14話ツギハギ再び
あのツギハギ女がネカフェに来ていた。
今は漫画を選んでいる最中だ。
棚の陰に隠れながら月宮はポケットに忍ばせた針を握りしめる。
……あいつ……俺の顔を奪っておきながら……!
月宮は怒りをおさえて相手を観察する。
前と同じ服装。フードをすっぽりと被っていて顔は見えないが間違いなくあの女だ。
女の細く滑らかで、それでいて接合痕のある指。あれが俺の顔を掴んでいたのを覚えている……。
やがて女は大量の漫画を抱えて部屋に戻った。
月宮はつい先ほどのハギモトの言葉を思い出す。
「すまん坊主。さっきは勢いで殺れといったがここでは控えてくれ。ここは怪物たちが唯一安心して眠れる場所だからな。いわゆるグリーンゾーンってやつだ。だがここから出れば話は別。あいつみたいな問題児は準ブラックリストの一員だからな、ここに住むことはできねえ。きっとたんなる休憩でここに来たんだろ。数十分で出ていくはずだ。そこを殺れ!」
そう言われたが月宮は別に相手を殺そうとまでは思っていなかった。
顔を失ってもまだ人間としての心は失っていない………ただ俺はあいつから俺の顔を返してもらいたいだけだ………。
さてどうする。ここを出て後ろから襲うか?でも相手は顔を奪うことができる訳のわからない力を持った異常者だ。それに今俺の顔をもっているとは限らない……。
そうこう考えていると彼女はわずか十分で退室した。
カウンターで会計をしながら不機嫌そうに携帯で連絡をとっている。仕事でもしているのか………?
月宮は自分の顔が兄の顔に変身できていることを確認すると女と一緒にエレベーターに乗りこんだ。
このままあとをつけて奴の住み処を暴いてやる。きっとそこに俺の顔はあるはずだ……!
だいたい15メートルほどの距離を開けて月宮は彼女についていく。
今のところ気づかれた様子はない。
電車に乗って数駅移動し、やがて繁華街へとやってきた。そしてそのまま彼女は日の光の入らない入り組んだ路地の中へと入っていく。
………これ、わざと俺を誘導して、目立たない場所で攻撃されるパターンじゃないよな?………




