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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
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ごちそうさまからおやすみまで



 食事が終わり、二人はご馳走さまの挨拶をした。食器の片付けも終わり、父娘はお茶を飲む。ミコトは今日あったことを父親と話した。


「そうそう、校長先生が、パパにお礼を言っておいてください、って言ってたよ」


「それ、いつ頃?」


「お昼御飯の時。校長先生が六年生のところに来て、一緒にお弁当を食べたの」


「校長先生はどんな人だった?」


「うーん、そうだねえ……あんまり面白みがないかなあ。ああ、それと、前のウチの神社の神主さんと仲が悪かったみたい」


「どうしてそう思うの?」




ミコトはお茶を啜って一息ついた。


「うん、遠足で倒れる子供がでたのは、前の神主さんがウチの神社を休憩所として使わせてくれなかったからだって言ってたよ。平静を装っていたけど、口調は怒ってた」


「ミコトはどう思う?」


「うーん……前の神主さんのことは知らないんだけど。今日、神社で休憩を取ったのに倒れる子供がでたのは、この遠足に無理があるから、じゃないかなって思うな」


「そうだね。公務員っていうのは一度決めたことを変えるのは、なかなかできないものだからね。でも、それは校長先生だけのせいじゃないよね」


「それはそうだろうけど。宮本先生も、あの校長先生と教頭先生嫌いみたいだよ」


「おやおや、宮本先生にも嫌われていたのか、あの二人は。佐々木先生も帰りの車で、散々愚痴を言ってたよ。おじさんは嫌われる運命なのかなあ?」


「パパは大人気だったじゃない。一年生の担任の先生も、目がハートマークになってたよ」


「え?そうだっけ?それは気が付かなかった」


「モテル人は大変だね」


「ミコトの方がよっぽどモテテ.たじゃないか。ちっちゃい子供達に囲まれて、すごく楽しそうだったけど?」


「うん、すごく楽しかったよ。私、小さい子と遊ぶの、好きみたい」


「そうか、良かった」



何が良かったのか分からないまま、ミコトは父親から別なことを聞かれた。


「モテルといえば、ケイジ君もモテテたねえ」


「そうだね。五年生の女の子が取り囲んでいたよ」


「ミコトは囲みの中に混ざらなかったの?」


「どおして混じる必要があるの?アイツとは毎日学校で会ってるし、話もしてるし」


父親は、娘の内心を読み取った。そして目を細めた。


「そうかい、そうかい。それじゃ、お風呂の準備をするから、猫達と遊んでおいで」





 夕食後のミコトの日課は、猫達と三十分程度遊び、その後、三十分お風呂に入って午後八時過ぎにはおやすみなさい、だった。しかし十日ほど前に父親におねだりして録画機を買ってもらったため、火曜日の八時は前日に録画した人気ドラマを見るのが日課になり、就寝は午後九時過ぎになるのであった。昨日は今日の遠足のために早く寝てしまった。一日遅れだが、とにかく見るのだ。とりあえず、友達のお勧めドラマなのだ。タイトルは{恋物語はゆっくりと}というのだ。風呂上がりのミコトは、湯冷ましついでにテレビの前に座った。主演俳優は、今ドラマ界の帝王と呼ばれる連城結城というのだそうだ。二枚目演技派俳優で、ここ五年彼の出るドラマは外れたことがないのだそうだ。以上の情報は、クラスのドラマ評論家である竹下愛から流れていた……。今日は第四回。登場人物もあらかた出ており、人間関係描写も終わり、そろそろ物語が動く頃だ。と、思って見ていたら、主人公がヒロインに突然キスをした。ミコトは両手で目を隠し、指の隙間からのぞき見た。えー、どうしてそこでキスシーンがあるの?びっくりしちゃったー。パパと一緒に見てなくってよかったー。ミコトはドキドキしながら最後まで見終わった。居間から出て自分の部屋に戻ろうとすると台所で話声が聞える。今日はじめて見る母親の姿だ。


「ママ、体、大丈夫?」


「あら、ミコト?まだ起きてたの?」


「ママは風邪と戦うため、栄養を補給中さ。パパの特製お粥でね」


「今日は何食べたの?」


「パパの作ったシーフードカレーライス。ピーマンが乗ってた。意外とおいしかったよ」


「そう、おいしかったの。ママはまだ味が分からないなあ」



母親はそう言ってお粥を啜った。心なしか顔が赤いように見える。


「ミコト、あなた顔が赤いわよ。熱があるんじゃないの?」


「昨晩、今朝と測ってみたけど、三十七度超えてるのが平熱なんだそうだ。顔が赤いのは風呂上がりだからじゃないのかい?」


ミコトは顔が赤い理由を言わなかった。ミコトは両親にお休みの挨拶をいって部屋に戻った。部屋に戻ると、二匹の猫達はすでに自分の巣籠に入りこんで寝息を立てていた。ミコトも猫達に習って自分のベッドに潜り込み、自分に居心地のいい姿勢を見つけると、大きく息を吸って、吐いてまた吸ってまた吐いて、吸う息も吐く息も段々小さくなっていき、あるところで落着くとともにミコトの意識は溶けていった……





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