ハクア青年
のんびりと国境まで進むだろう。王女の国は平和なのである。
王女の国の国民性は勤勉で労働意識の高いイメージだが本当にそのままである。
武人の中にメタボがいない。従者として世話をしてくれるハクア青年は寡黙だが、気が利き、
お茶の入れ方が上手い。
「お茶が美味しい 姉君に教わったのかい?」
「いえ 自分で調べました」
「王女の侍女の方のお茶と同じ味なんだ
茶葉が同じでも入れ方が違うと味は変わるものだから
王女の城を離れたらもう飲めないと思っていた
流派が同じなのかな? 嬉しいよ」
ハクア青年は嬉しそうに微笑み会釈した。
王子は女性の前でも気の利いたセリフを言えれば
王女にもバカにされずに済むのになぁと少ししょんぼりした気分になった。
「ハクア殿は王女をほめるのは得意?」
王子は暇なのでハクア君に色々レクチャーしてもらおうと思いついた。
「?私は王女にお仕えできて幸せですが」
凄い完璧な回答。
「それ本人に言えるよね ハクア殿は」
ハクア青年は王子の意図が
よく話わからず、違う受け取り方をした。
「?王子は王女がお好きなのですか?」
違うけど違うと言えない質問が来た。
王子はハクア青年に話を戻す
「ハクア殿が王女を好きだろうなという話だよ」
「?主として敬愛しておりますが?」
また完璧な回答だった。いささか無粋な質問
も平気だろう。
「男女としての愛情としてはどうです?」
「ありませんが 王子は陛下のことを
よく理解していらしたのですね」
「どういうこと?」
「今男女とおっしゃったので」
「?ああ(王女には気があるのか)それはさすがにわかるよ」
「王女の本心を見抜けるとは
さすがでございます」
「いえいえ ハクア殿ほどの部下がいる
王女がうらやましいだけだよ」
ハクア青年は嬉しそうに頬を染めた。
こんな青年が側にいたら王女であってもほっとかないか。
俺の王子の肩書ってほんと飾りだな。
王子は泣かなかった。ただ少し泣きたかっただけである。
女ごころがわからない男は本物の王子ではない。
少なくとも女性にとってはそうだろう。
ハクア青年こそ白馬の王子様なのだ。