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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
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埴輪のパピプペポ

武漢の新型肺炎が猛威を振るいつつあります。うがい、手洗い、人込みをなるべく避ける・・・人の知恵で対抗しましょう!




 ミコトが再び神社に戻って来たのは二時間後となる午後六時であった。体力に自信があるミコトでも、一日歩きっぱなしではさすがに疲れる。でもまあ、今日の収穫は、二つの埴輪、ペィとポゥ、だ。土偶のソナタに合わせたらなんという顔をするだろうか?まあ、モノだから顔は変わらないか。だいたい、埴輪と土偶って何が違うんだろう?ミコトは二つの違いを考えながら家に入った。



「ただいまー」


玄関を開けると、朝からの予定通り、カレーの匂いが漂っていた。台所へ入ると、父親がエプロンをつけて料理をしていた。


「どうしたの?そのエプロン、似合ってるよ」


「これかい?さっき買ってきたのさ。先生とアイちゃんを降ろした後で買い物に行ったんだよ。あの佐々木先生は、全然先生っぽくないね。大学生みたいだったよ」


「佐々木先生は今年から先生になったんだって。宮本先生が色々教えているみたいだよ」


「学校の先生も大変だねえ……教える側も、教えられる側も」


父親はため息をついた。帰り道で何かあったのだろうか?


「もうちょっとでできるから、そのリュック、置いてきなさい」


わかったー、と返事してミコトは自分の部屋へ行く。リュックをベッドに置き、机に上に置いておる土偶に話しかける。






“ソナタ、あなたの仲間を連れて来たわよ”


ミコトは胸ポケットにしまっていた指先大ほどの大きさの埴輪を取り出した。


“姉様!”


“おお!そなた達は……誰だっけ?”


“姉様、我らです。ペィとポゥです。お忘れですか?”


“……おお、ペとポか。久しぶりじゃのう。よくわらわのことがここにいると分かったのう?”


“こちらのヒノミコト殿に教えられたのです。姉様がこちらにおられることを”


“他の兄弟達とは一緒ではないのか?”


他の兄弟?こんなのに兄弟がいるのか?まさかそいつら探しに行けって言わないよな?


“ねえ、ソナタ。こいつら、まだ兄弟がいるの?”


“そうじゃ、彼らはその昔、パピプペポ五兄弟といって、いにしえの人に恐れ敬わられていたのじゃ”


“パピプペポ……変な名前。ここにいるのはペとポ、だからあとパとピとプがいるわけね”


“そういうことじゃ”


“いにしえの人に恐れられたって何したの?ペィなんて、人をただ疲れさせるだけだし、疲れるのなんて、

体を動かしたら疲れるのなんて当たり前じゃない?ポゥに至っては保つ力、って何なの?意味が分からない。別に全然恐れ敬われないんだけど?”


“ヒノミコト殿、我ら二つのチカラはそうかもしれぬ。だが残り三つのチカラははるかに我らを凌駕するのでござる”


“ヒノミコトよ、この兄弟のチカラを侮るなかれ”


“へえ、どんな力を持ってるの?”


“ペとポについては、もう聞いて知っているようだな。この兄弟のチカラはヤマイのチカラなのじゃ。そな

た、昨日わらわに聞いておったな、人はなぜ病になるのか、と?ヒトに限らず、イキモノは変わるきっかけとして病になるとわらわはいった、覚えておるか?”


“ああ、そんなこと言ってたね”


“パピプペポ五兄弟はそのきっかけを増やすために作られたのではないか、わらわはそう思っておる”


“姉様、って呼ばれているのはどうして?”


“それは、その昔、我ら五兄弟が壊されそうになっていたところを、この方がヒトを使って助けてくれたからでござるよ。それで、我らはこの方に敬意を払っているでござる”


“へー、モノなのに、モノを助けたりするんだ。それで他の兄弟達はどうしているの?”


“うむ、わらわもそれが気がかりじゃ”


“どうしてソナタがそんなことを気にするの?”


“うむ、この兄弟のうち、ピはヤマイのもと、そなたのパパが言っておったウイルス、というものを作りだすチカラを持っているのじゃ。ピとは、扉、すなわち門扉を意味する”


“門扉?”


“変わるきっかけとしての入り口、と言うことじゃ。また病に倒れ悲しむの悲、の意味もある。こ奴が作り出したウイルスを打ち破るの力を持つのが、パ”


“パ?”


“そう、病を打ち破る、破、と言う意味じゃ。パとピが近くにいれば大したことはないのじゃが……”


“ウイルスを作ってもそれを打ち破ってしまうからね。それで、プ、は?”


“プは、ピが作ったウイルスを遠くまでまき散らしてしまう、風の役割となる。また、パの力を広めることもできる。病が広がるかどうかはこのモノによって決まるのじゃ”


“なるほど、風邪の風っていう意味なのね。でも、どうしてソナタがそんなこと気にするの?”


“ピのチカラは強力じゃ、アマタのイキモノが倒れていった。統べるモノを見守るモノとしては見過ごせない”


“どうして、壊させなかったの?そうすれば話は簡単じゃない?”


“モノは、モノである限りそのモノであり続けたいのじゃ。それがどんなモノであろうとも同じことなのじゃ。一たびそのモノのカタチが壊れてしまえば、そのモノはそのモノでなくなる、分かるか、ヒノミコト

よ”


“つまり、壊れることはそのモノが死ぬことってこと?”


“そういうことじゃ”


“ふーん、優しいんだね、ソナタは”


“優しい、とは何か?”


“え、と、優しいっていうのは……自分以外のヒトとかモノのことを考えることが出来て、そのヒトやモノが十分にそのモノのチカラを発揮できるようにしてあげる態度、のことかな?”


“態度、とは何か?”


“態度は、感情が表面に現れてること、かな?”


“そうでござるよ、ヒノミコト殿、姉様は優しいのでござる”


“へえ。ペィは、優しい、が分かるんだ”


“もちろんでござる。我は長らくヒトと関わってきた故”




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