よね?」

と同意を求めて来た。バレット社の社員がここにいればお礼を言いたくなったであろう。ミコトはそこまでジャージの良し悪しはわからなかった。スポーツ店の店員に勧められるまま、桜色の全身に白色のストライプが入ったタイプを、父親の色違いのものと同時に購入したのであった。だからジャージの値段がその品質に相当するだけのものであったことをミコトは知らなかった。しかし、その着心地には満足していたので、担任の問いかけに同意した。

「先生はトレーニング中ですか?」

「うん、空いた時間に体を鍛えるのが趣味だからね。お昼ご飯食べたあと、ジムにいって筋トレして、それからランニング」

ミコトは、体を冷やさないように柔軟運動をしながら話をする担任を見た。その体は、やや小柄だが、柔軟性に富んでいて、屈曲すれば頭が膝につくほどだった。開脚すれば百八十度以上は開く、とは授業中に言った本人のセリフであった。そのたぐいまれな柔軟性と日々のトレーニングのおかげで、あと二年もすると三十路の仲間入りをするにもかかわらず、児童の保護者達からは、二十代前半にみられ、称賛の嵐が沸き起るのであった。もっとも、児童達、特に男子達からは、二十の前半だろうが後半だろうが関係なく“おばさん”のカテゴリーにいれられているのだった。またトレーニングのし過ぎからか、婉曲に言うと胸のふくらみが平均よりあまりなく、率直に言うと胸が小さいので、そのことも男子達のからかいの対象となるのであった。


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