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作者: 鹿沼部直作

 

 大きなプラスチック製の箱を開け、中にある大量の飴を一つだけ取り出し個包装を解いてやると、そこには三日月型になった黄色の飴玉が姿を表した。本当にお月様を彷彿とさせる綺麗な黄色だった。

 中々の良い出来だったので、しばらくの間、その綺麗な形状を様々な角度に傾けながらウットリと眺め続けていた。

 飽きもせず長い時間飴玉を見ていたので、おかげで手がベタついてしまった。左手の、それも特に人差し指と親指が一番の被害を被ってしまった。

 慌てて飴玉を口に放り込む。甘い・・・瞬間、口の中が甘味の世界に包まれる。口も喜びに震えているのか、舐めるたびに唾液腺が弾け飛び、唾液の量が常時のそれとは違い格段にかさむ。

 近くに水道場はないかとキョロキョロと周りを見てみるが、飲食店もコンビニエンスストアも、ましてや公園もなかったのだ。

 ううむ、これは由々しき事態なことになった。指がベトベトのまま帰宅するのは、大変不快極まりない。だがしかし、近くに水場がないのでは、打つ手なし。

 致し方あるまい、不快だがこのまま家に帰ろう。なあに、美味しい飴を舐めれた喜びに比べれば些事だ。

 そういえばと、思い出す。私はいつから飴好きになったのだろうか? 確か子供の頃は飴は、大好き、と言うわけでもなかった。かと言って、大嫌い、と言うわけでもなかった。

 湖の底に埋もれている記憶を懸命に呼び起こしてみる。自分の飴好きになった原因を。

 ――うん、思い出した。

 あれは今から10年も昔の話だ。いや、正確に言うのならば11年前になるかな。

 田舎にいた普段無口なおじいちゃんが私にくれたもの、それが飴だった。

 その飴は舌が敏感な子供の私には余りにも甘く、第一印象最悪な飴でした。

 しかし、せっかく貰ったもの。意固地になった私は每日一粒づつ飴を消費していきました。

 最初は甘すぎてしょうがなかった飴も一週間経つと慣れていき、残り少なくなると侘びしくもありました。

 こうして私は今、飴好きに至る。

 

 

 

 

 

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