本気で生きるということ
屋敷の庭でBBQは始まった。
酒も飲まずによくぞこれだけ楽しめるものだと王子は呆れた。
火おこしをあえてマッチさえ使わずにする。という遊びは、
何が面白いのか王子には理解できなかった。
樽に汚れ物と井戸の水をぶち込み、半裸の男たちが
肩を抱き合いながら足踏みで洗濯する様は、
王子を言いようのない気分にさせた。
火をおこすとどこかから手に入れたイノシシを丸焼きにしだした。
それはどうやって食べる気なのだ。
王子の傍でハクアは同様にこの光景に圧倒されていた。
「ハクア殿騒がしい場所にいても疲れるだけでしょう
屋敷の中で私と一緒に食事をしていただけませんか」
「いえ 私は王子のお世話がありますので」
「ふふ 王子もたまには羽目を外したいのですよ
男とは元来バカをしたい生き物なのです
女性の目があるところですることではないですが」
ハクアはそういうものだと納得してしまい、
ゼノと屋敷の中へ行ってしまった。
何でこんなカオスに俺はいるんだろうか。
王子は状況を受け入れられないでいる。
「王子も兵士と混ざって楽しめ」
半裸の団長がやってきて言う。
あんたもかよ。団長。王子は呆れた。
「俺にはこの騒ぎが なぜ楽しいかが理解できません」
「頭で考える必要はないのだ ただバカになることが肝心だ」
さっきのハードボイルドな団長の勇敢とか情熱とかの話は何だったのだろうか?
「バカになって どうするのですか?」
「本気で生きるということは そういうことだぞ」
悲哀を浮かべた表情で団長は王子にそういうと、
バカ騒ぎの中に消えていった。
ただ彼らが人生を楽しんでいることは王子にも分かった。
王子は最後まで、彼らの中には混じれなかった。