マッチョにあこがれる従者
お互い一歩も引かぬティーパーティーは無事終わり、
このまま王子は、王女の用意した護衛に国境まで、従者と共に警護してもらい帰国する。
はずだったのだが、話は変な方に転がっていった。
従者が城の、警備兵に弟子入りしたいと言い出したのである。
自宅警備にそんなマジにならなくてもと思ったが、
面倒なことに、彼は常日頃武人に憧れていて、わが身一つで、
名誉を得たいと考える、意識高い系だった。
警備兵からその上司に、上司から司令官に、その司令官から、王女まで話がいき、
「何と志の高い若者でしょう こちらとしてはウェルカムですわ!」
と王女は絶賛し歓迎した。必ず立派な武人となるまで祖国の土は決して踏みませぬと、
王子に誓う従者の姿は、ニートのやる気スイッチぱねーと周りを感動させた。
この流れはもはや変えられなかった。
「ですが 問題はお城に帰るまでの王子の従者ですわね」
王女の発言にこれ以上借りを作ったら不味い、と思った王子は、
「いえ 我が国のものを迎え入れてくれる寛大なお心のみで十分」
という言葉発するがガン無視される。
「では 王子好みの侍女をこちらで用意いたしますわ」
と完全に弱みにぎったっぜという表情で王女は言った。
ハニートラップを仕掛けられちゃうの?ウェルカムじゃねーよ。
王子は内心うろたえたが、笑顔で断った。
「いえ 結構ですの…」
王女は王子の話をきかない。
「ハクア準備はよろしくて?」
「はい 陛下ここに」
王女の声にこたえたのは武装をした若い青年だ。
精悍な表情に小柄な体躯。琥珀の瞳に金の髪を
頭の上で小さくまとめている。あの侍女に似ていた。
兄弟かな?と王子は考えた。なんにしろほっとした。
「念のため武の心得あるものを選びました
従者の仕事もこなせますので
安心してください
ではハクアお城へお送りするまで
王子には私と同じ忠誠を」
「お誓いいたします陛下」
美形武人と王女の絵面に圧倒され
王子は流れにのまれた。