アルカディア国の第一王子
仮面の騎士団 団長 アルカディア国情報収集活動記録。
彼は隣国の第一王子だが、幼いころから、色々と抜けているところがある。
我が国に国賓として、公式、非公式問わず、よく訪れるのだが、
異国の王城内にいるときでさえ、ほぼ危機意識を持っていない。
彼はまだ、ほんのこどものころ、従者の目をすり抜けて、
わが国の王城の森を散策し、そして迷子になっていた。
するとその森で自分と同じ年頃の、粗末な服装で、箒を持った少女に出会った。
「君はひょっとして魔女かい?」
と何気なくその少女に尋ねた。
少女は王城に見習いとして仕える者であった。
少女は王城の周りの森の地面を綺麗に掃除するようにと、
通過儀礼である無慈悲な命令を忠実に守っている途中であった。
手にはたくさんのマメができていた。
王子は気の毒に思い、城への帰り道をその少女に尋ね、
道を教えてもらったお礼に、自分の母の形見である、指輪をその少女に
あげてしまった。
そして数年後、幼いころ母君を無くされた、アルカディア国の王子は、
自らの国の王城の中、外戚の後ろ盾、強い支持者、庇護者もなく、
第一王子の肩書のみを持ち、従者もつれず、自らの王城を一人でうろつき、
特に文書室で、日がな一日、ダラダラと時間を過ごしていた。
故に、情報収集活動において、彼の存在は、いささか邪魔ではあったが、
護衛もつけずプラプラしているので、脅威ではなかった。
逆に、彼の異母兄弟である、第二王子の動向は目が離せるものではなかった。
タカ派のとりまき達、大きすぎる野望を持つ参謀、大きな力を持つ外戚。
第二王子の傍からは、常に暴利謀略の気配が途絶えることはなかった。
第一王子の存在は城の中にあっても、異常に空気であったため、
暗殺のターゲットの候補にも挙がっていないようであった。
それに、第一王子はこどもの頃から慣例通り、外遊し、
一応、隣国との同盟関係に役立ってはいた。
内政上の脅威ではないが、外交上、失うとそれなりに替えのきかない存在。
何というか第一王子は色々幸運であった。