物語の始まりは新学期の朝から
はじめまして、あいうわをんと申します。初投稿です、よろしくお願いします。
このお話はとあるところに応募してボツになったものです。今から読み返してみると、うーん、テンポが悪い・話が進まないetc.・・・物語で一年間分完結予定ですが途中でストップ・・・なので最後まで書き上げるまで投稿することにしました。うまく〆られれば御の字です。
よろしくお付き合いください。
朝からミコトは不機嫌だった。せっかく買い換えてもらった眼鏡が、どう探しても見当たらないのだ。朝っぱらから、どたばたしていると、余計慌ててしまって、見つかるものも見つからない。そう思い直して、ミコトは息を大きく吐き出した。今日は始業式だ。早くみんなや先生と会いたいな。あーあ、眼鏡せっかく新しくして気合い入れて新学期に入ろうとしたのに。本当はコンタクトレンズにしたかったんだけど、ママがすごく反対するんだもん。あなたはあわてんぼさんだから、コンタクトなんかすぐなくすわよ、って言われた。その時はすごく反対したけど、ママの言うとおりだわ。眼鏡ですら失くすとは、おそるべし、私。
ミコトの、行きっぱなしの妄想は、母親の剣幕で打ち破られた。
「ミコト!いつまでぐずぐずしてるの?早くご飯食べて!遅刻しちゃうわよ」
時刻は午前七時半。歩いて行くならこのあたりで出かけないといけない時刻だ。
ミコトの家は、里山の中腹辺りにある神社の奥にある。ミコトの父親は、この神社の宮司である。年齢は三十六歳。宮司にしては若い方である。母親は、夫の手伝いで巫女をしている。年齢は夫より五つ年下だ。今、母親はいつもの袴姿に台所で着る割烹着でミコトの部屋に入って来た。色褪せた赤い袴がこの人の巫女の年季を示している。袴と違って、この人の髪は鮮やかな赤、まるで彼岸花が野に咲き乱れているようであった。ミコトは、髪の色もママに似たかったな、そう思っていた。そうしたらママそっくりで美人になれたのに、そう彼女は思っている。彼女は黒髪で、それは父親譲りなのであった。ショートカットの髪を掻きながらミコトは返事する。
「だってー、新しい眼鏡、どこにいったかわからないんだもん」
「そんなの前に使ってたのをかければいいじゃない。ママが探しといてあげるから、さっさと準備して、学校に行きなさい」
ミコトは、昨日まで使っていた眼鏡を机の引き出しから取り出し、自分の部屋を出て、食卓についた。先に朝食を済ませていた父親がいた。彼はまだ作務衣のまま新聞を読んでいた。父親も母親も眼鏡をかけておらず、ミコトの視力は後天的な影響に来よるものか。
彼は新聞から目を離した。そして娘の顔を見た。
「おはよう、ミコト」
「パパ、おはよう。いただきまあす」
「今日、学校に転校生が来るよ」
「突然なによ?」
「いやなに、昨日中村のおじいちゃんがお孫さんといっしょに挨拶に来てたから。昨日お前にいいそびれてたので、今言っておこうと思ってね」
「挨拶って?」
「中村さんには毎年神社に奉納するお米をつくってもらってるの、知っているだろう?お前が今食べているのもそうだぞ」
「そうなの?中村のおじいちゃん、お米つくるの上手だね。それともママの炊き方が上手なのかな?」
「今週から農作業始めますんでよろしくお願いします、ってぼた餅持ってこられて」
「ぼた餅!?」
「落着きなさい。まだご飯食べている最中じゃないか」
「はーい」
「どこまで話したかな?えーと」
「ぼた餅のところまで」
「ふー、食い気ばっかりだね、お前は」
「だってー、ご飯おいしいんだもん」
「そうそう、それでお孫さんを連れて来てたんだ」
「同級生とは限らないでしょ?」
「今度小六って言っていたからお前と一緒のクラスだよ」
ここ真御坂村、と書いてマミサカムラと読むのだが、そこでは過疎化が進んでいて、小学校は一学年一クラスしかない。したがって、同級生ということは必然的に同じクラスということになる。
「で、どうなの?」
「どうなのって、何が?」
「もう、パパにぶいなあ。イケてるか、イケてないか、どっちだった?」
父親はお茶を啜り、一呼吸おいて発言した。
「イケてるか、イケてないか。それは自分で見て判断しなさい。ただ、感じのいい子だったよ、始終にこにこしていた。挨拶もしっかりしていた」
「ただのバカじゃないの?」
「ミコト!朝からどれだけ食べてるの?遅刻するわよ」
ミコトはおかわりするのをあきらめ、お茶碗にお茶を注いだ。
「いや、そうは見えなかった。なんでもお父さんは大学に勤務していたって言ってたぞ」
「ふーん」
「その子のお父さんが学術調査で海外勤務になるので、お母さんの実家、つまり中村さんの家に引っ越ししたんだって」
「どうして一家そろって父親についていかなかったのかしら?」
「たしか、その国が紛争状態でとても危険な状態だからって言ってたよ」
「で、その子の名前はなんて言うの?げふっ」
「とほほ、人前でげっぷをする子に育つとは、パパは悲しいよ」
「家の中だけよ、人前ではやらないから安心して、パパ。それよりその子の名前は?」
お茶を飲み干すミコト。
「うん、と、ケージって言ってたな、確か」
「じゃあ中村ケージ君?」
「うんん、父方の姓を名乗っているみたい。なんと言ったか……」
「ミコト!!遅刻するわよ!」
「はーい、ママ、今日もおいしかった、ご馳走さま」
再び両手を合わせるミコト。
「そうだ、ミコト。今日倉庫の片付け、手伝ってくれないか?」
「えー、やだよ、一人でやってよ。あそこほこりっぽいし、クモの巣張ってるし」
「そんなこと言うと、お前の大好きなぼた餅、全部食っちゃうぞー」
「やだー。手伝うから全部食べないでー」
「あなたもバカなこと言ってないでさっさと着替えてくださいな」
父親も席を離れた。代わりにこの家で飼われている白い猫が座った。ミコトは白い猫の頭を軽くなでて台所からでていった。
「ママ、眼鏡探しといてね。それじゃ、いってきまーす」
放たれた矢のごとく、ミコトは家を出ると下り坂を走っていった。
投稿時刻は未定です。しばらくはストックがあるのですが、それ以降は・・・なかなか筆が進みません^^