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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
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埴輪の底力 ぺとポの場合



 坂道を遡上していったミコトは、五・六年チームを見いだした。やたらノロノロ動いていると思ったら、五年男子が六年男子に肩を持たれて歩いていた。更に、六年担任・宮本は竹下愛を背負って歩いていた。六年担任。宮本が持っていた荷物は五年担任・佐々木が担いでいる。


「ほら、日野さんが迎えにきたよ。神社まであと少しだからがんばって!」


「あと五分ぐらいで神社に着くよ、そしたら休憩できるから、それまでガンバレ!」


ミコトに励まされた五年の野郎どもは少し元気が出たらしく歩く速さが増した。足取りが変わらないのは五年担任・佐々木だ。


「佐々木先生、大丈夫ですか?私、荷物持ちますよ?」


「あーりーがーとー、ひのさーん……」


ミコトは荷物を受け取ると、六年担任・宮本のところに駆け寄った。


「先生、アイちゃんどうしたんですか?大丈夫、じゃないみたいですね」


「ああ、ミコトちゃん。大丈夫…だよ…ちょっと疲れただけだから……」


小声で話す竹下愛は明らかにくたびれている様子だ。



「歩きながらチョコ食べて、チョコっと元気が出過ぎて張り切り過ぎたみたいよ」


うーん、宮本先生、パパみたいなことを言ってる。


「アイちゃん、あのすっぱーいアメ、食べなかったの?」


「うん、一つ食べたけど、酸っぱすぎて一つで止めたの」


「ごめんね、私がペロリンチョコ食べて見せてって言わなければよかったんだ」


「ミコト、お前のせいじゃないよ。アイの奴、もう一個チョコを持ってたんだ。それもグレゴリーの板チョコ。昼飯前に少し食べてたんだが、残りをミコトが前の様子を見に行ってから食べてたんだ。完全にペース配分を間違えたよ、済まん、ミコト。私が付いていながら」


“ちょっと、ペィ!これってあなたの仕業?”


“ちがうでござるよ。あれは自然とそうなったでござる”


“あれ?いつから君は、武士の言葉を使うようになったんだ?”


“そ、そんなことは貴殿には関係ないでござろう”


“それもそうだね。ところで、疲れている人を元通りにはできないの?”


“我がチカラは疲弊のチカラ、元気なモノを疲れさせることはできるが、その逆はできぬ。疲弊した者に必要なのは、ただ休息のみ”


“そりゃそうだけどさあ。じゃあ、ポゥの方はどうなのよ?”


“ポゥのチカラは保つ力、疲労したモノは疲労したまま。さきほどそう述べたはずだが?”


“もう、役に立たないわね、あなた達。誰が何のために作ったのよ?”


“さあ?”


“さあ、じゃないわよ、もう!”




声にならない会話をしていたら、すぐに神社が見えて来た。


「みんな見えて来たよ、あそこで休んで、お水飲んで、元気回復しよう!」


その声に反応したのは柳井圭治に肩を持たれていた石川平治だった。


「おい、みんな、聞こえたか?ミコトさんの言うとおりだぞ。もう少しがんばろう」


「その通りだ。元気出て来たね。その調子だよ」


そう言ったのは柳井圭治である。ミコトは柳井圭治にも声をかける。


「おっ、ケイジはまだまだ元気だね。駐車場まで、もう少しだよ」




肩を担がれながら、石川平治は隣の男に尋ねた。


「あなたが柳井さんですか?ミコトさんから、ケージって呼ばれてるんですね?」


「そうだけど、それがどうかした?」


ふーん、と言って石川平治は隣の男をチラ見した。


「俺、石川平治っていいます。石川和美の弟です」


「うん、知ってるよ。朝から元気で目立ってたからねえ」


「ミコトさんから、頭のいいサッカー馬鹿って呼ばれているそうですけど?」



柳井圭治はどういう反応をするだろうか?


「頭がいい、かどうかはわからないけど、サッカー馬鹿は当たっているね」


笑って答えた。どうやらいい人のようだ、そう石川平治は判断した。なんか気に食わないなあ。






 一行は駐車場に到着した。


「さあ着いたよ。ここで休憩だ」


担がれた五年生、担いだ六年生、ともにその場にへたり込んだ。五年担任・佐々木もしゃがみ込む。ミコトからビニールシートを受け取った六年担任・宮本は、おもむろに一枚広げだし、そこに竹下愛を寝かせた。石川和美は竹下愛の面倒を見ている。ここは石川和美に任せることにして、六年担任・宮本は五年担任・佐々木に声をかける。


「ちょっと、佐々木、児童の様子を確認するのが先でしょ!」


「だってー、センパーイ、もう動けませんよーう…」


「もう!そんなことでどうするのよ!子供たちに示しがつかないでしょ!」


先輩は後輩を起こそうとするが、後輩は言うことを聞かない。


「センパイのオニー、アクマー、ヒトデナシー、コンキノガシ―」


ミコトは一番くたびれている五年担任に冷や水の入った紙コップを持っていく。

「先生、これ飲んで。少し休めば元気が出ますよ」


「あーりーがーとー、でももうだーめー」


水を受け取って一飲みすると、五年担任・佐々木は竹下愛の隣にたどり着き、倒れこんでしまった。


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