二人の世界
登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記) 小林幸=幸(台詞表記) ミーリス=ミリ(台詞表記) バグ=バグ(台詞表記) レイシア=レア(台詞表記) ヘルカーフェル=ヘル(台詞表記)
ロプ 「はあー、癒されるな~」
幸 「いい湯だね~」
ロプ 「だな。バグさんにはほんと頭が上がらないな」
幸 「私も異世界に来たんだから、何かチート能力が欲しかったよ」
ロプ 「むちゃくちゃ強い銃の能力があるじゃないか」
幸 「あれが私のチート能力なのかな?」
ロプ 「あれはかなり凶悪だぞ。ほとんど百発百中だと言ってもいいじゃないか。見ていた中で外したことって一回しか見たことがないくらいだからな~。あれは凄まじい力だよ」
幸 「うーん。もっとバグ君みたいな万能な力がよかったな~」
ロプ 「あの人の力って、もう神様みたいな絶対的な力だよな。実際に神様と戦ってみたら、互角だったりしてな」
幸 「まあ、バグ君は人間に転生できなかったみたいだから。たぶん人外の力があって初めての強さなんだろうね~」
ロプ 「人間になれなかったか・・・・・・そう考えるとあの強さもちょっと悲しい力なんだな」
幸 「だよね。生まれ変わったらスライムだったって話だから、生き残れただけでも凄いかも」
ロプ 「スライムって・・・・・・子供でも倒せるぞ・・・・・・」
僕達は今、バグさんの用意した温泉宿というところでのんびりしていた。どこかフォーレグス王国内にある森の中の温泉宿みたいで、僕達以外の客がいない貸し切り状態になっている。これってこんなところにあって採算が取れるものなんだろうか? 心配になるけれど、そんな宿を紹介してもらい、のんびりさせてもらっていた。
ちなみに、日本式の結婚式などやってもらったりした費用は受け取ってもらえなかったのだが、せめて温泉の費用はといって、こちらに泊まる為のお金は支払って来たので思う存分のんびりと温泉を堪能して行ける。
温泉宿という名前からしてここには温泉以外にもたくさんの部屋が用意されており、そこにお客が泊まることができる施設が準備されていた。何と食事も準備されるようで、しかも客室にまで運んで来てもらえるという至れり尽くせりな施設である。
まあそんな訳で、幸と二人っきりでのんびりと宿泊していた。
森の中にあるので、他に楽しむところが無くて暇かとも思ったけれど、ちゃんと遊戯室なるものも施設内にあるようなので、幸と一緒に見に行ってみたのだけれど・・・・・・カラオケがあったよ・・・・・・
他には卓球とか・・・・・・日本人っていう人種は本当に卓球が好きなんだな~。温泉地には必ず卓球があるとか聞いたことがある。後コーヒー牛乳とかも、探したらあるのかもしれないな。
後は麻雀とかがあった。メンバーが四人必要のでできないけれどね~
まあせっかくなので、二人でカラオケをして楽しませてもらったよ。日本のカラオケと違ってテレビの代わりにバグさんの作った特製の革が壁に貼り付けられていたので、それがテレビ代わりになっているようだけれどね。歌の選曲などは手元に操作用のキーボードがあって、そこに曲名を入れるようになっていた。歌詞の一部でも検索できるようになっているみたいだな。
さすがにこっちの世界には吟遊詩人が好き勝手に自作している歌くらいしかないので、選べる曲は日本のものばかりだったのが残念なところだな。それでも日本で何年か過ごしていたので、二・三曲くらいなら歌うことができた。その他は幸が歌っているのを聴いていたので、ちょっとした幸コンサートっていった感じだろう。
後、歌を歌っている間に喉が渇いたなって思っていると、先程のキーボードを使って施設内の厨房に注文を頼むこともできるようで、二人してジュースと軽くお酒なんかも注文し、ついでにお摘みも頼んだりできた。何気にここって快適だな!
僕達は一週間程温泉宿にお世話になった後、帰って来た。過ごした期間はそこまで長くないけれど、なんとなく帰って来たーって感じがして落ち着くな~
ロプ 「ただいま~」
幸 「ただいまー」
ジャド「ようおかえり~。温泉とやらはどうだった?」
ロプ 「かなり満喫できたぞ」
幸 「のんびりできて、よかったですよ」
ジャド「そうかそうか。そりゃあよかったな」
こんな何気ない会話も、なんだか落ち着く。っとお土産もあったので、さっそく渡すことにした。宿にあったお土産コーナーに売られていた、温泉饅頭というやつだ。
ロプ 「これがお土産だ。他のみんなは家にいるか?」
ジャド「今日のシフトはミリアナが誘導員で飛空艇に乗っている以外は休みだが、今は買い物にでも行っているかもしれないな。家にはいないぞ」
幸 「じゃあ後で私が渡しに行って来ますよ」
ロプ 「あ、じゃあお願いするよ。とりあえず帰って来たばかりだから家に入ってお茶でも飲んで、一服しようか」
幸 「うん。ジャドさんもどうですか?」
ジャド「じゃあお邪魔させてもらおうかな」
ロプ 「おう、入って来い」
この家には工房がないので、前のように何か作ったりはできないけれど、生活するには過不足無い居住性が備わっていた。家の材質とか、一体何でできているんだろうな~。石のようで触ってみると温かみがある軽い材質の物だと思える物でできている。かといって叩いたりしても傷とか付かない辺り、軽石と呼ばれる類の石ではなさそうだった。
床は木材だって直ぐわかるのだけれど、何というか歪み一つない加工技術に驚くばかりである。なんていうのか、家に住んでいるだけなのに、こう何か作りたくなってうずうずさせられるんだよな。
まあそんな僕に配慮されてなのか、直ぐ近くに開発施設を作ってもらえたのだけれどね。開発施設とはいっても、研究所のような壁に囲まれるような立派なものではなく、二階建ての普通の民家かって感じの物なのだが、実験する為の庭は用意されているから、そこそこ快適に作業ができる施設だった。まあ、今はあまり開発するようなものが無くて、暇なんだけれどね。
大きな仕事はバグさんが依頼して来ないとないので、その間僕らは個人的にやりたい開発を勝手にやっている。もしその開発に許可が出るのなら予算が降りて、正式にみんなで開発して行くって感じの仕事だったりする。結構審査は厳しくて、なかなか許可がもらえるものを開発できないのだけれどね。しかも、勝手に開発して売り出すと怒られるので、必ず売り出したりする前には許可を貰わなければいけない。しかし許可がもらえるような発明品は、必ず売れるってパターンから、みんな売れる物が開発できるようにと、頑張って発明していた。
ジャド「俺もそろそろ結婚してみたいな~」
ロプ 「どうしたんだ突然?」
ジャド「突然って程ではないだろう。パーティー内に結婚したやつも出て来たんだ、こっちだって気になって来るものだろうよ。ずっと冒険者を続けて行ける訳でもないし、そもそもこの国では冒険者自体が必要とされていないんだからな」
ロプ 「まあ確かにそうだろうが・・・・・・問題は相手がいないことだろうが?」
ジャド「ミリアナ達は脈ないかな? フォーレグス王国にはろくな男もいないだろうし、そこで同じパーティーを組んできた俺なんか、結構性格とかわかっていて優良物件じゃね?」
ロプ 「まあ条件自体は悪くないだろうな。問題は彼女達にその気があまりなさそうなところだろう?」
ジャド「やっぱそうか~。出会いが欲しいものだな~」
幸 「お茶入ったよ~。ジャドさん、出会いが欲しいなら、やっぱり町とかに出て出会う機会を増やすのがいいんじゃないですか?」
ジャド「正論だな。ありがとう。・・・・・・やっぱあちこち行ってみるのがいいのかな~」
ロプ 「焦るとろくなことにはならいないだろうけどな」
ジャド「まあな」
そう言うとお茶を飲んで一服したのち、出会いを探いに出かけて行ってしまった。焦って探したところで、こればっかりはどうにもならんと思うのだがな~
ジャドの背中を見ながら、そんな感想を抱いたりしていた。
それから数日後、僕達パーティーメンバーは今後の事を話し合う為に集まっていた。なし崩し的にフォーレグス王国に来てしまったけれど、このままここに定住するってことでいいのかどうかを話し合う為だった。もちろん外国に行くということは襲われる危険があるということも承知しているのだが、バグさんに相談したところそろそろ大丈夫だろうとの事だった。まあ僕は問題外で、ここに残ることになるけれどね。
みんなは一応保険を掛ければ、特に問題ないかもしれないという話だった。そこで改めてみんなの意思を確認しておくことにした。ジャドとも話し合った結果だ。
ロプ 「僕はこの国にいないと危険なんだそうだが、みんなはそろそろほとぼりも冷めた頃合いだという話だ。だから冒険者を続けたいのなら外に行くこともできるらしいがどうする?」
ジャド「残念ながらパーティーは解散になるが、まあみんなもう十分過ぎる程強くなっているからな。どこででもやっていけるとは思う。まあ、男性冒険者には気を付けておいた方がいいだろうがな。こればかりはいくら強くなったところで、油断しない方がいいからな」
ミア 「ジャドさんは冒険に行かないのですか?」
ジャド「俺はここに残ることにしたからな」
ニナ 「意外だね。何かあるの?」
ジャド「うーん、そういう訳でもないが、まあフォーレグス王国が気に入ったってところだ。飯も美味いしな!」
ミア 「それは確かに他国に行くのを迷う程わかりますね」
ニナ 「確かに、今更他国の料理とか食べられないかもしれないよね~」
レイ 「そうなると、同盟国辺りを拠点にするのがいいかもしれませんね。いざって時は帰って来られますし」
ミア 「確かにそうですね!」
ニナ 「じゃあ冒険者続行だ! ミーリスはどうするの?」
ミリ 「私は職業の関係で、他のパーティーを探したいと思う」
ニナ 「ありゃ。じゃあ会えなくなっちゃいそうだね」
ミリ 「いや、私もさすがにここの料理には慣れ過ぎたからな。ちょくちょく帰って来ようかと思う。先生もいるしね」
ロプ 「そう言えばレイシアさんが先生だったな。じゃあみんなたまには集まったりできそうだな。ジャドが残るっていうのは意外だったが」
ジャド「まあ俺としても、初めは冒険を続けようと考えていたんだがな~。ただお金なら十分に稼いでいたし、こっちに家まで持つことができたからな。今更冒険者をしなくてもいいのかなって考えたんだよ」
ロプ 「そんなものか~。そういえば、みんなの内の誰かの家はそのまま残しておいてもらうか?」
ミリ 「そこまでお世話にはなれないのでは?」
ロプ 「もう十分以上に恩は返せない程山積み状態だ、今更一つ二つ増えたって、変わらんよ」
ニナ 「そこはちゃんと返して行こうよ~」
ロプ 「いや、僕だって返せるものなら返して行きたいさ。相手があのバグさんになって来ると、お金じゃ逆に失礼になるし、それなら代わりに何を渡して行けばいいんだって話だよ。あの人困ったことが起きてもこっちが手助けする前に解決しちゃう人だから、恩を返して行くタイミングをくれないんだよな・・・・・・」
ミア 「心労が溜まりそうですね」
ロプ 「まあやれることで貢献して行くとするさ」
ニナ 「頑張ってね!」
ロプ 「ああ」
幸 「私も何かお手伝いできないか、考えてみますよ」
ジャド「幸さんは、十分ギブアンドテイクになっていそうなんだけれどな。ロップソンが借りを作り過ぎているんだろうな」
ロプ 「うっ、わかっているよ。じゃあ僕達の隣の家ってことで、ニイナの家をそのままで残してもらおうか。後みんなには保険としてこの指輪を預かっている。誘拐されそうになったら助けに来てくれるかもしれないって話だけれど、あまり油断するなよ」
ジャド「これって、魔道具か?」
ロプ 「聞いた話だとそうだろうな」
ジャド「お前ら、取られないように気を付けろよ」
ニナ 「はーい」
その後彼女達は一部の荷物をニイナがいた家に置いて同盟国へと旅立って行った。帰って来られる家があるっていいねって言っていた。冒険に疲れたら彼女達も帰って来るかもしれないな。今はまだ若いから力を持て余しているのかもしれない。
でもってジャドがなぜ冒険に行かなかったかの理由は、ある日たまたま街中で見かけることで判明した。
ロプ 「結構いい雰囲気のお店だな。ちょっとジャズバーっぽいってことはないか、ライブハウスって感じか?」
幸 「結構流行っているみたいね。あ、最前列にいるの、ジャドさんかも」
ロプ 「だな。一応店自体は喫茶店に近いのか? とりあえずあっちのカウンターっぽいところにでも行って、何か飲み物でも注文しよう」
幸 「うん」
どうやら最近流行り始めた歌という文化をさっそく取り入れたライブハウスって感じのお店だった。そしてジャドが熱心に応援しているのはセイレーンのようだ。なんていったらいいのか、セイレーンっていったら呪歌で有名なモンスターだったが、もう少し歌も上手いって思っていたんだがそうでもないんだな。
確かに声自体はとても綺麗で聞き惚れそうな感じなのだが、音痴という程ではないにしても微妙な歌唱力と言えるがっかり感だな。
幸 「声が綺麗なだけに、もう少し歌の勉強をして欲しかったね」
ロプ 「だな。確か学校もできたって話だったし、そっちで勉強して来た方がいいと思うな」
幸 「歌の学校なんかあるんだ。じゃああの人は入れなかったのかな?」
ロプ 「あー、入れないってこともあるのか。それでも頑張っているのだとしたら、頑張り屋さんって感じかな?」
幸 「プロにはなれそうにないね」
しばらく感想を言い合いながらちびちびとジュースを飲んでいると、いろいろな歌い手が出て来ては歌を熱唱していたようだ。どうもセイレーン族で参加していたのは先程の少女一人だけだったようで、他の歌い手もみんなそれ程歌が上手いって人は少ない感じだった。まあ、それでも客は熱心に楽しんでいるようだったので、本人達がいいのならいいかって思うことにした。
ロプ 「まだ歌の文化が未発達だから、そこまで歌唱技術が追い付いていないんじゃないか?」
幸 「そもそもが、日本の歌と比べるのが間違っていたかもしれないね」
ロプ 「そうすると、日本から音楽を持って来たらかなり儲かるな」
幸 「そうかもね。でもバグ君はあまり日本の文化をそのまま持って来るのには反対みたいだよ」
ロプ 「あれ? じゃあ日本刀とかは?」
幸 「あれは日本の技術を使っているんじゃなくて、こんな感じだったかなって感じで作ってみたら出来たやつなんだって。そのものの技術を持って来た訳じゃないから、まあいいかって言っていたよ」
ロプ 「いろいろと拘りがあるってことかな?」
日本刀作製秘話を聞いていたのか。僕もいろいろな話を聞いてみた気もするな~。バグさんの慎重さが身に付くかもしれないしな。そんなことを言っている間にジャドは店を出て行っていた。
ってことは、もうさっきのセイレーンの出番ないってことかな?
僕達が来てからは二度程ステージに出て歌っていたけれど、そこまで熱狂する程上手いとは思えなかった。ジャドってそんなに面食いとかだったか? 確かにあのセイレーンは顔だけなら美人だった。それともあの声に惚れたのだろうか?
さすが呪歌の使い手だ。セイレーン一族は、呪歌の魔力を封印されて純粋な歌として参加させられているという話だったので、魅了されている訳ではないのだろうがそれでも、惹かれてしまうのかもしれないな~
ジャドの家に行くとどうやらそのセイレーンは一族の中でも呪歌が下手だということで落ちこぼれていたのだそうで、一生懸命に努力する姿に惚れこんだのだそうだ。でもって、彼女ヘルカーフェルさんというらしいのだが、歌が上手くなるように何か魔道具を作って欲しいと頼まれてしまった・・・・・・
ロプ 「何でもかんでも魔道具で解決できる訳ではないんだがな~」
幸 「カラオケの採点マシーンみたいな物を作れたら、見ながら自分の欠点を修正して行けるんじゃないかな?」
ロプ 「お、幸ナイスアイデア。ちょっと考えてみるよ」
家では開発できないから、さっそく仕事場に向かって作業を開始した。まあ、基本となる音の検出を本来は敵の足音などを聞きわけるサウンドセンサーでやろうと思うのだが、この場合の基準になるものと比較するシステムを作らないと駄目だな。むー、ここは一番難しい調整などが必要になってきそうだった。そもそもが音楽についての知識が皆無なんだよな~
まあでも、ジャドの為にも泣き言はいっていられないか~
配下 「お邪魔します~。バグ様より指示を受け、開発の手伝いに参りました」
ロプ 「ひょっとして、音楽の採点マシーンのですか?」
配下 「ええ、先程頂いた概要を確認されたバグ様から、問題がないので開発を進めるようにとの指示を受けております」
開発に取り掛かるに辺り、以前バグさんと契約して開発許可を取るようにとの指示を受けていたから、事前に連絡をしておいたのだが、こんなに早く許可が出るなんて思いもしなかったよ。しかも手伝いに来てくれた人は、確か祭りで楽器を演奏していた人だ。この人、やっぱりバグさんの関係者だったのか・・・・・・
ロプ 「よろしくお願いします。なにぶん音楽については知識がまるでないもので」
配下 「ええ、そこで私が派遣されることになったのですよ。後お手伝いとして、魔道具を作れる者も一緒に来ていますのでよろしく」
ロプ 「えっと確かパペットとか呼ばれていましたか。よろしくです」
そう言って後ろに付いて来ていたウッドゴーレムに挨拶すると、頷かれた。こちらの会話をちゃんと理解しているところを見ると、ゴーレムとは全くの別物のようだな。以前にレイシアさんと一緒のところを見たことがあるし、フォーレグス王国に来てから遠目で、見かけることもあった。しかし近くで見てみると、ほぼ人間と変わりない動きができそうだな。それと動きを見てみると、人間並みに知能も高そうだ。これは完全にゴーレムとは違う物、いや生き物だな。
バグさんから派遣されて来た彼らのおかげで、開発はスムーズに進みに三日という開発期間を経て、採点マシーンは開発を完了した。
早速試験運用してみたいのでジャドに連絡すると、実験ができる場所として学校へとヘルカーフェルさんを連れて来てくれる。セイレーンは普段水中にいる為、僕の仕事場である研究所で試すのは無理があった。その点学校ならあらゆる種族の人が通えるように工夫されていて、ちょうどよかった。マーメイド達が通えるように水路が作られていたからね。まあ、町中も、マーメイド達が通る水路があちこちにあるけれど、残念ながら人間区画にある研究所近くにはあまりないのだ。
実験の許可自体はこの国で絶大な発言力を持っているバグさんから、許可されていたしね。というか、学校そのものがバグさんの造ったものだったか? まあとにかくそこで防音施設のある音楽室を貸し切りにして試運転をすることになった。
ヘル 「あの、よろしくお願いします」
試験結果としては、何度かの調整をしなければいけないものの、採点マシーン自体は問題なく稼働してくれたようだ。後はこれを日本のカラオケのように、好きな歌を流して採点できるよう改良して行けば問題ないかな? それにはこちらの曲を一杯作って行かなければいけないし、それらを記録する媒体も必要になって来るだろう。それともう少し小型化できればいいかな。そうすれば個人用としても利用できるかもしれない。開発についてはそんなところだろうな~
問題はヘルカーフェルさんの歌唱力自体か・・・・・・やはり音痴という程ではないが、ちょいちょい音を外している。まあそこは特訓次第なんだろうね。
バグ 「これはボイストレーニングが必要なのではないか?」
配下 「そうですね。根本的な基礎練習が必要かと」
バグ 「何とかなりそうか?」
配下 「本人の努力次第ではないでしょうか?」
バグ 「確かに、そうだな」
何やら真剣な顔をして、ヘルカーフェルさんの様子を見るバグさんとその配下のイグラスさん。あの人達、完全に魔道具じゃなくてヘルカーフェルさんの歌のできの方に関心を向けていた。
ジャド「なあ、なんでバグさんが来ているんだ?」
ロプ 「そんなこと僕も知らないよ。魔道具を作ったから様子を見に来たんじゃないのか?」
ジャド「なるほど、いろいろやらかしたロップソンを見に来たってところか。それが何でヘルカーフェルさんの指導の話になっているんだ?」
ロプ 「予想だけれど、あの人どうやら学校の教師をしていたんだって聞いたから、ああいう頑張り屋さんを見るとほっとけないんじゃないのか? どうもレイシアさんとか、落ちこぼれって呼ばれている人を見ると、熱心に成長するまで面倒を見ていたって聞いたからな」
ジャド「で、その結果ひとかどの人物に育つってか? それってもうヘルカーフェルさんの将来が安泰だってことと同義で、ラッキーじゃないか?」
ロプ 「全員が全員、凄くなった訳じゃないだろう? あまり期待し過ぎるなよな」
ジャド「まあそうか、そうそう急成長する訳でもないし、まあじっくり行くかね~」
そう思っていたのに・・・・・・何を思ったのか強化合宿とかに連れて行かれたヘルカーフェルさんは、一週間程の強化合宿から戻って来ると、見違えるほど成長して帰って来た・・・・・・
なんていうのか、採点マシーンの実験で見ていた時は、音を外しまくっていたのに、合宿とやらから帰って来たらぴったりと合わせて来たし、声量というのか? 声の質なども前と見違えるように出るようになっていたり、より綺麗な発音、滑舌になっていた・・・・・・人間・・・・・・いや人間じゃなくモンスターだけれど、短期間でこんなにも変わるものなのか?
そう考えてびっくりしていたら・・・・・・
幸 「ヘルカーフェルさんも、バグ君に特訓してもらったんだね」
ロプ 「もっていうことは、幸も?」
幸 「うん。初めはレイシアさんに指導してもらっていたんだけれど、途中でバグ君に指導してもらったんだよ」
ロプ 「そうだったんだ・・・・・・」
ひょっとして幸は、元々ただの一般市民だったのにもかかわらず、バグさんに特訓されていきなりあんなに強くなったのか? 確か日本にいた時は鹿島さん達に守ってもらうだけで、たいして戦闘とかした事もない感じだったよな・・・・・・あの時も今回と同じで確か一週間程度の時間がたったら、成長していたんだよな?
ロプ 「たぶん訓練って一週間くらい受けたんだよな?」
幸 「うん。大体それくらいかな」
ロプ 「一体どんなことをやったんだ?」
幸 「うーん、普通に初めは基礎訓練で体力作りかな? その後銃を貰ってひたすら射撃練習をして、慣れたらダンジョンに行かされたかなー」
ロプ 「そうか、ダンジョンで修行して来たんだ」
幸 「うん、私専用に作られたダンジョンだって言ってたかな。そこを攻略できればロップソン達と同じパーティーでやって行けるだけの実力も付くからって言われたかな」
周りの環境すら造ってしまうとか・・・・・・本当にバグさんに教えてもらえれば、一流になったりしてな・・・・・・
その後ヘルカーフェルさんは積極的に音楽活動を開始して行ったんだけれど、どうやら歌い手を支援する会社が設立されて、そこで正式に仕事として活動して行くことになった。日本でいう芸能事務所といった感じで、プロの歌手って職業が誕生した瞬間だろうな。
ジャドは飛空艇の運転手をやめ、その事務所でヘルカーフェルさんの活動支援を始める。
こっちもそれに関連して、歌を記録できる魔道具の開発などを任されたりして、陰ながら二人の事を応援して行くことになった。ジャドはヘルカーフェルさんのことを好きなようだけれど、逆はどうなのかなって思うけれどね。パッと見た感じは脈がない訳ではなさそうなんだけれど、やはり種族の差は大きいと思える。まあ当然だろうが・・・・・・
だがモンスターが普通に町を闊歩しているんだから、異種族との恋愛も有りなのかもしれないな。
幸 「ジャドさん、上手く行くといいね」
ロプ 「だな」
みんながみんな、自分達の道を歩き出した。僕達もこの町で仲良く暮らして行ければと思ったよ・・・・・・。
気が向いたら、ジャドの番外編など、書いてみたいかなって思っています。今はそう考えているだけなので、未定ですが。




