強盗男
俺は高校帰りに街で寄り道をしていた。すると、ガシャンと店の奥からした。中から出てきた男は店主ではなく身を黒く包んだ男だった。手に札束を持っていて、店主は気絶している。彼は強盗だと確信した。そして、店に一人しかいなかった俺はその男と目が合ってしまった。
「…」
「俺を通報する気かい?」
「いや…」
俺は怖くて震えていた。
「まあ君に任せるさ」
「…」
俺は怖くて何も言えなかった。
「俺はお前を気に入った。まあ何かあったら連絡しろ」
と一枚のメールアドレスと電話番号がかかれたメモを渡しそのまま去っていった。
あれから数日がたった。いまだに彼には連絡を入れていない。俺にはそんな勇気がなかった。
しかし、俺は気になってかけることにした。俺はとりあえず怖かったので公衆電話にかけることにした。公衆電話なら一方的にかけることが出来るからだ。
「なんだ」
電話はワンコールで繋がった。
「えっと…どうなったんですか?」
単刀直入に聞くことにした。
「ああ…警察のお世話になった」
どこか不満さの残る声だった。それもそうだ犯罪者が警察のお世話になって喜ぶものはいない。しかし、意外だった。彼は運動神経も良く警察なんかには捕まらないと思っていた。
「お、お疲れ様です」
これが警察にお世話になった犯罪者に対して言う言葉だろうか。しかし、どこかひっかかるものがあった。
「刑法236条で強盗行為を行った場合5年以上の有期懲役になるはずだ。」
なら、なぜこの人は電話に出ているのだろうか。ワンコールで出たことから、常備してないとまず不可能だろう。
「え…なら何故電話を…」
「ああ、自分の携帯だからな」
「え…でも捕まったんじゃ…」
「捕まってないんだよ」
理解できなかった。あんなことをしていて捕まっていないこと。ましてや警察にお世話になったのに。
「ああ理解出来ていないみたいだから順を追って話すよ」
「…はい」
いち早く情報を知りたかった。
「俺は無職だ。仕事もないから食ってはいけない。なら、人はどうするか。警察にお世話になるわけだ。刑務所の中では食事も満足に出来るときいた。そこで5年の刑務所生活が保障される強盗を行った。」
死刑にでもなったのだろうか。そして、携帯の契約代はどうしているのか。そこには触れずだまって続きを聞くことにした。
「無罪だった。店主が元々どうのこうのと言われむしろ褒められたくらいだ。」
今、俺は全てを理解した。この流れからいくと彼はまた犯罪を犯すだろう
「じゃあ…また何かするのですか?」
「ああ、」
そこで電話が切れた。
気になった俺はメールで尋ねた。具体的にどうするのか、と。しばらく経ったのち返信がきた。
「◯丁の◯◯家をおそう。金を巻き上げた後、放火をする。明日、実行する。お前にも分け前をやるから午後8時◯丁の街角で待っておけ。」
金欲しさに俺は予定の時刻に予定の場所で待っていた。
しかし、いくら待っても彼はこなかった。先に警察のお世話になったのかもしれない。そう思い、彼のことは忘れることにした。
数日が経ったある日、知らないアドレスから一軒のメールが届いた。
「あいつは死ぬ。現住建造物等放火罪で死刑判決が下された。これはあいつからの伝言だ。」
そして続いてもう一件。
「金を渡せなくてすまん。」
ひと文だけ書かれていた。そこでふと彼のことを思い出した。