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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
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いちいち面倒なやり取りだった




「雨と病気。何か関係があるの?」


ミコトは土偶の返事を待った。ある、と重々しく返事をする土偶。いったいどんな関係が?




「パピプのピは病を創りだすのだが、それをツクリカエルキが雨なのじゃ」


「ツクリカエルキってなに?」


「病を新しく作り出すのに必要なきっかけ、機会」


「タイミングってこと?」


「”たいみんぐ”とはよくわからんが、そなたがわかるコトノハで理解すればよい。ともかく、明日は雨になるから、学校に行くのなら雨除けを何か持っていくがよい」


「えーと。聞きたいことがいくつかあるから順番に言うね。雨除けって傘ってことでいいのかな?」


「傘、とは何か?」


「傘とは、これだっ!」


ミコトはいつも玄関に置いてある黒い、大きなこうもり傘を念じた。すると目の前に念じたものが現れる。夢の中とは便利なものだ。


「これが傘。これがあれば雨の中も歩いて出かけられるの」


「どう使うのか、その棒のようなもので雨が避けられるのか?」


ミコトは傘を開き、土偶の目の前でそれを差して見せる。


「なるほど、人の世も進んでおるというわけじゃな。それで聞きたいことの続きはなんじゃ?」


「明日は朝から雨なの?」


「いや、昼間は曇りだ。夜から雨になるであろう」


「そうかあ、昼間は大丈夫なんだね。ああそれと明日は学校はお休みだから」


「む?明日は確か金曜日で平日という日ではなかったか?」


「うん、いつもはそうなんだけど、学校休む子が増えたから明日休みになったの。ああ、それとね、来週はゴールデンウィークっていって平日でも休みの日になるから」


「ヒトのつくりし都合には、モノには合わせる義理もなし」


「それはそうだ。それでね、明日学校が休みになるからパピプを探そうと思うんだけど」


「昨日はやつらを探さなかったのか?」


「だって授業があるんだよ。平日には探せないよ」


「ならば明日は探せるというわけだな、良い心がけではないか」


「うん、探すは探すんだけど、一日中外を歩き回るわけじゃないの。朝から友達の家に行ってみんなで宿題して、それが終わったら病気になった子たちのお見舞い。探すのはその移動中ってことになるんだけど。ねえ、ソナタ、一緒について来てくれない?あなたあいつらの声遠くまで聞こえるんでしょ?私だとどうやら五メートルくらいの近さじゃないと聞こえないみたいの。かばんの中に入れて持っていきたいんだけど、どうかな?あなた、私を通じて世界を見聞きできるんでしょ?私と一緒にパピプを探してよ」


「そうか、わらわに外の世界を見せたいというのじゃな、よかろう、ヒノミコトよ」


「ちょっと、趣旨がちがうでしょ。目的はパピプを見つけることで、外を見物することじゃないからね」


「目的は違えども、やることは同じじゃ。ところで、ヒノミコトよ、先ほど”ごめえとる”と言っておったが、”ごめえとる”とは何か?」


「あれ?長さを測る単位、まだ教えてなかったっけ?今の私とソナタくらいの長さが一メートルぐらいかな?五メートルはその五倍」


「長さの物差しなのじゃな、”めえとる”とは。なるほど、それでめえとるとは何を基にしてつくられた?」


「え?」


「え?ではない。長さや重さのはかりは人を基にして作られているであろう?めえとるとは何を基にしてつくられておる?肘か?腕か?それとも背丈か?いずれとも異なるようであるが人の体を基にしてつくられたものではないのか?」


「ごめん、そこまで知らない」


「ではまた問おう。重さの目安は何と呼ぶか?」


「重さの単位はグラムとかキログラムとかだけど、何を基に作ったかは知らない」


「そなたはまだまだ子供じゃな、ヒノミコトよ」


「わかってるよ、だから学校行って勉強してるの。それじゃ、明日お出かけするよ。ちゃんと見つけてね」


「断わっておくが、わらわが探せるのはそなたが見聞きできるものだけじゃぞ」


「あれ?そうなの?ソナタって一キロぐらい私と離れてても私のことがわかるんじゃなかったっけ?ああ、一キロっていうのは一メートルの千倍の長さのことだからね。一キロメートルのことだよ」


「わらわがわかるのはそなたのことであって、そのたのことはわからぬぞ。そなたは特別なのじゃ」


特別、と言われて悪い気はしないミコトであった。


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