ハクアの能力
巨木を撤去したあくる日、王子と護衛団は、予定していたルートを進んだ。
街道沿いの山道と高原、またその間の荒地を、
護衛団は隊列を崩さずに進んだ。
ただ、護衛団を狙う影達は、動き出し少しずつ護衛団を囲うように
影達は展開していった。
最初にそれを知ったのはハクアだった。
ただハクアはあえてそれを護衛団には伝えなかった。
ハクアが最初に知った時点では、彼らとの戦闘を回避する
選択をし、それを実行に移せる時間は十分にあった。が、
尋常の人間ならば、はるか遠くに潜む者たちの気配と、
数を知る術などありはしない。
ハクアにはその能力があった。
誰にも知られずに、戦場での情報を自分だけが手に入れる力。
その力自体が、エデンの国の国家機密に当たるものなので、
王子と護衛部隊とは、この件での情報の共有をしないと、ハクアは判断した。
護衛団の索敵班が、自分たちを狙う影に気付いたのは、
四方に距離をとって囲まれ、接触を回避することができなくなってからだった。
ただ、ハクアの持つ正確な、影達の人数と戦力の情報では護衛団とは到底
まともな戦闘はできず、護衛団にはわずかな被害も出ない。とハクアは確信していた。
しかし、影達の狙いは、王子と護衛団、
ハクアの予想を超えたところにあったのだった。