第1話 顔のない少年
……僕の顔がない。
自宅の洗面台で、月宮修二は鏡に写る自分の姿に絶句した。
のっぺら坊だ。妖怪のっぺら坊が鏡に写っている。
な、なんだこれ。なんなんだこれ!
驚きのあまり尻餅をつく。
無理もない。自分の顔にあるはずのパーツがそこにないのだから。
おそるおそる、もう一度鏡を見る。
やっぱりない。
目と鼻と口がない。
ひゃああああと女々しい悲鳴をあげて月宮はまたしても尻餅。
ないっ、ないぞっ、目がない!目と、あと鼻と口もない!嘘だろ……嘘だろっ!?
自分の顔をペタペタと触るが、感じるのはツルツルとした感触。
まるで親父のハゲ頭にさわってるような……ってそんな場合じゃない。
よく、あいつの顔は平たいとかそんなこと言う時あるけど、これは…、この俺の顔は平たいどころじゃねえだろ!まっ平らじゃねえか!!
月宮は立ち上がって、自分の顔をしっかりと確認する。
まるで、くそでかい米にカツラをかぶせて首の上にのっけているみたいだ。
ないパーツの代わりに小さな穴がいくつか空いている。これが今の目鼻口ってわけか……いや納得できねえだろ!
月宮にはどう考えてもこの穴がそれらの代わりになるとは思えなかった。
だって目って瞳孔とか色々複雑な構造してるのに、これじゃああまりにもお粗末だ。逆によくこんな穴で普段と全く変わらない感じでいられるものだ、と少し関心した。
いや、そんなことよりもこの状況の異常性だ。俺はいったいどうして……。
考えられるとしたら―――あの女だ。
月宮はつい十数分前の出来事を思い出していた。