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魔石職人の冒険記  作者: 川島 つとむ
第一章  凸凹コンビ
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新たな魔道具

登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記)

 商業ギルドの一年間の審査は無事に終わり、自分の魔法使いとしての欠点を何とか克服できた僕は、時間を気にしないで過ごすことが出来るようになった。そこで、新たにパーティーに入った二人の少女の上達を期待して、しばらくは冒険者として活動をして行くことに決める。

 それと平行して、自分の次の欠点だと思う、魔法の使用回数を増やす魔道具を開発しようと考えていた。魔石の作製だと、一日に二個しか作れないのはさすがにきついからね。

 そして冒険していると魔法を使うので、魔石は作れなかったりする。まあ、期限などは無いのだから、冒険をしながらのんびりと開発していくつもりだ。

 そんな訳で、今僕達は平原でモンスターと戦っている。モンスターの名前はジャイアントアント。今日受けた依頼が、これだけなのは、とにかく数が多い為であった。


 ジャド「ニイナ、後ろにも注意を払え、また抜かれそうになっているぞ」

 ニナ 「すみません」

 ミア 「神罰」


 みんな忙しそうだ。そして僕は暇だ。何故暇なのかって? 例の風の魔法とか使うと、敵が全滅するので、二人の成長の為にならないからっていうのと、僕の魔法はそんなに連発できるほどバンバン使えないからだよ? 一体誰に説明しているのだろうか・・・・・・

 とにかく、僕はジャドが昔に使っていたブロードソードを持って、ニイナに襲いかかろうとしていたジャイアントアントの頭を殴る。何故殴ったのか、僕の筋力じゃあ、こいつら斬れないんだよ・・・・・・


 ニナ 「ジャドさん、きついです!」

 ジャド「楽な仕事は無い! 踏ん張れ!」


 実質戦えるのは二人だから、それはきついだろう、敵は倒してもどんどんやって来ているしな。

 僕はミリアナに向かって来ていたジャイアントアントを殴りながら、厳しいなって思う。何か打開策を考えないと、やばそうだ。あるいは僕が殲滅するかかな? 強くなったら強くなったで足手まといって、何て運命だと思いながらも増えていく敵を殴り続ける僕がいた。


 ロプ 「あっ」

 ジャド「何だ、何か思い付いたのか?」

 ロプ 「ジャド、このブロードソードって、壊れてもいいのか?」

 ジャド「かまわんぞ、何かできるのならさっさとやれ!」

 ロプ 「じゃあ頼む」

 ジャド「任された!」


 僕はその場で魔法を構築してブロードソードに直接送り込む。魔力の通りが悪くて、魔石ほどの性能は出ないので、発想事態が無かったのだけれど、金属部分になら、このブロードソードにもある程度の魔石化ができるはずなのだ。

 そして僕はこのブロードソードに風の属性を与えた魔法を付加する。これで、見た目は剣の魔石が完成した。

 実験する余裕は無いので、早速それを使ってジャイアントアントへと斬りかかった。


 ロプ 「斬れる、斬れるぞ! ハハハッ、敵がゴミのようだ!」

 ジャド「壊れているんじゃねえ!」

 ロプ 「いや、言ってみたいじゃないか? 思った通り、面白いようにスパスパと斬れるぞ」

 ジャド「そいつは戦力が増えて、嬉しいじゃねえか! でかした!」

 ロプ 「寿命が尽きなければだけどな!」

 ジャド「ちょ、それいつ寿命が来るんだよ! 不確定要素を増やすんじゃねえよ」

 ロプ「いや、今回の戦いくらいの間は、持つってば。永遠じゃないぞって言っただけだよ」

 ジャド「ならいい、どんどん倒せ!」

 ロプ 「あいよ」


 まあ、それでも戦える者が一人増えただけだけれどな。


 ロプ 「あ!」

 ジャド「何だ、そのあ! は、ちょー不安になる発言は何だ! とっとと説明しろよ」

 ロプ 「ごめん、魔石作っちまったから、風の魔法使えないわ」

 ジャド「魔法を温存させた意味がねえ! 意地でも戦え、意地でも斬って殲滅だ!」


 ジャドが壊れた。物凄い勢いで、敵を倒して行っているのが見えたよ。


 ロプ 「ニイナ、このブロードソード、お前扱えるか?」

 ニナ 「多分、何とか使えると思う!」

 ロプ 「それならお前が扱ってくれ、俺にはお前の武器をくれ」


 僕はそう言うと、ニイナに武器を渡して、代わりにニイナの持っていたショートソードを手に、またジャイアントアントを殴る作業を開始した。


 ニナ 「うわー、何これ、軽いしスパスパ斬れる。楽しい!」

 ロプ 「いや、それ僕がさっきやったから、どんどん戦ってくれ」


 ジャドはまだ暴れているので、僕が代わりに指示を出す。僕は直接戦えないミリアナを背に庇いながら、寄って来るジャイアントアントを殴って撃退する。

 一時的な撃退なので、誰かが倒してくれなければ意味はないのだけれど、時間稼ぎだ。

 そして長い長い時間が過ぎ去り、ようやくジャイアントアントの流れが止まった僕達の周りは、敵の死体で埋め尽くされていた。


 ロプ 「生きているか~」

 ジャド「何とか~」

 ミア 「私は大丈夫です、お疲れ様でした」

 ニナ 「もう動けないよ・・・・・・」


 僕の問いかけに、みんなが何とか返事を返して来た。そういう僕も、もう動きたくない。腕が痛いもうこのまま眠ってしまいたいと思うよ・・・・・・死体の中では嫌だけれど・・・・・・


 ミア 「えっと、ヒール」


 座り込んで俯いていると、ミリアナが回復してくれた。

 あー、回復って、疲労も多少は回復してくれるのかな? 少しだけなら楽になったよ。


 ロプ 「サンキュー」

 ミア 「いえ、私の方こそ、守ってくれてありがとうです」

 ロプ 「じゃあ、お互い様ってことで」

 ミア 「はい!」

 ジャド「おーい、俺にも頼む」

 ニナ 「私もー」

 ミア 「あ、直ぐに行きます!」


 二人も回復してもらって、少し動けるようになったらしく、討伐部位を回収し始めた。あー、その作業もあるのか・・・・・・面倒だよね~

 僕達の依頼は、まだまだ時間がかかるようだった。

 ギルドに帰って来た僕達は報告を済まして分配まで終わると、全員無言でギルド内の食堂で席に着き机に倒れこんだ。しばらくは動きたくないなって感じだ。


 店員「えっと、ご注文をお聞きしてもいいですか?」


 席に着いたから、注文を聞きに来たようだ。あー、会話するのも面倒だな。


 ジャド「スタミナが付きそうなのか、疲労回復しそうな料理を四人分、それとエールも四人分頼む」


 代表してジャドはそう言った。もうそれでいいよ、そんな気持ちだった。

 少しして、注文した料理が運ばれて来ると、みんな少しは落ち着いたのか、顔を上げて、とりあえず料理を食べることにした。


 ロプ 「さすがに、今日の依頼はきつかったな」

 ジャド「もう明日は一日何もしないで、休養に当てよう」

 ロプ 「お、それがいいかもな。さすがに連ちゃんで依頼を受ける元気はなさそうだ」

 ジャド「二人も、さすがにへばっていて無理そうだしな」

 ロプ 「だな、二人とも今日明日、ゆっくりと休むといい」


 僕達がそう言うと、返事を返して来た。


 ニナ 「そうさせてもらいます」


 ミリアナはさすがに答える元気もない感じだ。


 ロプ 「この先も、こういう依頼があったら、段々と体力とか付いていくのかな?」

 ジャド「うーん。体力っていうか、スタミナ? 持続力が付いていくと思うぞ」

 ロプ 「ほー、僕は今日剣を振り回したから、力が付きそうだな」

 ジャド「まあ、元から少ない筋力が少し増えても、そこまでの変化じゃないけれどな」

 ロプ 「否定はしない。どちらにしても、あれもこれもはできんからな。ただでさえ生産もやっているのに、この上魔法戦士とか、やっていられんわ」

 ジャド「確かに、詰め込み過ぎだな~」

 ロプ 「僕は、肉体的な持続力じゃなくて、魔法的な持続力を考えるよ」

 ジャド「あー、確かにそっちを伸ばしてもらえると、助かるかもしれないな。特に今日はそう思ったな」

 ロプ 「判断ミスだ、すまん」

 ジャド「いやいや、何とかなったんだから間違いではない。苦労はしたが、その分いい経験にはなったと思うからな。無駄ではないさ」

 ロプ 「そうだな、この失敗の経験を生かさないといけないな」

 ニナ 「お二人さんは、前向きですね」


 僕らが話していたら、そう言って会話に参加して来る。少しは元気が出て来たかな?


 ジャド「前にも言ったと思うけれど、前向きに生きていないと、冒険者なんかきつくてやっていられんぞ」

 ロプ 「だな~。村とかに行くと、たまにならず者みたいな目で見られたりもするから、心は強く! って感じだな」

 ニナ 「はあ、そういうものですか」

 ジャド「そういうものさ。とりあえずは、冒険者に英雄的なものは求めるな。とにかく生き残ることだけを考えろって感じか?」

 ロプ 「間違っちゃいないな。楽しくない人生にはなりそうだけれどもな~」

 ジャド「確かに、楽しくなさそうだった。すまん」

 ロプ 「僕はいいよ、生産の方で夢見ているからな」

 ジャド「お前はもう少し現実を見ろよ。行き当たりばったり過ぎる」

 ロプ 「それは悪い。まあでも、それで何とかなっているのが不思議だ」

 ジャド「確かに不思議だな」

 ミア 「お二人は、ほんとに仲がいいのですね」


 やっとミリアナが復活して来たようで、会話に参加して来た。


 ジャド「ああ、近所で幼馴染だから余計にだな。後は一緒に冒険者養成学校へも通ったし、その時からパーティーを組んでいたしな~。そう思うと、何年の付き合いになるんだ?」

 ロプ 「子供の頃からって話になるなら、十年くらいの付き合いは、あるんじゃないのか?」

 ニナ 「うわー、それは長いね」

 ミア 「そんなに長く仲良しでいられるなんて、羨ましいです!」

 ロプ 「まあ、腐れ縁だろうけれどな~」


 僕がそう言うと、ジャドがショックって表情をして言って来る。


 ジャド「たまにお前のその発言が、グサッと来るよ」

 ロプ 「それはお互い様かな」

 ジャド「だな」


 やっとまともにみんなが動けるようになって、僕らはのんびりとした時間を過ごした。

 彼女達も、徐々に会話も増えて来て、少しずつパーティーに馴染みだしたかなって感じだね。

 このままうまく行くことを願いたい。

 一夜明けて今日は一日休みの日。

 僕は自分に足りない魔力の回数を増やす為の開発構想を練ることにした。

 おそらくは単純に精神力、魔法を使うと減るものが普通の魔法使いよりも低いのが原因なんだと思われる。つくづく冒険者向きではないのだなって思うと、泣けてきそうだった。

 まあ嘆いていても仕方ない、足りないものは別のもので補おう。

 さて取っ掛かりとしては、指輪に付けた三つ目の魔石の効果をいじったものを応用する感じで魔道具を作ってみることにする。

 とりあえずは腕輪の形で魔道具を完成させて、今日の分の魔石二つを装着する。この魔道具の構造事態はとてもシンプルなものである。

 自然界に満ちている魔法の力を集めて溜め込むだけ。溜まった魔法の力を必要に応じて取り出して、自分の精神力の変わりに使うという魔道具だった。

 問題は、どれくらい溜まったのかがわからないし、どれくらいの魔法力が蓄積できるのかも不明な点だ。これからの課題だな~。まあ、それはいいとして、まずは魔法の力を集めなければいけないので、森の中とか自然の聖域みたいなところを探すのがいいかもしれない。

 やっぱり一人で行動するのは危険があるよねってことで、ジャドを連れて行くかな。


 ロプ 「ジャドいるか~」

 ジャド「んー、ロップソンか・・・・・・どうした? 今日は一日休みにしたはずだろう?」

 ロプ 「ああ、それなんだがな、この空き時間の間に自分の欠点を補おうと思って、魔法回数を増やす為の魔道具を作ってみた。作ったのはいいのだけれど、実際にどれくらいの効果があるのかどうかわからないんだ。調査をしたいから護衛を頼みたい」

 ジャド「なるほど、そういう用件ならわかった。で、どこに行くんだ?」

 ロプ 「こう、自然の中の聖域っぽい感じのところがいいんだがな。魔法の力が溢れていそうなところ」

 ジャド「ほー、となると森がいいか。確かにそういうところなら、護衛は欲しいところだな。準備するから待っていてくれ」

 ロプ 「ああ、よろしく頼む」

 ジャド「任せろ!」


 僕は準備のできたジャドを乗せて森に向いながら、思い出したかのように伝える。


 ロプ 「あ、そういえば今日の分の魔石を、その魔道具を作る為に使ってしまったので、今の僕は魔法がそんなに使えないから」

 ジャド「またそのパターンか・・・・・・まあ、今回は仕方ないのかな?」

 ロプ 「すまんな。これから行くところで補給できれば、魔法も使えるようになるのかもしれないんだけれどな」

 ジャド「どう判断するんだ?」

 ロプ 「さっきも言ったと思うが、今日の分の魔石はもう作れない。逆に言えば作れるようになれば、魔道具が作動したってことだよ」

 ジャド「ああ、なるほどね」

 ロプ 「残量とか、わかれば目で見て確認できるのだけれどな~」

 ジャド「そういうのを調べる魔法なり、魔道具なりってできないのか?」

 ロプ 「取っ掛かりになりそうなものがあれば、できるだろうけれど・・・・・・現在だとどうすればいいかすらわからんな」

 ジャド「足がかりになりそうなものもないのか?」

 ロプ 「無いな~。逆に魔力量で変化する物体とか生き物とか、何か知らないか?」

 ジャド「ぱっと思い浮かぶもので行けば、魔力に反応する生き物ならいるってところだな。反応するだけだから、魔力の高い低いもわかっているのかどうか、不明だな」

 ロプ 「それじゃあ、使えそうに無いな」

 ジャド「そうなるな。じゃあ、ちょっと無理そうだな」

 ロプ 「やっぱり今ある現状で何とかするしかないな~ 感覚的に使えそうだみたいに」

 ジャド「あやふやだな~」

 ロプ 「まあな。どうにもならないから、こればかりは仕方が無い」


 そんな会話をしているうちに、目的の森に着いた。


 ジャド「それじゃあ、行ってみるか」

 ロプ 「ああ、任せるよ」


 僕は現地で使う魔石の素材をある程度抱えて、ジャドの後を付いて行く。

 今の僕は、魔法が使えない状態なので、昨日作ったブロードソードを装備していた。これなら戦士ではないのだけれど、自分の身を守る為に振り回すくらいはできる。

 相手がそんなに知能が高くなければ、十分な戦力になるだろう。

 途中で遭遇したのはコボルトだけで、僕の出る幕は無かったようだったけれどね。

 現地に到着した僕らは、そこでしばらくのんびりとした。


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