【短編】[NL] 大好きなキミと〇〇したい1
「ねぇ。」
あたしに背中を向ける彼に言う。
もうこれで10回は言ってるんだけど……。
「…………。」
依然として彼は振り向いてくれない。
「ねぇ…、ねぇってば!」
次は広い背中を叩いてみる。
「…………。」
……効果なし。
「……ねぇ、どうしたの?怒ってるの?あたし、なんか悪いことした?」
「…………。」
これでもダメかと思っていると
不意に彼がむすっとした顔で振り向いた。
「な、なんでそんな顔……?怒ってる……?」
「…………。」
ここまで喋らないとは、本当に不味いことをしてしまったのだろうか。
今まで自分がしてきたことを振り返ってみる。
……うーん、心当たりはないなぁ。
「なんか、よく分かんないけど、悪いことしちゃったんなら謝るよ。……ごめんね。」
「……心当たりないのかよ。」
やっと口を開いた彼から出た言葉に?マークがたくさん出てくる。
「……その感じはないんだな?」
はぁ……とため息をつく彼。
「ごめんなさいっ!……色んな意味で。」
上目遣いで彼の様子を伺う。
「なんで……」
「……?」
恐る恐る彼と視線を合わせる。
「なんで約束……忘れちゃうの……?」
約束……?身に覚えがない。
いつもSっ気のある彼が珍しく切ない顔をする。
「え……?待って、ごめん!あたし……、ごめんなさい。」
「はぁ……、もういいよ。」
俯きながら言う。
「だ、ダメだよ!約束したんでしょ!?忘れたあたしが悪いの……!だから……。」
「ふっ、あはははははっ!お前めっちゃ焦ってる!」
突然笑い出す彼に、あたしはぽかんと口を開く。
「……?」
何が何だか分からない顔をしていると
「約束なんて……あははっ、……してないよ。あはははっ!」
爆笑しながら彼がそう告げた。
「……へ?な、…………え?」
まだ状況を把握しきれていないあたしに、彼は抱きついてくる。
「わっ!え、なになに?」
余計に訳が分からない。
「本当可愛いな。」
不意に言われて顔が真っ赤になる。
「ちょっ……!急になに?どうしてこんなこと?」
彼と見つめ合いながらそう言うと
「!…………。」
また、視線を逸らして黙りこくってしまった。
「……理由を答えなさい。」
「絶対、笑うなよ……?」
「うん!笑わない。」
「お前、今笑わないって言ったからな!?」
はぁ。と深呼吸をする彼。
「か、かまって欲しかったんだよ……」
耳まで真っ赤にして彼が言った。
意外すぎて、しかもいつも甘えてこない彼が甘えてきてキュンとした。
「なんだよ〜っ!そんなことなら言えば早いのに〜!」
ニヤニヤしながら、あたしは抱きしめている腕に、より力を込める。
「ば、バカっ!笑わないって言っただろ!?」
「笑ってないよ〜、ふふふっ!」
「笑ってんだろ!」
――……こんな可愛い彼は一生離してやるもんか!ってあたしは思ったんだ。