15話一族の遺産
………これ、わざと俺を誘導して、目立たない場所で攻撃されるパターンじゃないよな?………
念のためポケットの中で針は掴んでおく。
曲がり角のところでこっそりと確認するとツギハギ女がそこにいた。
大丈夫。尾行がばれているわけではなさそうだ。
女の他に眼鏡をかけた長身の男性もいる。彼が女を呼び出した相手だろう。
あともう一人、男が倒れていた。
何やら言い争っているみたいだ。
かなり剣呑な感じがする。
「……よし、取れ」
眼鏡の男がそう言うとツギハギ女は倒れている男に近寄り、その顔に手を当てた。
おい、まさか、取れって……。
「はい、出来上がったわよ」
何をどうしたのか、月宮にはよく見えなかった。ただ女が今持っている皮みたいな何かが顔だということは理解できた。
そして倒れている男は以前の月宮のようにのっぺら坊になっていた。
「なにしやがった!おい、ふざけんな!俺の顔!顔返せ!返してくれ!」
立ち上がってツギハギ女に掴みかかろうとしたのっぺら坊を男が蹴り飛ばす。
「返すのは俺の質問に答えてからだ。いいか?〈遺産〉はどこだ」
「し、知らねえよ」
「破れ」
命令で女がその手に持つ顔を二つに引き裂こうとしたその時「ままっ、待ってくれ!」とのっぺら坊が慌ててしゃべりだす。
「たのむ!本当なんだよ!俺はただあんたらからアレを盗めって言われただけで……そっからは何も……」
「盗んだ物は誰に渡した?」
「そ……それはちょっと……」
「破れ」
「あ、ああっ芥川だ!」
え、とその言葉に反応したのは陰から聞き耳をたてていた月宮だった。
なんで芥川さんの名前が出てくるんだ……?
思い浮かべたのは、月宮に手を差し伸べてくれたあの黒いセールスマンだ。
「芥川っていう男だよ……そいつに渡した……」
「お前はあれが何なのかわかっていたのか?」
「知らねえよ!あんな気持ちの悪いマスク!」
……マスク?
月宮は何だか嫌な感じがした。
「おい、言葉には気をつけろ」
のっぺら坊の言葉に眼鏡の男は憤慨したらしく、彼を勢いよく踏みつけた。
「気持ちの悪い、だと?あれは我が曾祖父の遺した遺産であり………20面相と呼ばれた曾祖父そのものだぞ!」
おい、100%これじゃねえか!!




